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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第四章 姉妹
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違和感

「ふーん」


 車内を見回したマーリアは、別に顔色も変えずに不思議な反応をした。ハッチから覗き込んだヴィットは、驚かない様子に違和感みたいなモノを感じた。


「驚かないね」


「そうかな……マリー、聞いていい?」


「いいよ」


 ヴィットには曖昧に答えるが、シートに座ったマーリアはマリーに聞いた。


「あなたの言う、最強の意味を教えて」


「そうねぇ……最大の防御かな」


 少し考えたマリーは簡単に答えるが、マーリアは薄笑みを浮かべた。


「でも、戦車なんでしょ? 敵を撃破出来なければ意味がないんじゃない?」


「……それは……」


 マーリアの言う意味は分かるが、マリーは言葉を詰まらせた。


「撃破させれば、乗員が死傷する可能性がある。行動不能にするだけでいいんだ」


 ヴィットは思わず声を強くした。


「それは、戦車戦以外でも?」


 振り返ったマーリアは、ヴィットに強い視線を向けた。


「当たり前だ。生身の人間に、戦車砲なんて撃てるかよ」


「兵器である戦車に乗って、人的被害を気にするの?」


「マリーは兵器じゃない!」


 ヴィットの目を見ながらマーリアは言うが、ヴィットは声を荒げた。


「それなら主砲や機銃、レーザー兵器は何の為の装備?」


 低い声でマーリアは聞いた。


「相手の主砲や履帯を破壊して、行動不能にする為だ!」


「果たして相手も同じ考えかしら? きっと相手は、あなた達撃破する為に挑んで来る……勿論、デット・オア・アライブで」


「だからどうした! 俺とマリーは!……」


「どいて」


 興奮するヴィットの言葉を遮り、マーリアはヴィットを押し退けハッチから出た。そして、帰りながら背中を向けたまま言った。


「変わってるわね」


__________



「何だあいつ! 少しばかり可愛いからって!」


「ヴィット……」


 顔を真っ赤にして興奮するヴィットに、マリーが小さな声で言った。


「えっ、何?」


「前にも、こんな事あった様な気がする……」


「えっ、そう? 気のせいだよ」


 少し慌てたヴィットは、作り笑いで頭を掻いた。


「……ずっと、前からヴィットやリンジー達の事知ってた様な気がするんだ……初めて会ったはずなのに、皆直ぐにワタシを受け入れてくれて……ワタシは機械で兵器なのに……」


 言葉を紡ぐように、マリーは話した。


「そんなの気にすんなよ……過去なんて、どうでもいい……俺は、これから先もずっと一緒に居たい……それだけだよ」


「ワタシは……」


「マリーは、人の命を奪いたくないんだろ? 俺もそう思うよ……それにね、ゲルンハルトさん達や、リンジー達、ジィちゃん達だって、皆マリーと同じ考えなんだよ」


「どうして?」


 マリーの声は、小さく掠れていた。


「それが、本来の”人”だからさ。全ての戦いは、人を惑わせ狂わせるんだ……他人を傷付けたり、ましては命を奪うなんて悪い事に決まってる……そんな当たり前の事さえ忘れさせるんだ……」


「……うん」


 マリーの声に、少し活気が戻った。


「そうじゃな、マリーちゃんは何も間違ってはおらんのじゃ」


 気付くとオットーが満月に眼鏡を反射させていた。


「おじいちゃん……」


 声を振るわせるマリーに、オットーは親指を立てた。


「一番大切な事に気付かせてくれたのじゃ……感謝じゃ」


__________



「マリー、前照灯は点けるなよ」


「だって、暗いし怖いよ」


 森の入り口の大きな岩の陰にマリーを停車させヴィットは言うが、マリーは車体を震わせた。


「明るいと、見張りの意味が無いんですけど」


「サーチライトも装備してるんだよ、1KM先でもピンポイントに照らせて……」


 焦るマリーの説明に、ヴィットは苦笑いで言った。


「見付けたら、使おうね。それに、明かりを点けたら虫が来るよ」


「……それは、もっとやだ」


 観念したマリーは身震いしながら、小さく言った。夜も更け、風が冷たくなると月明かりが青くてヴィットはハッチから顔を出した。


「良い風だ……」


「ねえ、作戦を考えたんだけど」


 ふいにマリーからの提案があった。


「えっ、どんな?」


「見付けたら機銃で足元を狙って動きを止めて、接近戦に持ち込んでアームで押さえて捕まえるの。後は、ヴィットがワイヤーで縛って捕獲完了」


 あまりにも力圧し、だが信ありげなマリーの声にヴィットが首を傾げた。


「暴れたらどうする?」


「ブッ叩いて気絶させる」


 何か嬉しそうに、マリーは言った。


「はは……何か、凄そう……」


 苦笑いのヴィットは、マリーと大猿がドツき合いの大乱闘をしてる所を想像して苦笑いした。


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