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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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揺れる想い

「何だあれは?……」


「聞いた事はあります……人型の戦車……」


 唖然と呟くリーデルだったが、博識で情報通のガーデマンは少し震える声で言った。


『あれは……ケンタ……ウロス。対地……対空……殲滅戦車よ、迂闊に……近付いたら直ぐに……撃墜される……からね』


 真横に並んだミリーから、途切れ途切れの通信が入る。TD達の電波妨害は強力だったが、至近距離ならなんとか通信出来た。


「大丈夫なのか?」


『心配……ない……よ……今は……敵機……に、集中して』


 リーデルは落ち着いた声で聞くが、前方には依然として無数の敵機が存在した。ミリーの返答に小さく息を吐いたリーデルは、翼を振ると味方機に手信号で合図を送る……”敵機に集中せよ”と。


「本当に大丈夫でしょうか? 二機相手ですよ」


「多分な……それより、敵機を近付けるな!」


 不安そうなガーデマンに、リーデルは口元を綻ばせる。


「了解! でも、何故か期待させてくれますね」


「ああ、そうだな」


 ガーデマンは遥か下方の赤い戦車に笑みを投げ、リーデルは頷きながら心の中で呟いた……”最強戦車の名は、伊達ではないんだろ”と。


____________



 マリーはゲルンハルト達の砲撃の隙を突き、全速後退する。


「下がるのかっ!!?」


「うん! 誘い込むのっ!」


 叫ぶヴィットに、マリーは普通に答えた。


「何処に?」


 当然、ヴィットは首を傾げる。


「有利な場所だよ!」


「どこだよ?」


 戦闘中に、マリーの普段通りの声。ヴィットは気持ちが落ち着くのが、手に取る様に分かった。そのままマリーは後退するが、直ぐにケンタウロス二機は爆煙を上げ全速力で追って来る。


 しかも、砲撃はマリーの左右で炸裂し、サイドキックで躱す衝撃はヴィットの悲鳴を更に増加させた。そして、マリーはヴィットさえ気付かない速度調整を行っていた。


 ケンタウロスとの距離を微妙に保ち”有利な場所”へと誘い込んだ。


「ここが有利な場所かよ!?」


 思わずヴィットが叫ぶ。そこは、マリーが砲身を突き刺した場所だったからだ。当然ケンタウロスの射程外の場所は、今は射程内になっている。ヴィットは迫るケンタウロスに主砲を撃ち込むが、盾で受け止めながら猛然と迫って来る。


 その瞬間、マリーは一気に距離を詰める! 振りかざした砲身を渾身の力で打ち付けると、ケンタウロスは轟音と火花を撒き散らして盾で受け止めた。同時に片腕の機関砲でマリーの車体に連射を加える。


 電磁装甲が火花を散らす! マリーはケンタウロス頭部の主砲が発射されると同時に砲身で主砲弾を弾き飛ばした。徹甲焼夷弾は凄まじい爆発で、車内のヴィットを猛烈な衝撃を与えるが、歯を食いしばって耐えた。


 次弾装填まで一秒、マリーはケンタウロスの主砲を焼け焦げた砲身でブッ叩いた!


「効いたかっ!?」


 叫ぶヴィット! マリーが答える前にケンタウロスの主砲がマリーの砲塔に炸裂した。飛び散る火花と超爆音! 物凄い衝撃が車内のヴィットに襲い掛かる。


「我慢してね!!」


 叫んだマリーは更に主砲に一撃を加えた。今度は主砲の反撃はなく、機銃掃射しながら、ケンタウロスは爆速で後退する。そして、後退の援護をする様に後方の一機が主砲の連射でマリーの周囲に弾幕を張った。


