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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第四章 姉妹
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洞窟

 連絡を受け駆け付けたヴィット達が、ゲルンハルトからの説明を聞いていた。


「その大猿とリンジーは話していたんですね」


 腕組みしたヴィットは、地面に残る大きな足跡に視線を落とした。


「危害を加える気は、なさそうに見えた」


「ああ、チィコは笑っていた」


 真剣な顔のゲルンハルトの横で、イワンは俯いた。


「大丈夫だよ。アイツら食べても腹を下すだけだから……それに、ゴリラは草食だから肉は食べないよ」


「……」


 明るくヴィットは言うが、イワンは無言で目を逸らせた。


「今までの状況から考えると、明らかに人工物だな」


「全部が機械か、それとも生体に機械を組み込んだか……それより、捜索はどうするんだ?」


 暗くなりそうな雰囲気を察したTDは話を変え、コンラートも先を急ぐようにヴィットに視線を向けた。


「マリー、痕跡を追える?」


 直ぐにヴィットは切り替えた。相手が何であろうと、まずはリンジーとチィコを捜索するのが先決だと。


「足跡の形は覚えたから、追えるよ。最後に向かった方向は?」


 マリーは足跡をトレースした後、ゲルンハルトに聞いた。


「あの山の方角だと思う……だが、手前は深い森だ。木を伝わって逃げてたら痕跡が消えるかもしれないぞ」


「多分、大丈夫。二人を抱えていたら両手が使えないから、地面を行くしかないと思う」


「そうだね、マリーの言う通りだ」


 マリーの説明に、ヴィットは納得した。


「それに、木の上逃げてもリンジーやチィコの匂いは覚えてるから」


「えっ?」


 続けるマリーの言葉に、ヴィットは目がテンになった。


「ワンコロか……」


 少し気が楽になったイワンも苦笑いした。


「索敵用に視覚と嗅覚、聴覚のセンサーもあるんだよ」


 明るい声でマリーが言うと、顔色を変えたTDが詰め寄った。


「何ですと! ちょっと見せて!」


「はいはい、帰ってからね」


 苦笑いのヴィットが背中を押して、隅に追いやった。


「捕って食うつもりは無いようじゃが、急ぐのじゃ」


 マリーに乗り込んだヴィットに、オットーが親指を立てた。


「分かった!」


 元気よく返事したヴィットは、不思議と落ち着いていた……それは、世界で一番頼りになる小さな赤い戦車が一緒だったから。


____________



「ブッフォ~! ヴィットの気持ちがわかるっ!!」


 高速で走るゴリラに、小脇に抱えられ真正面からの風圧で息も出来ないリンジーは、思わず叫ぶ。高速回転のマリーの中で、ヴィットがどう言う状況なのか分かった気がした。


「キャハハ~!!」


 そんなリンジーとは裏腹に、チィコは大喜びで叫んでいた。そして、もう少しで酸欠になりそうな所で、目的地に到着した。そこは、予想通りと言うか山の麓の洞窟だった。


 ゴリラは、そっとリンジーを地面に降ろすと先に洞窟に入って行った。チィコは肩に乗ったままなので、慌ててリンジーも後を追った。


 先に進むと、途中から壁はコンクリートに覆われ巨大な鉄の扉があった。


「如何にも秘密基地ね」


 呟いたリンジーだったが、その扉が開くと目を見開いた。そこには、想像していた数多くの機器などはなく、巨大な檻の中に牛くらいはある猪と、立ち上がれば3メートルは優に超す熊がいた。


「クマさんに、ブタさん!」


 大喜びのチィコは、大猿の肩から飛び降りると檻の前に走った。


「ブタさんじゃなくて、イノシシだよ」


 苦笑いのリンジーだったが、クマも猪もその巨大な身体とは裏腹に円らな瞳で可愛い顔だった。


「危ないから……」


 必死で触ろうとするチィコの服を後ろから引っ張って、リンジーは部屋の隅に誰か居るのに気付いた。人影が明るい場所に出ると、更にリンジーは驚いた。


 そこには白衣を着た、少女が居たからだった。


「ようこそ、ボクの研究所へ」


 聞き覚えのあるボーイソプラノが、大猿の外見と重なりリンジーの思考を停止させた。


____________



「マリー、どうだ?」


「足跡が少し変だよ……」


 ヴィットの問いに、マリーは言葉を濁した。


「どう、変なんだ?」


「つま先の後が続いてる……」


「それって」


「そう。全力疾走だよ……歩幅から推定して、100km/h以上出てる」


「厄介だな」


 ヴィットは眉間にシワを寄せた。


「うん。だから、超速機動が可能なんだね」


 マリーの言葉は、最初に接触した時に感じた違和感と重なった。機銃弾を跳ね返す装甲、榴弾さえ回避する機動性は未知の姿を曖昧にさせた。


「もう直ぐ森に入るけど、追跡出来る?」


 目前に迫る森に、ヴィットは不安を過らせた。


「大丈夫、かなり強く地面を蹴ってるから痕跡は残るよ」


 こんな時でも、マリーの万能性はヴィットを内側から支えてくれた。


「とにかく急ごう、嫌な予感がする」


「分かった」


 マリーは速度を上げた。

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