ついに俺は魔法学園に入学します!
「お兄ちゃん、好き――抱いて?」
「いやフラン、俺たち兄妹だから……」
今回も家を出る時に大変だったな。全寮制だからしばらくは家に帰らないけど……。
フランの事は本当になんとか考えないと……。
まぁでも、いろいろあったけどついに俺は――。
「皆さんご入学おめでとうございます。我がウェルホルム王立魔法学校は――」
ついに今日、俺は魔法学校へと入学する。
思えばここまでの道のりは長かった。
構内で歩きながらスマホでラノベを読んでいたらホームから転落して、さらにスマホを探していたら電車が目の前に迫っていて気づけば異世界に転生していた……という読んでいたラノベにありそうな展開で俺は前世の記憶を持ったままライト=ハートラインとして生まれ変わった。
そして、俺は身体が自由に動かせるようになるとラノベにありがちは『小さい時から魔法使えば魔力が増える』『魔法は詠唱しなくてもイメージすれば無詠唱で発動できる』といった事を試してみるとその通りだった。
それに幸いにも、この世界は過去に邪神が現れた際に邪神を封印したのが勇者じゃなく賢者と言う事で、魔法使いの方が人気も地位も高いようだった。
俺は運よく、顔も美人の母さんに似て瞳は茶色、そして、鼻筋もすっとしていて、顔のパーツも整っていたし、生まれつき髪も茶髪で自然とトップにボリュームが出るし、体格は父さんのようにガッチリ過ぎず、母さんの遺伝子もちょうど良く入ったのか、細マッチョといった『キタ―――!!』状態だった。
だから、そのルックスにプラスしてラノベの知識を使って魔法を極め学園で一番になって女の子にモテまくってバラ色の学園生活を送ろうと努力していた。
でも、その中でいくつか誤算があった。
一つは妹フランの存在だ。
妹はそれはもう、俺と同じように茶髪に整った顔、そして、小柄で華奢な体とアイドル級に可愛いんだけど、俺はその妹に『ライク』ではなく『ラブ』として好かれてしまっている。
今回も家を出る時に実の妹に「抱いて?」と言われてしまった。これはまずい。日本人的倫理観、いやそれ以前に種の保存として……というかまあマズイ。
これは俺の抱える誰にも言えない悩みだ。
さらにフランは俺が魔法を教えた為、おそらくこの世界で俺に次ぐ魔法使いになっているではないだろうか?
そして、フランに俺以外の男を好きになるように言った事もあるけど、その好きなタイプってのが『お兄ちゃんみたいに強い人』『私より強くて私を守ってくれる人』ってきたもんだ。
そんなの俺が魔法を教えた事によって世界トップクラスの魔法使いになったフランより強い男なんているだろうか? ……いや、そんな事言ってられない。なんとか見つけなければ……。
そして二つ目、それは魔法についてだ。
この世界では魔法と言えばおなじみの火、水、土、風の魔法が一般的でそれ以外は流通……ちょっと意味が違うけど一般的ではないという事。
だから身体強化の魔法については知られていない。いや、実際には使われているんだけどそれは『気功』や『闘気』と言った形で広まっている。そして気功や闘気は魔法使いではない者の一部にしか使用できないとされている。だからうかつに身体強化の魔法は使用していた怪しいしフランには使用を控えるように言ってある。
俺に関してはいろいろとあって、魔法戦士なんてどっかのアニメのキャッチフレーズで呼ばれるようになったけど……。
魔法戦士……その呼び名は止めてほしい。
あとはおなじみの『無詠唱はあり得ない』って話だ。
これも実は気功は無詠唱の身体強化の魔法なので実際使っている人はいるんだけど、それが認知されていない。
まぁ無詠唱と言っても万能ではなく、無詠唱で魔法を使用する場合はイメージを持続させないといけない。それに比べて詠唱は言葉にする事でそのイメージを潜在的に脳に刷り込まれるので詠唱した後でも発動している。
だから無詠唱の身体強化である気功は身体強化する箇所をイメージしながらその部分の能力を上げる。その分、戦闘中にイメージを持続させながら戦うといったセンスも要求される。
とまぁ魔法についても少しラノベと違う部分があって、いろいろと気を使う事がある。
そして、三つ目の誤算は最初戦士学校に入学した事だ。
ある日、熊に追われている女の子ではなく、おっさんを身体強化を使って熊を倒し助けたところそのおっさんが王立戦士学校の校長でスカウトされたという事だ。
最初は、もちろん身体強化の魔法を使えるという事で、魔法学校にスカウトかと思ってけど、この世界には身体強化の魔法は存在しない事になっているし、あってもそれは気功や闘気と呼ばれ戦士特有のものだと思われていたので俺は女子生徒が一人もいない戦士学校に入学する『はめ』になった。
うん、途中入学する『はめ』になったんだ。返事してから戦士学校にスカウトされてたって知ったから。
まだ、入学できる年齢より一つ小さかったけど特待生として入学してからも大変だった。
この世界は勇者より賢者、戦士より魔法使いだから戦士学校に通う生徒はやさぐれていて学校は荒れていた。
それはもう荒れていた。
入学するなり年齢も一つ下、しかも特待生という事もあって教室に入るなり早々に絡まれて、返り討ちにしてそこからアウトローに一直線。街で二人組の女の子を助け、めっちゃ可愛かったリノアちゃんといい雰囲気なところに友達が来て、それを見て助けた二人が逃げたり、絡まれては返り討ちして、気づけば学年の番長になり、三年の番長と互角の戦いをしたり、二年生と街のギャングという組織が絡んでいた大きな事件を解決したりして、最終的には学校の番長へと目指していた形とは違う形で学校で一番になっいた。
ここまでなら親が泣いて終わるところかもしれないけど、事件を解決するのに魔法を使ったのと事件を解決した功績から晴れて俺は入学適齢期に特待生としてお金の心配もかける事なく魔法学校の最高峰であるウェルホルム王立学校に入学できたのだ。
短く言えないほどの苦労をしてこの学校に入学した俺にとって、この校長の長い話も全然苦にならない。
「みなさんが素晴らしい学園を送り立派な魔法使いになるのを期待しています。――では一年生代表ライト=ラインハート君前へ」
「はい!」
そうだ、俺の目指していた学園生活は今日始まる。
さぁ、頑張ろう!!