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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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対潜戦闘

「中々やるじゃない」


 マリーの補給中に、薄笑みのタチアナが声を掛けた。


「そりゃ、どうも」


 無向きもせずに、ヴィットは背中で返事した。暫くの間を空け、タチアナが言った言葉はヴィットの作業を停止させた。


「あなたもね、マリー」


「ありがとう、タチアナ」


 マリーにもタチアナは薄笑みを見せた。横目で見ていたヴィットは、その微笑みに優しさの様な感じを受けて思わず笑みを浮かべる。


「所で、ヴィット……あなたの、お母さんはどんな人だった?」


「えっ?」


 あまりにも突然で、ヴィットは固まってしまった。そして、暫く忘れていた母親の笑顔が鮮明に蘇った。


「聞きたいの」


 タチアナは真剣な目でヴィットを見た。小さく溜息を付くと、ヴィットは静かに話し出した。


「……いつも笑ってた……野に咲く、花の様な人だった」


「……そうなんだ」


 タチアナは静かに瞳を伏せた。そして、ヴィットが何か言おうとした時、警報が鳴った。結局、平穏でいられたのは24時間なかった。


「対潜戦闘! 用意!」


 スピカーが怒鳴り、クルー達は一斉に動き出した。多くの銃座は海面に向け配置に付いて、魚雷攻撃に備えていた。


「魚雷を撃つのか?」


「その様だ」


 イワンは唖然と呟き、ゲルンハルトも溜息交じりに返事した。


「アンタ達も魚雷を狙撃してくれ」


「えっ、まあ一応は撃ってみるけどな」


クルーは普通に言って、イワンは苦笑いで答える。


「当たるのか?」


 砲弾を装填しながら、ヨハンも普通に言った。


「さあな、撃った事なんて無いからな」


「飛行機に当てられるんだから、大丈夫だろ?」


 照準器を覗き込んだイワンはが他人事みたいに言うと、ゲルンハルトはニヤリと笑った。


「全く、ウチの車長は簡単に言ってくれるぜ」


 照準を覗いたまま、イワンは口元を綻ばせた。


「潜水艦?」


「二隻が高速で接近中だよ」


 驚くヴィットに、マリーは平然と答えた。


「流石に無理でしょ?」


「失礼ね、泳ぎより潜る方が得意なのよ」


「そっか、泳ぎは遅かったもんね」


「ブー」


 拗ねた様に、マリーは砲塔を回転させた。


「でもさ、海中で有効な武装なんてあるの?」


「えへ、TDに頼んでおいたよ」


「何だよ?」


「見てのお楽しみ」


___________________________



 飛行甲板に出ると、リーデルの機が発艦する所だった。後席のガーデマンが手を振り発艦して行く。


「さて、まだ訓練の最中だろうから俺達も出るぞ。水中なら噴射剤は使わなくて済みそうだからね」


「オッケ、もう直ぐTDが来るから」


 甲板に待機するマリーの元に、大汗のTDがやって来た。


「全く、無茶な注文ばっかして」


「ありがとうTD。流石天才タンクドクターね」


「まあ、それ程でもあるけどさ。いいかいマリー、発射はこのボタンを押すだけ、これは言わば音の魚雷だ。水中の音は空気中と比べて、弱まりにくく、遠くまで伝わるという性質がるんだ。潜水艦にとって、音が一番の索敵要素だからね、これを炸裂させて潜水艦の耳を塞ぐんだ」


 TDは短めの魚雷を二本用意して、鼻高々に説明した。


「魚雷って、何処に発射管があるの?」


「そんなの無いよ、持つの」


 ポカンとするヴィットに、マリーはアームを出して掴んだ。その恰好が何だか可笑しくて、ヴィットは笑いを堪えるのに苦労した。


「なるほどね。でも、耳を塞ぐだけ?」


「いいえ、イワンがワイヤーを用意してくれてるの」


「ワイヤー? 何に使うの?」


「後のお楽しみ」


 話は弾むが、傍で見ていたリンジーは胸騒ぎに包まれていた。初めての対潜戦闘と言う事もあったが、胸が痛い様な苦しい様な感じは、ヴィットがハッチに消えてから尚更大きくなった。


「ヴィット! マリー気を付けるのよ!」


 サルテンバに走ったリンジーは、無線機を掴むと大声で怒鳴った。


「どないしたん? リンジー」


 あまりの大声に、チィコが大きな目を見開いた。


『何だよ? 鼓膜が破れるだろ』


 苦笑いのヴィットが返信するが、リンジーの声は更に大きくなった。


「相手は潜水艦だよ! マリーの電磁装甲は水中では効果が半減するのよ! 大型魚雷に直撃されたら、セラミック装甲も……」


怒鳴り声は、途中で涙声に変わった。


『大丈夫だよリンジー……必ずヴィットを守るから』


 だが、そこにマリーの優しい声。リンジーは小さく頷く事しか出来なかった。


_____________________________



 艦橋で、マリーの発艦? と言うより飛び込みを見ていたタチアナは、ハイデマンにポツリと聞いた。


「戦車で潜水艦と戦えるの?」


「普通は無理ですよね。大体、戦車は陸上兵器、海中兵器の潜水艦と戦う事自体が常識では考えれれません……ですが……何故か期待させてくれますよね、マリーと言う戦車は」


 腕組みしたハイデマンは、真剣に答えた。


「それじゃあヴィットは?」


「ヴィット? ああ、あのマリーの操縦者ですか……多分彼もそうです、期待させてくれる何かを持ってると思います」


「……そう」


「気になりますか? 彼の事」


「……まあね」


 笑みを浮かべたハイデマンの問いに、タチアナは真剣な顔で答えた。


「艦長、主計班より報告です」


「何だ?」


 通信員が、ふいにハイデマンに報告した。


「食料庫より、高級缶詰と酒類が無くなったそうです」


「……あの爺さん達か……で、捕まえたか?」


「それが、手隙のクルー総出で捜索してますが、今だ位置さえ確認出来ません」


「……全く、ステルス爺さんだな」


 呆れ顔のハイデマンは、ポツリと呟いた。


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