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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第四章 姉妹
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悪寒

「潜伏先の特定が出来ました」


 指揮車両の中で、指揮官らしき壮年の男は報告を受け顔を綻ばせた。


「やっと仕事が出来るな」


「はい。試作品は全て排除して、研究員は捕獲せよとの命令です……デッド・オア・アライブで」


 報告した男は、無表情で言った。


「そうか……仕方あるまい」


 言葉とは裏腹に、指揮官らしき男は口角を上げた。


「特殊班30名、戦車10両で強襲します」


「大規模だな」


 他人事みたいに言う男に報告した男は、また無表情で言った。


「報告された試作品は三体。戦闘力は未知数ですが、カタログデータではかなりの戦力だと推測されます」


「たかが獣に鎧を着せただけだ」


 指揮官らしき男は吐き捨てた。


「そうですね。どの様な装甲かは不明ですが、戦車砲の直撃に耐えれれるとは思えません」


「まあ、当てる事が前提だがな」


 ニヤリと笑う指揮官らしき男に、報告した男も笑みを返した。


「新型の照準器が試せます」


「相手は獣だ、動きが速いぞ。弾頭は散弾がよいのではないか?」


「対人用では不足ですので、新型弾頭は対装甲車両用散弾です。散布域も広く、軽戦車程度の装甲なら簡単に貫通します」


「万全だな……それに、例の赤い奴に出会うより余程マシな作戦だ」


 指揮官らしき男は、満足そうに笑った。


「そうですね……物凄くマシだと思います」


 報告した男も、安堵の息を漏らした。


______________



「それでね、ええっと……マリーは、どんな”娘”なの?」


 ケイティは赤面しながら言った。


「ええ子やっ!!」


 チィコが即答すると、隣のリンジーも微笑んだ。


「そうだね。とっても良い子だよ……マリーはね……」


 リンジーは初めて会ってからの色々な出来事を、紡ぐ様に静かに話した。黙って聞いているケイティは、たまにゴリマル達に穏やかな視線を移した。


 そして、聞き終えたケイティは少し笑った。


「そうか……最近聞いた事は、何かの間違いだったんだ」


「最近聞いた?」


 違和感を感じたリンジーは、ケイティの方を怪訝な顔で見た。


「多分プロパガンダだよ……組織はマリーに、やられ放題だから」


 笑顔を向けるケイティに、リンジーは最初から思っていた質問をブツけた。


「こちらからの質問だけど、此処は組織の施設じゃなさそうね」


 明らかに粗末? 否、質素な感じは違和感しかなかったから。


「そうだよ。此処は組織とは関係ない、ボクだけの研究所」


 ケイティはまた、少し笑った。


「何や分からんけど、逃げて来たん?」


 ポカンとチィコが聞いた。”直球”かよ! とリンジーは思ったが、笑顔でケイティは返答した。


「うん、逃げて来た」


「どうして逃げたの?」


 リンジーが被せる様に聞くが、答えは分かっていた。ゴリマルの音声で聞いた”動物達と分かりあいたかった”と言う言葉が全てを物語っていたから。


「……ボクだって生体兵器の開発として研究していた……けど、あの子達のふとした仕草には……あったの……”ココロ”が……」


 急に俯いたケイティは、言葉を絞り出した。


「そっか……正解だね」


「えっ?」


 笑顔のリンジーに、ケイティは顔を上げた。


「あるに決まってるよ、生きてるんだから」


「そうや、良い子達や」


 また、リンジーは微笑み、チィコはゴリマル達に満面の笑顔で抱き付いた。


「……うん」


 ケイティはチィコ達に視線を向けて、こちなく笑った。そして、リンジーは気になったケイティの言葉をもう一度聞き返した。


「それで、プロパガンダって奴、少し聞かせて」


「そうね……最近の事なんだけど、この先の山岳地帯の反対側に出没する赤い戦車の噂」


 ケイティの言葉に、瞬時にリンジーは演算する。マリーとは、ずっと一緒。山岳地帯の反対側は国境に近く、山賊の巣窟。マリーが山賊の討伐に行った事実は存在しない。


「その噂って?」


 リンジーは少し顔を顰めた。


「キミ達の話を聞けば、マリーとは完全に違うよ。噂では赤い戦車が盗賊たちを討伐してるって……普通に撃破で」


「普通に撃破?」


 ケイティの言葉を聞き返リンジーの背中は、悪寒に包まれた。


「うん。乗員諸共にね……そして、赤い戦車の乗員は長い髪の女の子だって話だよ」


 一瞬、ヴィットなら女の子の見えるかもしれないと思ったが、長い髪ってワードがリンジーの胸を締め付けた。




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