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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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海賊の島

 荒れる海は次第に収まって来た。


「もう、パラシュート切り離していい?」


 ヘロヘロになったヴィットがオットーに聞いた。


「そろそろ、いいじゃろ」


「ねぇ、パラシュート作戦、初めから考えてたの?」


 疑問を口にするヴィットは、内心オットーを見直していた。


「うんにゃ、まさか成功するとは思わなんだ」


「……このじじぃ……」


 殺意がヴィットを包み込んだ。


「何でパラシュートなんか、積んでたんだ?」


 船酔いでゲッソリしたイワンが呟く


「ホッホッホ、救命胴着と思って積んだんじゃ」


「間違えただけかい……」


 ヴィットの中でオットーに対する羨望が、音を立てて崩れた。


「大分流されたわね。おじいちゃん、進路を北に向けて……もう直ぐ見える」


「ようそろ~」


 変な返答に、ヴィットが首を傾げる。


「船乗り言葉で、宜しく候……つまり了解じゃ」


「ふ~ん……変なの」


 スルーに近いヴィットの言葉に、少しコケたオットーだった。


「見えたぞ」


 双眼鏡を覗いていたゲルンハルトは、前方に島を見付けた。周囲にも島は点在するが、一際大きい平坦な島は、ミネルバの言う島と合致していた。


「じいさん達、戦闘配置に付け。イワンは37ミリ砲、ヨハンは重機だ。ヴィット達は装甲車の中へ」


 ゲルンハルトの指示で各自が持ち場に付いた。


「こんなに接近しても、出迎えは無しだな」


「そうね、海賊なら本拠地の接近は許さないはず」


 装甲車の運転席でハンスが呟き、リンジーも同意した。


「出迎えなんて、無い方がええんとちゃう?」


「早いとこ、上陸しよう」


 ポカンとチィコが言い、ヴィットも冷や汗を流す。


「一つ聞きたいんだが、噴射剤はどうやって手に入れるんだ?」


「……それは……」


 ハンスの問いに苦笑いするヴィット。


「考えてないって顔やね」


 目を細めるチィコ。ヴィットの頭の上には、電飾入りの!”図星”って言葉が点灯した。


「毎度の出たとこ勝負って訳ね」


 リンジーも溜息を付くが、ハッチから覗き込んだゲルンハルトはニヤリと笑った。


「そう言うのは、嫌いじゃない」


「俺もだ」


「いいじゃねぇか、その方がスリルがあって」


 ハンスもニヤリと笑い、イワンも37ミリ砲に初弾を装填しながら笑った。


「全く……男どもはこれだから……ヨハンは嫌だよね」


 冷静沈着なヨハンにリンジーは期待するが、ヨハンは無表情で呟いた。


「ポジティブな作戦だ」


「どこが?」


 大きな溜息のリンジーは苦笑いした。


__________________________



 島が近付いても襲撃の兆候は皆無で、島全体が醸し出すリゾートの様な雰囲気にヴィットは一瞬、気が抜ける様な気持ちになった。


「前方の砂浜を見ろ。幅は200m程で上陸には打って付けだが、あそこを地雷原にして、その奥に広がる平原でハルダウンの待ち伏せなら、上陸した瞬間に集中攻撃を受けてあの世行きだな」


