表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
91/172

確信

『フィールドは、この島全体だ。あと十分で戦闘を開始する』


「了解した」


 ハッチから身を乗り出し、周囲を見回したヴィットは真剣な声で返答した。


『お前達に、我が”白銀の稲妻! ペガサス号”の威力を思い知らせてやる』


「長っ……」


「ハクションの井筒屋、ペンペン草号?」


「何て耳してる……」


 リンジーは一言でツッコミ、チィコはポカンと呟き、ヴィットは冷や汗を流した。


『人の愛機を、老舗百貨店の屋上に生えてる雑草でクシャミした! みたいに言いやがって……』


「だから、長いって……」


 通信機の向こうでワナワナと震えるルティーに、呆れ声のリンジーが一応ツッコんだ。


「おんなじ戦車やのに、ウチ等のサルテンバとは大違いやね。変な名前付けられて」


『何だ? そのサル何とかって?』


 鼻の穴を膨らませチィコは溜息交じりに言うが、ルティーも唖然と聞いて来る……当然だが。


「名前や。サルテンバ・カマボコ」


『全く意味が分からん……とても、戦車の名称じゃないな』


「何やて! ペンペン草の方が変やっ!」


『白銀の稲妻! ペガサス号だ!』


 唾を飛ばした二人の言い合いは続く。リンジーとヨハンは苦笑いで見守るが、ヴィットは溜息交じりで言った。


「どっちもどっちだな……まあ、変態的と言うなら、サルテンバの圧勝だけど」


「そやろ! サルテンバの勝ちや!」


「褒めてないぞ……」


 満面の笑みを浮かべるチィコを見ながら、ヴィットは大きな溜息を付いた。


______________________



「どうする? ワシ等丸腰じゃぞ?」


「何、相手は二人、同数じゃ」


 冷や汗を流すポールマンだったが、オットーは平然と言った。


「じゃが、このままでは直ぐに見つかるぞい……」


「任せろ、手がある」


「ホンマかいな……」


 胸を張るオットーに、ポールマンは更に大きな溜息を付いた。そして、オットーは両手を上げると見張りの前に出た。


「……確かに手は使っておるが……」


 仕方なくポールマンも後に続く。


「何だ? じじい、何処から入った?」


「見ろよ、震えてるぞ。じいさん、あまりの怖さにチビッたか?」


 変な動きで体を揺するオットーを見て、見張りの二人はニヤニヤと笑った。


「チビリはせんが、軽い尿漏れを起こしておる」


「それをチビリって言うんだよ」


 見張りの二人は大笑いした。だが、オットーは前に出る前にズボンの中でウィスキーの瓶を逆さにして栓を開けていた……当然、チン〇ンの所で。


「汚ねぇ! 盛大に漏らしやがった!」


 思わず見張りの二人が後退る。その瞬間、オットーがとても老人とは思えない速さ(本当はあまり速くないが)で見張りに飛び掛かった。


「やめろっ! ション〇ンが付く!」


「なんか、汚い作戦じゃのぅ……」


 ブツブツ言いながら、ポールマンも飛び付いた。見張りは汚さの方が(じじいのオ〇ッコ)が優先して、銃を撃つ事さえ忘れて逃げ惑い、その後ろからオットーが酒瓶で殴って気絶させた。ポールマンは、その腕力でもう一人の男を気絶させた(酒瓶は勿体ないので使わずに)。


「くわっかっか、どうじゃ? 見事な作戦だったじゃろ?」


「成功はしたがのぅ……」


 胸を張って高笑いするオットーに、ポールマンは大きな溜息を付いた。


「さて、頂く物は頂いたし長居は無用。マチルダに連絡じゃ」


 オットーは噴射剤を運ぶ用意をしながら、平然と言った。


___________________________



「サルテンバの有効射程は三千メートル。視界の開けた場所なら更に伸びる……戦うなら、障害物の多い森林地帯しかないわ」


「さっき、ゲルンハルトさんから連絡があった。敵の見張り場が点在してるってさ」


 森林地帯に向かう車内でリンジーが呟き、ヴィットはゲルンハルトから受けた連絡を告げた。


「森林地帯にも見張り場があると考えた方がいいわね」


「あったらアカンの?」


 リンジーは真剣な顔をするが、チィコはポカンと聞いた。


「こちらの位置は直ぐに知れると言う事だよ。しかも、こっちは相手の位置が分からない」


 チィコに説明しながら、ヴィットはペリスコープから周囲を見回した。


「ダメよ、ハッチから身を乗り出しちゃ。同軸機銃なら、十分射程外から届くんだからね」


「分かってるって」


 また子供に言うみたいにリンジーに言われて、ヴィットは少しムッとした声で答えた。


「止まれば位置を特定される」


「動き回るしかないわね」


 ボソっと言うヨハンの言葉に、リンジーも頷いた。


「とにかく時間を稼ぐしかないな」


「そうね、それしかない」


「何で時間稼ぎするん? 攻撃せぇへんの?」


 ヴィットが決意した様な声で言うと、直ぐにリンジーも同意する。チィコは訳が分からず首を傾げた。


「時間を稼げば、来るよ……マリーが」


「そうなん?!」


 リンジーの言葉にチィコが飛び上がってヴィットの顔を見た。


「ああ。きっと来る」


 笑顔を返したヴィットの胸の中は、確信で溢れていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