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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第二章 進化
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盗賊

「何でアンタがここにいる?!」


 思わず声を上げたヴィットが、強い視線でミネルバを見た。


「相変わらず、良い目だねぇ。あれ、まんまるタンクはどうしたの? ……丁度、突撃砲の装填手が足りないんで、雇ってあげようか?」


 薄笑みを浮かべたミネルバは後方に続く四両の突撃砲戦車を指しながら、ヴィットに棘のある視線を向けた。


「質問に答えろ」


 ヴィットも負けじと睨み返す。


「アタシも鉱山の護衛さ。今は補給に来た」


「護衛? 盗賊が?」


 口元を緩めるミネルバの言葉は、ヴィットに疑問を投げ掛けた。


「ハルツはアタシの故郷さ。守るのは当然だろ……坊やこそ、何しに来たんだい?」


 ミネルバの言葉は少なからずヴィットに動揺を与え、言い返す言葉を弱くさせた。


「俺も護衛だ」


「そう。でも、巨人には気を付けな。まんまるタンクなんて、簡単に踏みつぶされるからね」


 そう言い残し、ミネルバは去って行った。残されたヴィットは、言葉に出来ない不思議な感覚に包まれていた。


______________________



 マリーの所へ戻ると、ヴィットは少し重い口を開いた。


「ミネルバも護衛で来てた。ハルツの街は故郷なんだって」


「そうなんだ」


 あまり驚かない様なマリーの声は、揺れるヴィットのココロを優しく支えた。直ぐに噴射剤を補給するとヴィットはマリーと一緒にハルツの村へ出発した。


 街を抜けると次第に道は険しくなり、ヴィットは周囲の索敵に目を凝らす。地形や土壌、敵戦車が進行して来る方角を考えながら。


「ヴィット、見て。ローリーに貰った地図を解析したの。山の麓の鉱山には掘り出した鉱物を運搬する為の線路が二方向に伸びてるの。一方は山の反対側に回り込み、もう一方は西側、つまり森林地帯を抜け海の方に繋がってるみたい。山の反対側はゼクセンの方角……かなり大きな工業地帯よ。鉱山に続く道は三本、どれも戦車の通行は可能よ」


 マリーの説明と、モニターに映る地図を見ながらヴィットは考えを巡らせた。


「線路沿いに戦車は通れるの?」


「重戦車は無理だけど、軽戦車くらいなら通れるって、ローリーが言ってた」


「少なくとも、五つの侵攻ルートがあるって事か」


「そうだね、今度は陣地の防衛戦。地形上の優位を維持しながら展開できる防御であるけど、火力と反撃を併用しなければ撃退することは難しいね。敵は自分達の攻撃ポイントを作れるし、受け身だから戦力も分散されるかもね」


 的確な解説のマリーが頼もしくて、ヴィットは笑顔になった。


_______________________



 ハルツの町に近付くと、破壊された戦車が道端に目立つ様になって来た。中には大きな力で踏み潰された様な車両もあり、ヴィットの中で”巨人”と言う言葉が頭をもたげた。


「前方に交戦中の車両があるよ。三対七だから、かなり押されてるみたい」


「敵は数が多い方?」


 マリーが急に報告を入れ、モニター確認したヴィットが状況を聞いた。


「交信の状況から、そうみたい。モスって人もいるよ」


 ヴィットはマリーの返事を聞くと同時に無線機に叫んだ。


「モスさん大丈夫か! 応答して!」


「おう、ヴィットか? 敵は中戦車だ、脚が速くて囲まれそうだ」


「分かった、後退して! 援護に向かう!」


「了解! と、言う事はマリーは直ったんだなっ!」


 モスの声が、通信機の向こうで歓喜に咽ぶ。


「ええ、もう大丈夫よ!」


 嬉しそうな声で返信するマリーの声が、ヴィットの背中を押した。直ぐにアクセル全開で現場に向かうヴィットには、不安と言う足枷さえ無いみたいに体が軽く感じた。


「前方に三両、サイドに二両づつが展開してる!」


「サイドから行こう! 真ん中は孤立を恐れて反転! 反対側サイドは回り込もうとするよ!」


 即座にマリーが敵車両の位置を正確に報告すると、ヴィットが指示を出した。


「了解!」


 マリーは直ぐに了解し、ヴィットは更に指示を追加した。


「履帯の破壊を優先だよ! 砲は後回し、弾薬の節約だ!」


 ヴィットの意図は瞬時にマリーに伝わった。補給がランスベルクしか出来ないなら弾薬の節約は必至であり、ミネルバが補給に来ていた事も判断材料になった。


「分かった! 任せて!」


マリーはサイドの車両に高速で接近すると、対空機銃でスプロケットホイールと履帯を破壊する。スプロケットホイールを破壊すれば、現場修理を困難にする。しかも同軸機銃で、ピンポイントに主砲防盾の照準孔を破壊した。こうすれば、砲が生きてても照準を付ける事が出来ないのだ。


「あんな小さな穴に良く当てられるねぇ……行進間射撃なのにさ」


 驚きを通り越し、ヴィットの目はテンになった。


「エヘヘ……すごいでしょ」


 少し照れた様なマリーだったが、既に次の目標を補足していた。ほんの二三分で、七両の敵戦車はオブジェとなり、脱出する敵兵達は訳が分からんと言う顔をしていた。


 敵戦車の乗員が全て退避するのを確認すると、ヴィットとマリーは全速でハルツの町に向かった。


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