表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
86/172

船出

 ルティーの元に噴射剤を調達に行きたいと願い出るヴィットに対し、ハイデマンは渋い表情だった。


「タチアナ様を無事に送り届けるのが、我々にの仕事だ。寄り道などすれば、計画に支障が出る」


「マリーは貴重な戦力だ。性能を十分に発揮させる事は、我々にとって有益だと思う」


 腕組みしたリーデルは、ハイデマンに強い視線を向けた。


「お願いします」


 ヴィットは深々と頭を下げる。


「行かせてあげなさい」


 薄笑みのタチアナはヴィットを見た後、ハイデマンに向き直った。


「しかし、タチアナ様。この海域で立ち止まる事は、襲って下さいと言ってる様なモノで」


「その為に我々がいる」


 それでも渋るハイデマンだっが、リーデルは凛とした言葉を向けた。


「決めるのは、あなたじゃない。私よ」


 困惑するハイデマンに、タチアナは言い放った。


「……出せる舟艇は一艘だけだ。48時間で、待たずに出発する」


「ありがとうございます!」


 ヴィットは大声で言うと、格納庫に向かって走り出した。


________________________



「ワタシも行く!」


「無理だよ。今は配線を全て、やり替えてる最中だ。今度は全ての回路を二重にしている、重要箇所は三重にして信頼性を大幅に上げるんだ」


「特に耐衝撃と車内の密閉性を重点的に改良してる。今は動けないよ」


 ヴィットが格納庫に来て噴射剤を取りに行くと話した途端マリーが叫び、真顔のコンラートとTDが矢継ぎ早に否定した。


「マリー、留守番頼むよ」


「嫌っ! 行くっ!」


 済まなそうに言うヴィットに、マリーは泣きそうな声で叫んだ。


「マリー。心配ない、私達が付いて行く」


 ゲルンハルトは穏やかに言い、イワン達も大きく頷いた。


「大丈夫よマリー。私が行って、ヴィットを監視するから」


「そうやで、ウチ等が行くんや、心配ないで」


 ゲルンハルト達に続き、リンジーやチィコも嬉しそうに笑った。


「お前等……」


「一人でなんて、行ける訳ないでしょ」


 目を細め呟くヴィットに、リンジーは腕組みして溜息を付いた。


「……ヴィット……」


 マリーは泣きそうな声で言うが、ヴィットは優しい声で言った。


「皆が来てくれるから大丈夫だよ」


「今回は待ってるんだ。何、コンラートとTDが大至急修理してくれるさ。直り次第、後を追えばいい」


「コンラート! TD! 直ぐに出来るのっ?!」


 穏やかに宥めるゲルンハルト言葉に、マリーは声を上げる。


「なんとか……」


「急ぐよ、出来るだけ」


 苦笑いの二人は、作業を続けながら返事した。


「じゃ、マリー行ってくる」


「気を付けてね……何かあったら直ぐに連絡するんだよ」


「ああ。その時は頼むよ」


 格納庫から、ウェルドックに向かうヴィットの背中に、マリーはまた泣きそうな声で言った。


______________________



「出やがったな……」


 唖然とイワンが呟く。ヴィット達がウェルドックに着くと、舟艇の操縦席にはオットーが当然の様にいた。


 既に舟艇にはマチルダと、装輪の装甲車が積んであった。


「シュワルツティーガーもサルテンバも甲板の上だ、少々心許ないが無いよりマシか」


「装甲はマアマアだが、2ポンド砲じゃなぁ~」


 ゲルンハルトは仕方なそうに呟き、イワンも大きな溜息を付いた。


「戦車も人も使いようじゃ」


 しかし、オットーは平然と言った。


「確かに速度は遅い」


「徹甲弾は撃てるが、榴弾は撃てん」


「発展性もない」


 ベルガーがボヤき、ポールマンが溜息を付き、キュルシナーは他人事みたいに言った。


「どこが取り柄なの?」


「それは乗ってる人じゃ」


 苦笑いのヴィットに、オットーは胸を張った。


「それが、一番かもね」


 微笑むリンジーの横顔は、ヴィットに言ってる様だった。


 舟艇が船外に出ると、まだ収まってない嵐に木の葉の様に揺らされた。


「うち、リバースしそう……」


 ほんの数分でチィコは真っ青になるが、ヴィットは平気な顔だった。


「まあ、マリーの飛行に比べたら」


「どれ程なのよ~」


 リンジーも顔の半分を青く染める。ゲルンハルトは”威厳”を守る為に必死で耐え、それ以外のイワン達も、盛大にリバースするがオットーは平気な顔でスロットルを握っていた。当然、ポールマン達も、イワン達に負けず盛大にリバースを繰り返していた。


「じいちゃん、流石だね」


「ホッホッホ、初めての割には上手いじゃろ」


「へっ?」


 物凄いデジャブがヴィットを襲った。その瞬間、物凄い大波が正面から迫った!。


「突っ込むのかよっ!」


「あっ!!」


 ヴィットの大声に負けない位、オットーが叫んだ。


「あっ!! じゃない! 前見てなかったのかよっ!!」


 当然オットーは、よそ見していて前から迫る大波に初めて気付いた。


「そこの箱からパラシュートを出すんじゃ!」


「何言ってるの!? 墜落じゃなくて、沈没だよっ!!」


 涙目のヴィットが叫ぶ。


「ほれ、早よせんと海水浴じゃぞ、ゲルンハルトも手伝え」


 迫る大波! だが、オットーは平然と言った。


「とにかく、パラシュートを開くぞっ! イワン! ハンス! ヨハン!」


 ゲルンハルトの叫びで、イワン達が舷側に四つのパラシュートを結び、解放した! その瞬間! 強風がパラシュートをブチ殴り、舟艇は宙に浮いた!。


「うっそっ!!」


 舟艇は大波を飛び越え、荒れる大海原に猛烈な勢いで着水する。ヴィット以下全員が、物凄いバウンドに涙を散らして耐えた。そのまま、強風を孕み舟艇はモーターボートみたいに荒れる海を疾走した。


「マジか……」


 目をテンにするヴィット達を乗せて疾走する舟艇は海、賊の島を目指した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