応用しました
これをどうやって無効化するか……いろいろ考えてみたけど、炎に氷で対抗するみたいな単純な相殺は出来ない。
竜巻を無効化する方法なんて思いもつかないし、今はそこに炎まで加わっている。
もしかしたら、対抗するように竜巻に氷を混ぜたり、水で竜巻を作ってぶつけさせたりたら相殺出来たりするかもしれないけど、そうなったらもしかすると、物凄い魔力のぶつかり合いになるだろうし、周りに衝撃波みたいな感じで被害が出るかもしれない。
そう思うとアレクも余計な事をしてくれたもんだ。
まぁでも、こんな状況でもなんとかするのが、異世界転生されたチートである俺だけどな!
「はぁぁぁぁぁああああああ!」
俺は炎の竜巻の前に立つと、手を前に出し魔力をコントロールするのに集中する。
「ライト!!」
「危ないぞ!!」
後ろから、マルコとシリウスが叫ぶ声がする。
きっと、俺が魔法障壁も発動させていない状態で立ち止まっているのを見て危ないと思っているのだろう。
俺は魔法は使ってきても、魔力のコントロールは闘気を使うまでしてなかったし動きながらなんて器用な事は出来ない。
闘気に関しては、練習してきてある程度使えるようになったけど、今俺がしようとしているのは、俺がまだできない事の応用だ。
誰も使ったことがあるのを見た事はないけど、やるしかない。
理屈は分かっているから、あとはイメージとコントロール!
それに、あの炎の竜巻は威力はすごいけど、その分スピードが遅いからなんとかできるはず!
俺は近づいてくる炎の竜巻に焦らないようにしながら魔力を高める。
大丈夫、俺なら出来るはずだ……リノアの為にもこの勝負負けられないし、何よりこのままだとみんなに被害が出るかもしれない。
だから失敗する訳にはいかない!!
「ははは! そんな立ってるだけでどうする? まさか、素手で受け止める気か?」
リーゼルの奴……もう勝った気でいやがるな? 見てろよ……。
「……黙って見てろってんだっ!!」
俺は高めていた魔力を開放しイメージを構成する。
うまくいってくれ――っ!!
「なにっ!?」
俺の解放した魔力は炎の竜巻を包むように展開し淡く発光する。
その光景にリーゼルはもちろん、他のみんなも驚いているようだ。
俺がやっている事は魔法障壁の応用バージョン。
魔法障壁を展開しその中に魔法を閉じ込め、それから魔法障壁を狭めていくという作戦だ。
魔法障壁は簡単には破る事が出来ない。
だから、その中に閉じ込めて、魔力を狭め魔法とぶつけ、相殺してやろうって魂胆だ。
俺自身はまだ魔法障壁を展開できないけど、だいたいのコツは掴みかけている。
それに、自分を中心に見えない範囲も含め魔法障壁を展開するより、見える位置で魔力の様子を見る方がコントロールもしやすそうだと思ったけど、やっぱりその通りだったな。
魔法の基本はイメージとイメージの固定化だ。
だから、魔法がうまく使えないうちは自分に見えないところのをイメージするより、自分の目で見ながらした方がいい。
素早く動いているものに対してはこんな悠長に魔法障壁を構築する事はできないだろう。でも、これぐらいゆっくり動くものなら……。
「そんな事が…………」
俺の後ろでマルコが言葉を漏らすように口にして目の前の光景に驚いているようだ。
リノアやサラ、アレクが呼んだ生徒も含め、信じられないといった感じの顔をしている。
でも、一番驚いているのはリーゼル達だろう。
自分たちの渾身の魔法が俺によって無効化されようとしてるんだから。
「あとは……こうだ!!」
俺は前に出した手を握りしめる感じで、展開した魔法障壁を狭める。
すると、魔法障壁はゆっくりと狭まり、炎の竜巻と接触する。
「くっ……」
その瞬間に、衝撃が襲い魔力のコントロールが難しくなる。
「あとは力づくだぁぁぁあああああ!!!」
俺は乱れる魔力に思いっきり魔力を送り、コントロールよりも威力重視で炎の竜巻を抑え込むようにイメージする。
すると、魔法障壁はいびつな形になりながらも、炎の竜巻に破られる事なく、収縮していき、やがて炎の竜巻を消失させた。
そして、それを見届けると、俺は魔力の解放を止め、魔法障壁を消した。
「……これでどうだ?」
リーゼル達は信じられないと言った感じで、こちらを見ている。
しかし、次の瞬間には我に戻り「ボケッとするな! 次だ! かかれ!」と言って、二人に指示を出して、もう一度戦おうとしたけど、取り巻きの二人は返事をすれども、目の前でやった俺のやった事に衝撃を受け、もう心ここに非ずといった感じで明らかに心は折れていた。
俺はその様子にすかさず、闘気を発動させ取り巻き二人に順に攻撃し、魔法障壁を破壊し戦意喪失させた。
二人とも心が折れていたし、魔力も使い過ぎたのか、魔法障壁は脆かったし、さほど時間はかからなかった。
リーゼルだけは魔法障壁を維持して動きながら詠唱し、反撃を試みようとしたけど、一対三という不利な中ではどうする事も出来ず、魔力も切れてそう時間の経たないうちに勝負がついた。
「……おまえの負けだ」
俺は魔力も切れ、体力も切れて片膝をついたまま動けないリーゼルを見下ろして告げた。




