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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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特別攻撃

 盾と矛……前方のケンタウロスはマリーの攻撃を防御し続け、その隙に後方のケンタウロスは攻撃して来る。マリーの被弾は増え、残弾は少なくなって行くばかりだった。


「このまま続けるのかっ!!」


「まだよっ!」


 思わずヴィットは叫ぶが、マリーの攻撃は前方のケンタウロスに集中していた。


「後ろのヤツ!!」


 ヴィットが叫んだ瞬間、モニターの画面にアラームが鳴り響く。それは、損傷に対する各部の非常警報だった。


「アラームレッドだっ! 一旦下がれっ!!」


「まだ、大丈夫!!」


 マリーは後方のケンタウロスの砲撃を、振り回す砲身で弾き飛ばし続ける。受けきれない砲撃は、電磁装甲で受け止める。その轟音と激震は、ヴィットの精神を圧迫し続けた。


 直撃の痛み……それは、マリーの痛み。


「マリー!!!」


「……ありがと、大丈夫だから」


 悲痛を含むヴィットの叫びを、激戦の最中なのにマリーの穏やかな声が包み込む。だが、ヴィットは張り裂けそうな全身を覆う”痛み”が限界に来ていた。


 自分の痛みなら耐えられる。耐えて見せる……だが、マリーが一人で痛みを受け止めるのには我慢が出来なかった。


 ヴィットがコントロールを強制手動に切り替えようと、スイッチに手を伸ばした瞬間! モニターの片隅に黒い影が横切る。


『突貫ぁ~ん!!』


 雑音に紛れるその声は、紛れもなくオットーの声だった。


「じぃちゃん!!」


 何処からともなく急に現れたマチルダは、前方のケンタウロスに正面から体当たりを敢行した。その出現はケンタウロスでさえ予測不可能で、轟音と火花を伴い大爆発を引き起こし、前方のケンタウロスはその衝撃で一時敵に行動を停止した。


____________



「じじぃ! 体当たりしやがった!」


「てか、気付かなかったぞ! 何処から湧いて出た!」


「ステルスじじぃ……」


 イワンが叫び、ハンスも叫び返す。そして、ヨハンがボソッと言った。


「砲撃を後方のケンタウロスに集中しろ!」


 ゲルンハルトは攻略の糸口に指示を出す。ケンタウロスの強固な防御と確実な攻撃はマリーの戦いを袋小路に追いやっている様に見えた。


 確かにマリーは意図して攻撃しているのだろうが、傍から見ていると不安と心配でしかなかった。その不安はオットー達が一瞬で覆すが、それは犠牲を伴う事だった。


「マチルダは長くは持たねぇぞ!」


「車体の半分は潰れてるぜ!」


 大声でイワンがゲルンハルトに振り返り、ハンスが顔を顰める。


「あそこ……」


 無表情で指さすヨハン。そこには、匍匐前進で逃げだすオットー達がいた。


「全く……期待を裏切らないじじぃ達だ……さて、遠慮は無くなった。マチルダごとブッ飛ばせ!」


 ゲルンハルトの号令で、イワンは必殺の砲弾を発射した。88ミリ砲弾は、マチルダを貫く。そして、予想を超える大爆発がケンタウロスを猛烈な火球で包んだ。


「じじぃ達の置き土産だ、爆弾をしこたま積んでやがった」


 呆れるイワンが呟くと、マリーが全速でケンタウロスに突っ込んだ。


____________



「リンジー!! じいちゃん達が!」


「大丈夫! 待って!!」


 慌ててマリーの傍に行こうとするチィコを、リンジーが止めた。


「どないするんや!?」


「とにかく待って。おじいちゃん達、きっと考えがあるから……」


 リンジーは手を握り締めて、強い口調言った。泣きそうな顔のチィコは、ただ小さく頷いた。


____________



「爺さん達、特攻しました!」


「フン、シュワルツティーガーの動きに従え」


 部下の報告を受け、ミネルバはゲルンハルトの動きに追随する様に指示した。直ぐにシュワルツティーガーは前方のケンタウロスに砲撃を開始し、大爆発が起こった。


「そう言う事か。まんまるが突っ込むぞ! 援護しろ!」


 口元を緩めたミネルバは、突っ込んで行く赤い戦車を強い瞳で見詰めた。


____________



「じいちゃん達が!!」


「あそこ!」


 ヴィットはマチルダが突っ込むの見た。マリーは瞬時にオットー達が脱出するのを確認した。


「チャンスだ! マリー!」


「了解!」


 マリーは火球が収まりかけたケンタウロスに全速で突進した。マチルダが腹部に突き刺さった様な格好で、前方のケンタウロスは動きを止めていた。加速したマリーはマチルダをスロープにしてケンタウロスに乗り上げた。


 そのまま前方のケンタウロスを踏み台にして、後方のケンタウロスにダイブした。


「車体っ!!」


 マリーの叫びと同時に、ヴィットは車体目掛けて主砲を撃ち込んだ。当然、ケンタウロスは盾で受けるが、マリーはガラ空きになった胴体に渾身の砲身を撃ち込んだ。


 だが、胴体に当たる寸前にケンタウロスは超速後退! 寸前で躱す! だが、マリーの振り下ろした砲身の先からは夥しい土? が撒き散らされた。


「僅かでもセンサーを狂わせる!」


 マリーは叫ぶと、車体を捻り、ホイールロケットを最大噴射! 一気に肉薄した。だが、衝突の瞬間! ケンタウロス側のホイールロケットを更に全開最大噴射した!


 そして盾で受け止めるのがコンマ数秒遅れ、全開のロケット噴射がケンタウロスの車体を凄まじい炎で焼いた。


「こっのぅ!!」


 マリーは砲身を渾身の力で振り下ろす! が! 今まで簡単に受け止めていたケンタウロスの盾は一瞬遅れ、マリーの一撃がケンタウロスの頭部を直撃した。


 爆音と火花!! ケンタウロスは頭部は激しく折れ曲がる。返す刀で更に頭部を横薙ぎ! 車体が傾く程の衝撃と共にマリーの持つ砲身も千切れ飛んだ。


 しかし、ケンタウロスの戦闘力はまだ消えていなかった。直ぐに盾でマリーの車体をブッ叩き、腕の機銃で車体を掃射した。


 マリーは銃撃を受けながらも、残った砲身で打ちかかる! そこに前方のケンタウロスは再起動! 腕と盾でマリーを取り押さえようと掴みかかった。だが、マリーは砲身の横薙ぎ一閃で向かって来る腕と盾を吹き飛ばした。


 後は二対一のどつき合いの白兵戦!!が待っていた。


____________



「しっかし、マリーの動きはスゲーな……」


「まるでマ〇ガだ……」


 マリーのどつき合いを見て、イワンが目をテンにして、ハンスが冷や汗を流した。


「まさに、カトリーヌだな……」


 ポツンとヨハンが呟く。


「カトリーヌ?」


「あっ、正式名称はグラ〇ン……」


 ポカンと振り返るイワンに、ヨハンが真顔で言った。


「コラコラ……」


 赤面したゲルンハルトが、頭を抱えた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ お爺ちゃんズの置き土産付きので特攻で活路が拓けましたね! しかも本人達は無事に生還。 さすがは妖怪ジジィ(笑) [一言] ステゴロ万歳なグラップラーマリー爆誕!…
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