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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第二章 進化
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激戦

 シュワルツティーガーに戻ったゲルンハルト達は、急いで各部の点検を行う。


「砲の旋回、発射は可能だ!」


「片方だけの履帯だが、少しは方向も変えられる! エンジンも生きてる!」


「残弾もまだ残ってる!」


 イワンが叫び、ハンスも続き、ヨハンが報告する。


「敵戦車を味方に近付けるな!」


「どこまでやるんだ?!」


 号令を掛けるゲルンハルトに、イワンが笑いながら聞いた。


「さあな! 出たとこ勝負だ!」


「三時の方向! 二両!」


 笑い返すゲルンハルトが敵を探す。直ぐにヨハンが見付け、同時にイワンが砲塔旋回させると主砲を発射した。


 だが、動けない戦車はただの砲台。左右から囲まれると、成す術は無い。


「もう終わりだ! 脱出するぞ!」


 素早く判断したゲルンハルトが叫んだ瞬間、敵の戦車が直撃を受けた。


「後方から味方戦車! 先頭は……マチルダ…だ」


 唖然と呟くヨハンの言葉に、少し嬉しそうにゲルンハルトが新たな指示を出す。


「ジジィ達,余計な事を……脱出は後回しだ! 一両でも敵の戦力を削ぐ!」


 動かない戦車で戦うゲルンハルト達の気持ちに悲壮感など微塵も無い、ただ皆を助けたい……それだけしか、存在しなかった。


_______________________



 ミリーは一秒でも早く襲撃機を撃墜する為、リスクを犯す。モーターキャンノンの30ミリ機関砲でさえ、接近しないと効果が無いブ厚い装甲を抜く為、相手の37ミリ機関砲を掻い潜る。


 一発でも当たれば、致命傷に成りかねない危険な接近でもミリーは果敢に攻めた。


『ミリー! 無理しないで!』


「今しないで何時するの!!」


 マリーの心配そうな声が炸裂するが、ミリーは更に大声で言い返した。そのまま二機の編隊に突っ込み、正面から37ミリ機関砲の雨を掻い潜る。


『後ろ!』


 マリーの大声で反転! 至近距離で30ミリモーターキャノンが火を噴き垂直尾翼を吹き飛ばした。その瞬間にも機体を捻り、二機のうち一機に攻撃を仕掛けるが流れ弾の37ミリ弾がミリーの胴体に命中した!。


 閃光と爆発! 爆煙と飛び散る破片! マリーの心臓が止まりそうになるが、爆煙の中からミリーの機体が飛び出した。


「痛いっ! やったなっ!」


 ミリーのお返し! 30ミリ機関砲弾が残りの二機に吸い込まれると、瞬時に撃墜した。


『ミリー! 大丈夫なの! 直撃だよっ!』


「えへへ……簡易電磁装甲、戦闘機用の試作品だよ。ピンポイントの緊急用だけどね」


 照れ笑いのメイーの声が、大声を出したマリーの心臓をなんとか落ち着かせた。


「ワタシがケルベロス引き付ける! その隙に取り付いて!」


 襲撃機を全て片づけたミリーは、地面を疾走するマリーに叫んだ。


________________________



 マリーは全速でケルベロスに向かう。幸いケルベロスの主砲はミリーの直撃弾の影響で照準の精度が落ちて、精々至近弾と言う所だが破壊力はの低下は無い。


 至近に着弾しただけで、マリーの車体は爆風と破片で大きく浮き上がる。車体を激しく叩く破片や石片など、ものともせずマリーはケルベロスを目指す……EMP爆弾をアームに握り締めたまま。


 ミリーは急降下でマリーの援護をする。四門になった37ミリ機関砲は弾幕こそ半分になったが、精度は変わらずミリーを苦しめる。限界のGで急旋回を繰り返すと、機体のアチコチで悲鳴があがるが、ミリーは援護を止める事はない。


 サイドキックも噴射剤の減少であまり使えず、直撃は電磁装甲で跳ね返すが、度重なる直撃で側面のダメージ部分の激痛に、流石のマリーも呻き声が出た。


「ぐっ!……」


 それでもマリーは全開でケルベロスに迫る! ヴィットや皆を守る為に。


___________________



「マリーの奴、一人で突っ込むつもりかっ!」


「ヴィット……マリー、何か持ってる」


 苛立つヴィットが叫び、意識を取り戻したリンジーがマリーが持つ物に気付いた。


「あれか、ミリーが持って来た……確か、EMP爆弾とか言ってな」


「何ですって! EMPって、電子パルス爆弾なのよっ!」


 リンジーが大声を上げ、ヴィットの血の気が一気に引いた。


「何だよそれ?」


「あれが至近で爆発したら、全ての電子機器が破壊されるの! マリーだって無事じゃない!」


 リンジーの言葉は衝撃を超えていた。震えるヴィットは、恐る恐る聞いた。


「それって、まさか?……」


「……マリー……マリーが、マリーが消えて無くなる……車体だけを、残して……」


 リンジーも体を震えさせ、言葉を途切れさせた。


「そんな……そんな事が、あってたまるか……」


 急に立ち上がり、ヴィットはフラフラと走り出そうとするが、リンジーが強く腕を取って涙を浮かべた目で、ヴィットを見詰めた。


「可変戦車の中で爆発させ、距離を取れば大丈夫だから……マリーだって、知ってるから」


 リンジーの言葉は、今のヴィットには届かない。掴まれた腕を振り払おうと、ヴィットは必死でリンジーの腕を掴む。リンジーは激しく抵抗し、二人は無言で掴み合った。


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