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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第二章 進化
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連携

 アリスⅡを中心にした効力射の着弾は、ケルベロスの周囲を爆発の森に変える。マリーは爆風を避け一旦距離を取るが、ミネルバに叫ぶと再び突進した。


「砲撃を止めて! 突っ込む!」


『無理すんなよ、まんまる』


 初めて聞くミネルバの穏やかな声に、思わずマリーも気持ちが和らいだ。マリーは瞬時にケルベロスの被弾状況を確認すると、直撃数の割に被害は少なく感じた。片腕の損傷と数か所の車輪の破損が見受けられる位で、大幅な機能低下は見られない。


 そして、改めて自分破損状況を確認する。車体側面の装甲破損、右アーム損傷、右中央タイヤ破裂に合わせた足回りの異常振動、対空機銃及び対空レーザー大破といった状態だった。


「せっかく皆が直してくれたのに……」


 申し訳ない気持ちがマリーのテンションを一瞬下げるが、モニターに映るヴィットとリンジーの情けない顔がマリーの背中を支えた。


 気を取り直したマリーは、全速でケルベロスに向かう。敢えてヴィットには連絡しない、それはマリーなりの気遣いだった。


_____________________



「あっ、チィコはどうした?」


 急に思い出したヴィットが焦って聞くが、リンジーは俯いて目を逸らした。確かにサルテンバの中にはチィコはいなかった。ヴィットは今頃になって胸を撫で下ろすが、一緒でない事に違和感を感じた。


「どうしたんだよ?!」


 揺れる気持ちが思わず言葉に出る。そんな気は無いが、ヴィットの声は少し苛立っていた。敏感に感じ取ったリンジーは言葉が出ないが、ヴィットはリンジーの肩を激しく揺らした。


「……私は……」


「聞こえないよ! お前の大切な姉貴だろ!」


「チィコを危険な目に……合わせたくなかった」


 リンジーの瞳から大粒の涙が零れ、ヴィットは大きな溜息を付いて声のトーンを落とした。


「なら、お前はいいのかよ?」


「ヴィットだって、いつも無茶するじゃない!」


 泣きながらリンジーがヴィットに掴み掛かるが、ヴィットは目を伏せた。


「俺は……マリーを失う訳にはいかないんだ。マリーは大切な家族だから」


「私だって、ヴィットやマリーを失いたくない!」


 急に立ち上がったリンジーは、大声を出した。


「危ない!座れ!」


 慌ててリンジーを座らせたヴィットは、もう一度大きな溜息を付いた。だが、そんな一時もリンジーの悲鳴で現実に引き戻される。


「マリーがっ!!」


___________________



 ケルベロスに向かうマリーの通信機に、ヴィットとリンジーの会話が聞こえた。チィコがいなかった事への不安は晴れたが、それ以上に二人の会話の内容がマリーの更なる力を与える。


『マリー! もう一度行くよ!』


「だめよ! 被弾の損傷があるっ! 回避運動が出来ないよっ!」


 態勢を立て直したミリーの通信をマリーは大声で否定する。主翼の損傷は回避運動どころか、真っ直ぐ飛ぶ事さえ困難にしている事は地上からでも簡単に分かる。


『一人じゃ無理! 大丈夫、援護出来るから!』


 それでもミリーは引かない。機体を捻りながら、ケルベロスの直上に回り込んだ。


「離脱の時が一番危ないんだからねっ!」


『分かってるって!』


 叫び返すミリーは機関砲を乱射しながら急降下! ケルベロスの反応を見ながらマリーは更に加速した。


『まんまる! こっちも援護の砲撃をする! 当たるなよっ!』


 直ぐにミネルバの通信も飛び込み、マリーは一瞬のチャンスに賭ける。その視線の先には、半開きになったケルベロスのメンテ用ハッチがあった。


 直上に気を取られたケルベロスの注意が、ミレルバの砲撃で更に分散する。マリーは死角に回り込みながら、一気に加速した。


 その瞬間! ケルベルスは全ての攻撃を無視して主砲をマリーに指向した。


『マリー!! 読まれてるっ!』


『一旦引けっ!』


 ミリーとミネルバの声が同時に通信機に炸裂するが、マリーは加速を止めない。その訳は火花を散らすマリーの足回りにあった。リンジーを救う為の無理な着陸は、足回りに深刻なダメージを与えていたのだった。


 一瞬遅れて、ヴィットの通信機からリンジーの悲鳴も聞こえた。だが、マリーにはやり直しの時間も体力も残りは少なかった。


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