援軍
「ミリーが来てくれた……」
何時もは威厳のあるゲルンハルトが、ハッチの中に崩れる様に座り込んだ。
「今のうちにリンジーを助け出す!」
アクセルを蹴飛ばすハンスが、サルテンバに機首を向けた瞬間! シュワルツティーガー右側の履帯が吹っ飛んだ。
「何だっ!」
慌てて上空を見たゲルンハルトは、悔しさに任せハッチを思い切り殴った。マリーの事に気を取られ、襲撃機の接近に気付かなかったのだ。
「止まったら直ぐに! 逃げろ!」
ゲルンハルトは直ぐに叫ぶ! 高速走行中に片方の履帯を破壊されたシュワルツティーガーは、激しく回転しながらもハンスの神業的テクニックで横転は免れ停止した。
直ぐに全員が飛び降り、岩陰に隠れる。
「マリーとミリーが高度を取るぞ!」
直ぐにイワンが二人の動きに気付いた。
「お前達はここにいろっ!」
今度はゲルンハルトが叫び、シュワルツティーガーに戻る。
「戻れっ! 狙い撃ちされる!!」
「あそこを見ろっ!」
ハンスが大声で叫ぶが、ヨハンが指す方向には敵戦車が侵攻していた。イワンはそれを見ると、直ぐにゲルンハルトの後を追う。
「ったく! 動けないんだぞ!」
「砲は生きてる! 砲台にはなる!」
ハンスも叫んで続き、ヨハンもシュワルツティーガーめがけて走り出した。
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「戦車隊、側方から回り込め。一気に勝負を賭ける!」
「了解! 戦車隊は側方に展開! 後方の敵を各個撃破せよ!」
指揮官は直ぐに指示を出す。副官にもミリーの参戦は予想外だったが、まだ流れは自分達にあると、戦車隊に指示を伝えた。
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マリーか空中で受け取ったのは、EMP爆弾だった。
『試作品よ! 有効範囲は100m前後! それ以上かもしれない! いい、必ずケルベロスの中で起爆するのよ!』
「ありがとう、ミリー」
受け取ったマリーは急降下でサルテンバの元に降りる。ミリーは反転すると、ケルベロスの直上に回り込む。まだ爆装は半分程残っていて、マリーのアシストの為に急降下爆撃を試みる。
ケルベロスは37ミリ機関砲で応戦。撃墜を試みるが八門の機関砲弾の雨を掻い潜り、ミリーは残りの爆弾を投下した。だが、流石のミリーも両方の腕は狙えない。狙いは片腕、渾身の精密爆撃はケルベロスの片腕を吹き飛ばした。
だが、急降下爆撃の最大の弱点は投弾した後の離脱だった。ミリーは機体を捻りながら速度の低下が無い様に水平方向に離脱するが、急降下に比べると速度は落ちる。
ケルベロスの怒りの37ミリ砲弾が、右主翼の先端で炸裂! バランスを失い錐揉み状態になった。
「ミリー!!!」
マリーの叫びが大空に響き渡った。
『大丈夫! 掠り傷よ! 立て直す!』
ミリーは旋転方向の確認するとスロットルを戻し、反旋転側へのラダーの調整で立て直した。低高度での錐揉みからの復元は、高度なテクニックを要するがミリーはいとも簡単にこなす。そのまま回転が収まると、スロットル全開! 残りの襲撃機に向かった。
マリーはミリーの無事を確認しながら、サルテンバに向けて全力で飛行した。
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マリーは回転を落とす暇も惜しみ胴体着陸を敢行する。足回りのダメージより、時間を優先させた。車体が制止すると、直ぐにヴィットに叫んだ。
「ヴィット! リンジーを助けに行って! ワタシが時間を稼ぐ!」
「くっそう……目が……」
かなりの長い間回転に晒されたヴィットは、目を押さえ頭を激しく振って視界を引き戻そうとするが、ほんの目の前の物にも焦点は定まらない。
「しっかりしなさい! 早くしないとリンジーが!」
「分かった」
ヴィットは、よろけながらもハッチから這い出ると、リンジーの元に走る。見届けたマリーはエンジン全開! ケルベロスへ向けて主砲を乱射しながら接近した。
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ヴィットは、よろけながらも必死でサルテンバに走る。横転したサルテンバに飛び乗ると、ハッチをこじ開け車内に入る。非常灯の赤い世界でヴィットは倒れているリンジーを揺り起こすが、気を失ってるリンジーが何時もより小さく見えた。
「しっかりしろ!」
「……ヴィット……」
意識が朦朧とするリンジーの肩を抱き車外に出ようとした時、サルテンバの無線機が雑音と一緒にミネルバの声を運んだ。
『早くそこを出な! 狙われてるぞ!』
「ミネルバ! どうして?!」
『いいから、早く!』
慌ててリンジーを連れ出すが、ヨロヨロのリンジーを真横になったサルテンバから連れ出すのには苦労した。そこに、ケルベロスの主砲が指向する。マリーは軸線に飛び込むと主砲を乱射するが、直撃はマリー自身の大破を意味するが迷いなんて微塵も無かった。
『どけ! まんまる!』
その刹那! マリーの無線にミネルバの怒号が飛び込み、咄嗟にマリーが軸線をずらすと同時にアリスⅡの主砲弾がケルベロスに命中した。
それはケルベロスが主砲を発射したタイミングにドンピシャで、大きく逸れた主砲弾はサルテンバの遥か前方で炸裂した。
ヴィットは爆風からリンジーを守る為に覆い被さるが、飛んで来た破片や石片などが背中に当たって呻き声を上げる。
『よく守った! 流石男の子だ!』
ミネルバの通信に苦笑いしながら、ヴィットはリンジーを岩陰に連れて行った。




