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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第二章 進化
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総攻撃

「久々の接近戦じゃ、装填の早さが勝負じゃな」


「ワシは大丈夫じゃが……」


 張り切るオットーだったが、装填手のポールマンは腰を押さえて白目になるキュルシナーの方を見て呟いた。


「またかい? お前さんにガラスの腰にはかなわんのぅ」


 呆れ顔のベルガーは、どっこらとハンドルを切る。


「このまま接近は、まずくないか? なにせ、砲手がこのザマじゃ」


 他人事みたいなキュルシナーは、腰を押さえながらも悠然と葉巻を取り出す。


「仕方ない、シュワルツティーガーの傍に行け」


 オットーは追撃して来る、敵戦車の配置を見て薄笑みを浮かべた。


「付いて来るかのぅ……全部で六両じゃけど」


 ポールマンは流れる汗を拭きながら、敵戦車の数を数える。


「何、敵はマチルダを侮っておる。装甲だけは厚いが、砲は豆鉄砲。池のアヒルでも追っとるつもりじゃろうて……優位は、油断の裏返しじゃ。その影の虎には気付くまい」


 キラリと眼鏡を光らせたオットーが自信たっぷりに言うが、当然誰も聞いてなくて好き勝手な事をしていた。


「まあ盾くらいには、なるか」


 これまた平然とベルガーが呟き、ハンドルをシュワルツティーガーの方に向けた。


「他の連中は付いて来とるか?」


 ポールマンの問いに、周囲を確認したオットーは平然と言う。


「何、奴らに戦闘指揮など必要ない。勝手にさせとくのが、一番戦力になるわい」


 確かに他の連中も、見違える様な戦い方をしたいた。自由に勝手に……軍隊でも乱戦になれば仕方なく行われるだろうが、タンクハンターにとっては正に正攻法なのだった。


______________________



「じぃさん達、接近してくるぞ」


 呆れた様にイワンが報告し、ゲルンハルトは目を疑った。マチルダは敵戦車を引き連れる様な恰好で接近していたのだった。


「やるじゃないか……ヨハン! 装填のスピードを上げろ! イワン! 外すなよ!」


 ゲルンハルトの号令で、次々と敵戦車を撃破するシュワルツティーガー。マチルダは丁度、シュワルツティーガーの目の前を横切ったのだ。当然、追撃する敵戦車は横腹を晒す形になる。


 そこにイワンの必殺の一撃がお見舞いされた。ただし、何時もと違って徹底的なエンジン部分の破壊に特化していた。


「履帯を切っただけじゃ俺達と同じ、至近距離でノーガードの打ち合いはゴメンだからな」


 イワンは涼しい顔で言うが、その射撃の腕前にはゲルンハルトさえ一目置いていた。


「エンジンに被弾すれば、車内は煙に包まれる。嫌でも出て来るさ」


 相手に同情するみたいにハンスは言うが、ヨハンは神速で装填を続けゲルンハルト怒鳴った。


「後ろに回り込まれたら、砲の旋回が追い行かない! 早めの指示を頼む!」


「了解! 今度は六時の方向、距離二千! 新手だ!」


 ゲルンハルトの指示で、傷付いたシュワルツティーガーの砲塔が旋回する。例え脚が折れても、虎の牙は健在だった。


______________________



「行かせてや!」


 暴れるチィコを砲手の男が押さえる。大泣きするチィコを、自分も泣きそうになって大声で怒鳴っていた。


「まだ遠いっ!! 走って行くのか?! あの砲弾が飛び交う中をかっ!! 戦車乗りなら知ってるだろ! 主砲弾の怖さを! あの弾はなっ! 人なんて至近弾でも即死なんだぞ! お前が先に死んだら妹はどうするんだっ!!」


 その凄い剣幕にチィコは身体を震わせる。だか、砲手の男はチィコの頭をそっと撫ぜた。


「心配するな、お前の妹は絶対に死なせない」


「……うん」


 小さく頷くチィコを横目で見ると、ミネルバは号令を出した。


「巨人野郎に主砲を撃たせるな! まんまるを援護しろ!」


「姉さん……後ろ」


 その時、装填手が済まなそうに言った。振り返ったミネルバの視界には、部下達の突撃砲が隊列を組んで殺到する姿が飛び込む。


「お前らっ!……」


『すみません姉さん! 俺達も一緒に戦います!』


 ミネルバが怒鳴る前に、通信が入った。一瞬、鬼の様な形相になったミネルバだったが、通信機のマイクに怒鳴り付けた。


「左右に展開しろっ! お前達は敵戦車を待ち伏せろっ! いいかっ! 絶対に巨人の射程に入るんじゃないぞっ!」


______________________



 ミリーの陽動攻撃と言っても、直上から30ミリ機関砲の直撃はケルベロスでも堪らない。マリーの主砲より危険と判断したケルベロスの注意は、ミリーに重点が置かれた。


 しかし、接近するマリーにも容赦なく主砲弾が撃ち込まれ、その度にマリーは車体を浮かせた。だが、ミリーの援護の甲斐もあり、マリーはケルベロスの寸前に迫る。


 底面ロケットを噴射して、マリーはケルベロスの背中部分に取り付いた。当然、振り落とそうとケルベロスは激しく車体を回転させるが、マリーはアームで必死にしがみ付いた。


 その隙を狙い、急降下したミリーのモーターキャノンが火を噴く。一連射でケルベロスの右前輪三個を吹き飛ばし急上昇で離脱しようとするが、その背後に37ミリ機関砲が雨の様に撃ち込まれる。


 機体を反転、ローリングで回避しようとするが、前に被弾した主翼の影響で回避運動がミリーにしてみれば緩慢になった。回避したつもりが、更に主翼に命中弾を喰らう。


 瞬時にピンポイント電磁装甲を展開するが、ミリーの主翼の三分の一が爆炎と共に砕け散った。


「ミリー!!」


 叫んだマリーはケルベロスの腕に、アームを絡ませる。しかし、細いアームなど簡単に捩じ切られ、その勢いでマリーの車体が吹っ飛んだ。しかし、離れ間際マリーは渾身の主砲を連射、ケルベロスのメンテ用のハッチを吹き飛ばした。


 ミリーにとって、ほんの数秒のブランクも大きな援護となった。緊急用ロケットモーターを全力噴射! 直ぐにケンタウロスの射程外に退避した。


 だが、地面を転がるマリーに至近距離からケンタウロスの主砲が指向する。照準なんて関係無いゼロ距離の射撃! マリーの脳裏に瞬間的にヴィットの笑顔が浮かんだ。


 その刹那! ケルベロスの左右の車輪が大音響と共に爆発した。


『まんまる!! 今のうちに距離を取れ! 手下の効力射が行く!』


 瞬時にマリーがロケット噴射で距離を取った。


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