「後ろの奴に撃たせるよ!」


 マリーは逃げる前方のケンタウロスに突進する。


「行くのは前かよ!?」


 ヴィットは叫びながら、前方のケンタウロスに主砲を撃ち込むが、後退しながらも盾で受け止めていた。当然後方一機は、援護の弾幕を張り続ける。


「車体規模から見て即応弾は少ない! 装填の数秒がチャンスなの!!」


「分かったけど、無茶するなよっ!!」



 叫ぶと同時に、ヴィットはモニター隅のマリーの残弾数をチェック。主砲残弾は三分の二、少し手に汗が出るがヴィットはガングリップに力を込め直した。


 降り注ぐ砲弾の中、マリーは車体を横に向ける。装甲が薄い側面を晒すのは、戦車戦では自殺行為だが、マリーは側面が前方のケンタウロスに指向すると同時に片側のホイールロケットを全力噴射した。


 物凄い加速でマリーは瞬時に前方のケンタウロスに肉薄! 同時に振り上げた砲身でブッ叩く! ケンタウロスは盾で受け止めるが、マリーはもう片方の砲身を機銃掃射をするケンタウロスの腕を横薙ぎでブッ叩いた。


 鈍い轟音が響き、ケンタウロスの腕は変な方向に捻じ曲がった。そして、あれだけ激しく連射していた機関砲が沈黙した。


「糾弾経路を潰したの! これで撃てない!」


 叫ぶと同時にマリーは全力後退! ケンタウロスの盾の横薙ぎが車体を霞め火花が出るが砲身の一撃で受け止める。物凄い轟音と飛び散る火花! 砲身は根元から引き千切れた。


 マリーは千切れた砲身を投げ捨てると、残った砲身で殴り掛かるがケンタウロスの盾はマリーの一撃を受け止め、反対に砲身は折れ曲がった。


「なんて硬いんだっ!!」


 思わずヴィットが叫ぶ。


「想定内よっ!!」


 叫んだマリーは、砲身を突き刺した場所に向かった。


____________



「まんまるが奴の武装を無力化した! 今だっ!」


 ミネルバは前方のケンタウロスに主砲を発射、アリスⅡは更に距離を詰めた。その後方からサルテンバも砲撃を開始、盾で防御されるも続くシュワルツティーガーの砲撃は正確にケンタウロスの足元で炸裂した。


 だが、後方のケンタウロスは先頭のアリスⅡ目掛け、砲撃しながら突進した。アリスⅡの増加装甲された防盾は直撃でも大丈夫だが、ケンタウロスはその機動性で瞬時に側面に回り込む。


 超信地旋回で正面を向こうとするが、ケンタウロスの機動性は簡単に凌駕する。側面装甲は、至近弾には耐えられない。アリスⅡを援護しようとサルテンバやシュワルツティーガーが砲撃するが、簡単に盾で防ぐとケンタウロスは至近距離で砲撃した。


 リンジーやゲルンハルトが一瞬、目を閉じる。だが、ケンタウロスの砲撃は轟音と共に空に弾かれた。


「マリー!!」


 叫ぶリンジーの視界には、小さな赤い戦車が砲身で砲弾を弾き返す瞬間が目に飛びこむ。ケンタウロスはマリーの振り回す砲身を避け、全力後退。もう一機のケンタウロスの陰に隠れる様に瞬時に移動した。


「余計な事を……前のヤツを盾にする気だな……」


 ニヤリとしたミネルバだったが、ケンタウロスの動きには息を飲んだ。前方のケンタウロスには車体装備の機銃ぐらいしか武装は残ってないが、盾に使うのには何ら支障はなかった。


 むしろ防御に特化し、攻撃と防御に戦闘分担した方が戦力的にも手強そうだった。マリーはサイドキックで砲撃を躱しながら接近して行く。その行動を援護しようと、またアリスⅡが前進するが、サルテンバが行く手を阻むように前方に急停車した。


「近付き過ぎないでっ!! マリーの邪魔になる!!」


 ハッチから身を乗り出し、リンジーが叫んだ。その声は、張り裂けそうな痛みをミネルバに投げかける。


「……邪魔か……少し下がれ……」


 少し俯いて、ミネルバは指示した。その穏やかな声は、車内にいる全員が聞いた事も無い”優しさ”みたいな感じに包まれていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ すっかり格闘戦が板に付いた感のあるマリー(笑) 専用の鈍器と盾が欲しくなりますね(´ー`*) [一言] 確か、ガンダムのシリーズの中でも攻撃と防御に戦闘分担した…
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