 双眼鏡で上陸地点を確認するゲルンハルトは、的確に地形を分析した。確かに砂浜の奥に広がる平原には、所々に樹木も生い茂り待ち伏せには好都合に見えた。


「こんな装甲じゃ、軽戦車にも抜かれるな」


「37ミリドアノッカーじゃ、軽戦車相手が関の山。じいさん達の2ポンドも似たようなもんだしな」


 装甲をコンコンとして溜息交じりのハンスに、イワンも溜息の言葉を被せる。


「海賊の島に、戦車なんてあるの?」


「新鋭の海賊ルティー。古今東西の戦車を集める、超が付く”マニア”だ」


 ヴィットの問いに、例によって真顔のヨハンが余所を向きながら答えた。


「リンジー、無線でルティーを呼び出せ。周波数を変えながら探すんだ」


「分かった」


 指示を出すゲルンハルトだったが、既にリンジーは態勢を整えて無線機を調整していた。


「ウチは?」


「俺は何を?」


「チィコは見張り、敵戦車を見つけ出せ。ヴィットもだ」


「ヴィット、競争や! ウチの目は双眼鏡より凄いんやで!」


「普通に、双眼鏡使えよ……」


 大きな目を見開いて張り切るチィコに、溜息を付いたヴィットは双眼鏡を手渡した。


___________________________



 浜辺に接近しても、敵影はなかった。


「誰もおらんのとちゃう……」


 ポカンとチィコは呟くが、ゲルンハルトは指示を出した。


「じいさん。前方の砂浜に2ポンドを打ち込め」


『ホッホッホ、任された』


 返信と同時にオットーは、砂浜に連続して2ポンド砲を打ち込む。何度かの砂煙に交じり、砂浜が爆発した。


「あのデブのじいさん、腕は確かだな」


 イワンはポールマンの射撃を見て、ニヤリと笑った。


「どこが?」


 ポカンと聞くヴィットに、イワンは少し真顔で説明した。


「地雷を撃つなんて、普通は無理だ。なんせ、どこに埋まってるか分からないしな。だが、あのじいさん二発に一発は当てている」


「埋まってる場所が、分かってるって事?」


「さあな、何せ妖怪じじい達だからな」


「ハンス、水際に沿って砂浜を回り込め。左翼の岩場から侵入する」


 ヴィットは疑問だった。何故、地雷原に道を作ったのに、そこを進まないのかと。オットー達も、正確な射撃で、かなり広い安全帯を砂浜に作ったのに、右翼の方から平原に侵入しようとしていた。


「逃げ道がないとな……」


 双眼鏡を覗いたままゲルンハルトは、首を傾げるヴィットに言った。確かに、今回の戦力では普通に考えても勝ち目は薄い。地の利も相手にある、ならばこちらの地の利は自分達で作るしかないのだ。


「前方二時、木の影に戦車や!」


 チィコの言葉と同時に、イワンが37ミリ砲を発射した。当然、車体中央に命中するが、装甲が跳ね返す。


「効かないぞ!」


「効いてるさ」


 叫ぶヴィットに、ゲルンハルトがニヤリと笑った。


「どこがです?」


「当たれば焦る」


 敵戦車は有利な陰から出て猛烈に打ち返すが、行進間では照準もままならず、まして足の速い装輪装甲車に当てるなんて無理だった。ハンスは、まるで次の着弾地点が分かるかに様に操縦し、イワンは敵戦車が態勢が崩れると同時に履帯を一撃で撃破した。


 更にヨハンは正確無比な射撃で、敵戦車の砲塔にある射撃照準器を重機関銃で撃ち抜いた。武装も貧弱な装甲車で、戦車を倒すゲルンハルト達にヴィットは驚くが、オットー達の戦闘もヴィットを愕然とさせた。


 オットー達は小刻みに発進と停車を繰り返し、敵戦車を行動不能にしていた。素早く位置を替え、マチルダの車体が静止した瞬間の発砲は確実に目標の履帯を破壊、第二射で砲自体を発砲不能にしていた。


 敵戦車は数に物を言わせ、マチルダの周辺に至近弾を撃ち込むが何故か命中しなかった。


「何で敵弾は当たらないんですか?」


「当たらないんじゃない。当てられない様にしてるんだ……それは、戦車の性能じゃなく、クルーの腕だ」


 唖然と呟くヴィットに、薄笑みを浮かべたゲルンハルトが言った。


「ヴィット! ルティーが無線に出た」


「代われ!」


 リンジーが叫ぶと同時に、ヴィットはマイクを握り締めた。



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