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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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悪魔の赤い戦車

「ほれほれ、もっと積まんかい」


「もしかして、物凄い危険物じゃないかのぅ?……」


 マチルダの上に、これでもかと噴射剤を積むオットーに、冷や汗のポールマンが呟いた。


「砲弾でなくとも、機銃弾一発で昇天じゃな」


「何、そんな大袈裟じゃなくとも、小銃や拳銃の弾一発で済むわい……お前さん、敵弾が当たる前に爆発したいのかのぅ?……」


 葉巻を咥えたキュルシュナーは平然と言うが、ドラム勘を括り付けながらベルガーは諦めた様に呟いた。


「なぁに、当たらなければどうって事はないのじゃ」


「どっかで聞いたセリフじゃのぅ……」


 オットーは平然と言い、ポールマンハ更に大きな溜息を付いた。


「じゃが、海岸の舟艇に行くまでは平原を横切らんといかんぞ?」


 積み終えた噴射剤を見ながら、ベルガーは頭を掻いた。


「まさに、爆弾抱えて火の中に飛び込む。じゃな」


 葉巻を燻らせキュルシュナーは他人事みたいに言った。


「……マリーちゃんの為じゃ」


「そうじゃな……」


 だが、オットーは柄に無く静かに言い、ポールマンも穏やかに頷いた。


_______________________



「さて、どう動く?」


「じいさん達は平原を横切らないと海岸には辿り着けない。ならば、平原は制圧しておかないとな」


 ニヤリと笑うイワンに、ゲルンハルトも薄笑みを浮かべた。


「何だ? じいさん達が噴射剤を持って来るのか?」


 操縦席のハンスは振り返ってゲルンハルトを見た。


「多分……ドサクサに紛れるのは、お手の物だからな」


「違いない……で、正面の重戦車はどうする?」


 ゲルンハルトは笑みを返し、イワンは正面に居並ぶ重戦車達を笑いながら見た。


「どれも砲塔のない駆逐戦車だ。ヤークトティーガーにヤークトパンター、エレファントにJSU-152、KV-2は砲塔はあるが気にしなくていい」


「気にしなくていいって……152ミリ砲だぞ」


「傾いただけで砲塔は回らない、傾斜地で戦えるシロモノではないさ」


 呆れるイワンにゲルンハルトは平然と言った。確かに平原とは言え起伏は激しく、とても重戦車が縦横無尽に走り回れる形状ではなかった。


「こっちも、機動性なんてないぜ」


 そう言いながらも、ハンスはティーガーⅡの操縦のクセを既に把握していた。


「そこは腕でカバーするんだろ?」


「簡単に言ってくれるぜ」


 普通に言うゲルンハルト。だが、ハンスは言葉と裏腹に自信に満ちていた。


「まずは、二時方向ヤークトの連中からだ。履帯を破壊すれば、方向転換出来ないただの砲台だ」


 既にゲルンハルトの中では攻撃順や、攻撃位置も決まっていた。


「弾がもったいないな」


 周囲を確認したゲルンハルトの言葉に、直ぐにイワンが頷く。


「両側の履帯をやるなら、最低二発は必要だろ?」


「それは、手練れの砲手の話しだ。究極の砲手は一発で十分なんだよ」


 唖然と呟くハンスに対し、イワンは初弾を発射しながら言った。発射された88ミリ砲弾は、ヤークトティガーが斜面の大きなコブに片方の履帯を乗り上げた瞬間だった。命中弾は乗り上げてない方の履帯と転輪、地面をも吹き飛ばし、バランスを崩した車体は横倒しになった。


「なるほどね……」


 ハンスは車体を移動しながら、苦笑いした。


__________________________



「奴らは何者なんだ?……」


 見張り所からは敵戦車の位置はつぶさに入ってくるが、森林地帯を速度を落とさず走り続ける様子にルティーは背筋に悪寒を覚えた。


「確かに速いですね。まるで、この場所の地形を全部把握しているみたいです」


 操縦手も、その動きに息を飲む。


「……海賊の島に乗り込んで来て、目的は噴射剤だと? ロケットでも発射するつもりか?」


 敵の強さも然ることながら、その目的はルティーを混乱させた。


「我々も島の防衛の為、ロケット弾の燃料として持ってますが……タンクハンターに必要なんでしょうかね?」


 腕組みした操縦手の言葉は、ルティーにある考えを思い起こさせた。


「赤い戦車の噂、聞いた事があるか?」


「赤い戦車?……まさか、あの空飛ぶ戦車の事ですか? ロケットを噴射して、火の玉みたいに空を飛ぶって奴ですか?……」


 半信半疑な操縦手も冷や汗を流すが、ルティーは身震いがした。


「ああ、戦闘機どころか戦艦さえ撃破する……あの航空戦艦イカロスさえ撃破したって噂だ」


「ええ、殲滅戦車ケンタウロスやケルベロスでさえ撃破した……悪魔の赤い戦車」


 操縦手の中では、赤い悪魔の戦車が現実になろうとしていた。


「存在するのか?……そんな化物が……」


「お頭……今来てるのは普通のタンクハンターですぜ。赤い戦車なんて、ただの都市伝説ですよ」


「……そうだな」


 頷くルティーだったが、もし存在するなら見てみたいと怯えるココロの片隅が正直に思っていた。


______________________



「奴等は四個、こちらは八個だ」


 ペリスコープを覗き込みながら、ヴィットは独り言みたいに言った。


「何がなん?」


 物凄いスピードで走りながら、チィコは平然と聞いた。


「目よ。確かにサルテンバモドキは強いけど、見張りはこちらが上よ」


「そうやな」


 リンジーが笑顔で見ると、チィコも笑顔で見返した。


「逆の立場なら、どう追う?」


 反対側を監視しながら、ヨハンはヴィットに聞いた。


「そうだね……側面からは木が邪魔で命中弾を与えにくい……なら、速度差を生かして後ろからかな」


「確かに前方や側方は集中してるから、隙は後ろね」


 ヴィットが直ぐに答え、リンジーも捕捉した。


「合格だ。前は俺とチィコ。後ろはリンジー、左右はヴィットが見ろ」


「了解」


 少し笑った様に見えたヨハンの言葉に、直ぐにリンジーは直ぐに砲塔を後ろ向きにした。


「ヨハン、凄いね」


「ゲルンハルトは優れた指揮官だ。一緒にいれば、嫌でも覚える」


「エルレンの黒い悪魔か……」


 ヴィットはゲルンハルト達の凄さを改めて感じた。


__________________________



 その頃、”赤い悪魔”とルティー達に思われているマリーは舟艇の上で格闘? していた。


「何よ! こんな細いワイヤーで!」


 注意してはいたがワイヤーは根元から切れてしまい、エンジンはアイドリングのままになっていた。甲板を引っ剥がし、なんとかエンジンが見える所まで来たが、残念ながらアームは届かなかった。


「もうっうう!」


 体の大きさを呪いながら、マリーは剥がした甲板で漕ぎ出した。それはとてもシュールな絵であり、多分目撃すれば誰もが目をテンにするだろう事は容易に予測出来た。


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