黒い巨人
感想を頂いた方よりのアドバイスで、マリーはどんなイメージなのか、読んで下さる方にも説明した方が良いのではとの、ご意見を頂きました。
(1)マリー=陸自87式偵察警戒車を全体的にもっと丸く、可愛くした戦車。
※色は赤で、ピンクのオシャレ迷彩。砲塔には黄色いリボンの可愛いドクロマーク。
※飛行状態はガ〇ラ。
(2)シュワルツティーガー=ティーガーⅠを少しスリムにした戦車。
※色は漆黒で砲身に撃破マーク。
(3)サルテンバ=地球連邦軍61式戦車を少し可愛くした戦車。
※色はサンドベージュで、砲塔に変なウサギのマーク。
(4)マチルダ=マチルダⅡ歩兵戦車に道具を満載した戦車。
※色は元々はグレーが基本のダズル迷彩だが、今は錆色?
(5)ミリー=ウエストランド・ワイバーンS-4を更にスマートにした戦闘機。
特に尾翼と胴体部分をスマートに!。
※色はマリーと基本的に同じ赤。垂直尾翼には黄色いリボンの可愛いドクロマーク。
※6枚式二重反転プロペラは取り付け部分とブレード形状をカッコ良くした形。
主要戦車&戦闘機の簡単なイメージです。お読みになる際に、更にイメージを膨らませて頂けましたら幸いです。
マリーは側面から侵入する。目標は可変戦車の偵察だが、いち早く察知した中戦車二両が、行進間射撃で行く手を阻んだ。
「撃ってきたぞ!」
「大丈夫!」
マリーは砲弾を躱しながら、一気に差を詰めると必殺の履帯破壊で動きを封じた。
「マリー! 可変戦車が動き出した!」
ケルベロスは艤装網を掛けたまま動き出す。それはまるで新種の巨大生物の様に見えて、ヴィットの背中に冷や汗を流させた。
「動きが速いぞ!」
一気に加速したケルベロスの艤装網が風圧で飛ぶと、漆黒の車体が現れた。
「見た目は普通の戦車だけど、装輪か?」
ヴィットは前後に三輪ずつ間を開けて装備された計十二輪のタイヤに、驚きの声を上げた。
「主砲は120ミリクラスの長砲身! 両サイドの副砲は多分腕ね、大口径の機関砲だと思う!」
急速旋回しながら、マリーも叫んだ。だが、ケルベロスはマリーの速度のに匹敵する超信地旋回で、主砲を発射した。咄嗟のサイドキックでなんとか躱すが、至近距離での直撃は電磁装甲でも耐えられるかどうか分からない。
「一旦離れる!」
マリーは叫びながら加速するが、ケルベロスの加速はマリーに匹敵した。
「何っ!」
思い切りアクセルを踏み、加速状態に入っても差が開かない状態にヴィットの背筋が凍った。マリーはロケット榴弾を連射して脚を止めようとするが、直撃にもケルベロスは全く怯まない。
再び主砲がマリーに照準する! コンマ数秒の瞬間! 直撃を察知したマリーは底面ロケット全力噴射! 寸前で躱すと大空に舞い上がった。
ケルベロスは、ゆっくりとスタンディングモードに移行する。前後のタイヤが間を詰めると、車体中央部分が大きく迫り上がり、胴体の様な形に変形した。9m程の全長は6m程になり、3m程の全高は倍以上になった。
両サイドの副砲は車体から離れ腕の様になり、顔こそないが主砲が最上部に位置していた。全体のシルエットはケンタウロスに似ていたが、如何にも厚い装甲の頑丈そうな胴体は盾を持たない事で、その強度を見せ付けている様だった。
しかも驚くべき事に、空中で高速起動するマリーに主砲の至近弾を浴びせて来るのだった。主砲自体は旋回しないが、脚元の動きで高速飛行目標に照準するのだ。
それは、ケルベロスにとって、空からの攻撃さえ弱点にはならない事を証明していた。
「一旦、引くよ!」
「賛成だっ!」
マリーは撤退を叫び、ヴィットも目を回しながら賛成した。だが、マリーはハルツではなくランスベルグの方向に進路を向けた。
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「アンタレス、離脱します」
「今日は、様子見か……」
副官の報告に、指揮官はニヤりと笑った。
「陸上、空中供に機動性は格段に向上しています。ケルベロスの照準が追い付きません」
「ケルベロスが目標を外す所を始めて見たな」
少し声を震わせる副官の追加報告だったが、指揮官は髭を撫でながら口元を綻ばせた。
「しかし、兵装には変化が無い様です。現在のロケット榴弾では、ケルベロスには通用しません」
「確かにそうだ。だが、ケンタウロスの時を思い出せ。奴は直ぐに弱点を見抜き、最終的には撃破した」
指揮官は少し嬉しそうな顔をするが、険しい表情で副官は言い返した。
「お言葉ですが、現段階でケルベロスに弱点は存在しません」
「現段階、ではな……」
言葉に含みを持たせた指揮官は、ゆっくりと腕組みをした。
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「どこだ? ここ?」
目を覚ましたヴィットが、ボンやりと呟いた。
「ランスベルグよ」
「えっ? どうして」
「補給よ」
「補給って、やったばかりじゃない? でも、お腹空いたなら仕方ないね」
ヴィットは何時もと様子が違うマリーの事がきになったが、努めて明るく振る舞った。
「マリー! ヴィット!」
そんな気まずい雰囲気を、ノー天気なチィコの声が吹き飛ばした。肩をゴキゴキさせながらハッチから出たヴィットは、目を細めて呟いた。
「何だ、お前ら? 何しに来たんだ?」
「何やって、そらウチらも鉱山の護衛に来たんや」
「ヴィット……怪我とかしてない?」
明るいチィコとは対象に、リンジーは俯き加減で顔を赤らめた。
「何だよリンジー、顔が赤いぞ、風邪か?」
全くリンジーの様子に気付かないヴィットは、笑いながら言った。
「マリー、もう安心やで。ウチらが来たんや、大船に……マリー」
笑顔のチィコが近付いても、マリーは微かに車体を震わせるだけで何も言わなかった。
「マリーどうしたの?」
心配そうに声を掛けるリンジーだったが、それでもマリーは何も言わなかった。
「どうしたんだよ? おかしいぞマリー」
今度はヴィットが笑いながら聞いた。そして、暫くの沈黙の後、マリーが小さな声で言った。
「ごめんなさい……チィコ、リンジー……今回は、このまま帰っって……」




