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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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起動!!

 ヴィットは二輌に挟まれた味方を援護する為、チィコに指示を出した。


「あの二輌が危ない! 間に入れ!」


「はいなっ!」


 アクセルを蹴飛ばすチィコの声が、リンジーに軽いデジャヴを招いた。頭の片隅で激しいフラッシュバックが炸裂し、思わず叫んだ。


「私達も囲まれるっ!!」


 その声にビクッとしたチィコは、一瞬アクセルを緩めた。


「見殺しには 出来ないっ!!」


 しかし、前方の二両は完全に逃げ道を塞がれていて、ヴィットも叫ぶ。見上げたリンジーの目には、精悍なヴィットの顔があった。


「分かった! 行くよチィコ!」


「ええの?」


 振り返ったチィコに、リンジーは優しく笑った。


「車長はヴィットだもん」


「ほな、いくで」


 チィコは緩めていたアクセルを踏んだ。


「右側から行くぞ! リンジー! 一発で決めろ!」


「了解!」


 ヴィットの声に合わせ、リンジーは最接近した車輌に必殺の一撃を見舞った。見事に履帯を破壊し、照準眼鏡に顔を埋めたまま次の指示を待った。


「反転! 後ろの二両だ!」


「マジかっ!!」


 チィコは超信地旋回で瞬時に向きを変えるが、レクチルの奥に映る二輌の戦車にリンジーの頬に汗が伝った。だが、指と一体化したトリガーは次弾装填と同時に引かれた。


 轟音が車内に鳴り響き、自動装填の遅さをリンジーは呪った。レクチルの向こう、残った一輌の砲塔が旋回し、その主砲の向きがリンジーの心臓を締め付けた。


「回避だっ!!」


「そんな事言うたかてっ!!」


 ヴィットとチィコの声が遠くに聞こえ、リンジーは気が遠くなりそうになる……だが、刹那の時は無常に過ぎた。やがて敵戦車の砲塔は旋回を止め、車体の揺れが収まると同時に砲身から火を噴いた。


 だが、サルテンバの車体には衝撃はなく、至近弾らしき轟音が一瞬遅れて耳の傍で炸裂した。瞬間! リンジーは次弾を発射しようとレクチルを合わせるが、敵戦車は煙を上げて大破していた。


『バカ野郎っ!! 車長なら乗員を守れっ!!』


 レシーバーからミネルバの怒号が炸裂し、次の瞬間リンジーは悟った……敵が外したのではなかった事に。


「分かってる!!」


 怒鳴り返すヴィットに、更に上を行くミネルバの怒号が重なった。


『寝言は寝て言え!! 今ので終わりだったんだぞ!!』


 その言葉は正論であり、ミネルバの援護がなければ……終わっていた。ヴィットは歯を食いしばって俯き、拳を握り締めるだけだった。そして、容赦無いミネルバの怒号が続いた。


『周囲の状況を見ろ!! 自分がやられたら何もならないんだ!! お前達に味方した奴等の気持ちを無駄にする気かっ!! とにかく一旦下がれ!!』


 何も言わないヴィットに、リンジーが優しく声を掛けた。


「ミネルバの言う通り。下がろう……」


「……俺は……お前やチィコを危険に晒した……」


 深く沈むヴィットの声が、サルテンバの車内に沈着した。だが、チィコは素早くサルテンバを後退させる。戦闘中の停車の危険性は、チィコも身に染みて知っていた……とにかく危険な場所からの退避が最優先だと思った。


___________



「姉さん、前に出過ぎです」


「んなもん、分かってる!」


 操縦手からの声に、ミネルバは不機嫌そうに怒鳴った。


「アリスⅡの装甲なら、十分は大丈夫ですぜ」


 砲手は笑って言うが、その瞬間に車体に大音響で砲弾が命中した。当然操縦手は、瞬時に車体を旋回、防盾で敵弾を受けていた。


「クソガキ共は?!」


「後退してます!」


「敵とクソガキの間に入れ!」


「もう、入ってます」


「フン! 追手は蹴散らせ!」


 しかし、アリスⅡもまた囲まれつつあった。次第に増える直撃音は、如何に強固なアリスⅡの装甲とは言え、ミネルバの背中に冷たいモノを流させた。


_____________



 カーソルの点滅は次第に速くなり、次の瞬間! モニター一面に見た事も無い文字が超高速でスクロールした。


「何だ? これ……」


「お前、何か触ったのか?」


 唖然とするTDを見て、コンラートも不安そうに呟いた。


「触ってないよ……はっ!」


 TDには瞬時に分かった。ヴィット達が危険だと……。だが、その直後! 泣きたくなる程に懐かしく思える希望の声がした。


「TD! 状況はっ!?」


「良くはない。ミネルバが援護に回ってはいるが……マリー、大丈夫か?」


 直ぐに出るだろうマリーを、TDは心配した。


「ありがと、TD。大丈夫だよ……じゃあ、降りて待ってて」


「降りるのか? 最前線だぞ!」


「お前、マリーの飛行は知ってるよな?」


「あっ……」


 泣きそうになるコンラートに、TDは苦笑いした。


「コンラートも、ありがと」


「えっ? ああ……グスッ……」


 コンラートはマリーの言葉に咽び泣いた。それは”いたの?”じゃなかったから。


 TDとコンラートが降りると、マリーは超絶急加速のホイールスピンで突進して行った。


「応急処置だと言う事を忘れるな!!」


 叫んだTDの肩を叩き、コンラートは笑顔で言った。


「とっくに、忘れてるさ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 遂にマリーの復活! ここからの巻き返しはシビアだとは思うけれど、マリーならやってくれる‼ ……と謂う安心感が有りますね(´ー`*) [一言] ミネルバの的確なア…
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