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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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守護

「補給に戻るね」


 ミリーはそう言い残すと離陸して行った。


『我々も補給に戻る』


 リーデルからの通信をリンジーが持っていた無線で受けても、ヴィットは呆然と立ち竦むだけだった。だが、そんなヴィットを他所にリンジーやTD、コンラートはマリーの修理を始めた。


「何してるんだ?……早く、逃げないと」


「ミリーがマリーの交換部品を持って来る。準備をしておかないとな」


「でも……」


 TDは真顔で言うが、ヴィットは言葉を詰まらせた。一人俯くヴィットの傍では、カリウスが凛とした態度で指示を出していた。


「マリーを中心として防御陣地を形成する。ゲルンハルト、君達には遊撃隊の指揮を頼む」


「了解しました」


 カリウスの指示に、ゲルンハルトは背筋を伸ばして敬礼した。


「アタシ等は?」


 腕組みしたミネルバに、カリウスは薄笑みを浮かべて言った。


「君達の駆逐戦車隊はマリーの直衛を頼む」


「分かった。野郎ども、まんまるを取り囲め! 敵を近付けさせるなよ!」


「ミネルバ……どうして? 凄い数の敵が迫ってるんだ……」


 俯き加減のヴィットが力なく聞くと、ミネルバは怒鳴り上げた。


「アタシ等が逃げたら、二度とまんまるに会えなくなるんだ! お前はそれでいいのかっ!!」


「……」


 ヴィットは何も言い返せなかった。本当は心の底から、助けて欲しいと言いたかった……でも、それは皆を危険に晒す事。ヴィットには言えなかった。


「言っていいんだよ……私達は、その言葉を望んでる」


「そやで。水くさいで、ほんま」


 修理の手を止めたリンジーは優しく言って、タオルでマリーの車体を拭きながらチィコは笑顔を向けた。。


「まあ、言われなくてもマリーは守るけどな」


「山程の借りがある。ここらで少しは返さないとな」


 イワンは笑顔で言い、ハンスも親指を立てた。


「最初から、そのつもりだけど……」


 ヨハンは小さく呟いた。


「少年よ。この戦いはマリーを守る為の戦いじゃ……逃げるつもりなら、とっくに逃げておる」


 オットーの後ろでは、ポールマン達が笑顔で頷いていた。


「そう言う事だ。君はマリーの修理に全力を注げ」


 ゲルンハルトの言葉に、ヴィットは小さく頷いた。


____________________



「早く降りてよ!」


「ミリーからの連絡です。補給に戻ると」


 叫ぶタチアナに対し、ハイデマンは静かに告げた。


「だから、どうしたのよ!」


「新たな敵の大群が迫ってます。我々は……」


「それが、どうしたのよ!」


 ハイデマンの言葉を遮り、タチアナは怒鳴った。


「武装も無い機体では、足手まといになるだけです」


「でも……」


「お気持ちは分かりますが、出来る事をしなければなりません」


「出来る事なんて……」


 タチアナはは声を落とした。


「デアクローゼより入電がありました。あなたが募集したタンクハンターが集結しています。動かすのはあなたです」


 タチアナは絶望と動揺の中で、ハイデマンの言葉の中に一瞬の光が見えた気がした。


「分かりました。地点を指示して下さい。そこにいるマリーを、どんな事をしても守ってと伝えて下さい」


 背筋を伸ばしたタチアナは、遠く地平線を見詰めた。


______________________



 修理を続けながら、幾ら待ってもマリーは目を覚まさなかった。優に一時間は経過して、次第にヴィットは焦り出した。


「ミリーは大丈夫って言ってるから」


「でも、もう一時間だ!」


 優しいリンジーの声にも、思わずヴィットは怒鳴ってしまった。


「ヴィット。見て見ろよ、この部分」


 TDに言われて見ると、焼け焦げて完全に破壊された対空機銃の銃座は、新品の様に輝いていた。


「ここだけじゃない。対空レーザーの懸架部も新品みたいだ」


「ホイールも曲がってボロボロだけど、取り付け部分は歪みどころか傷さえ皆無だ」


 マリーの下から顔を出したコンラートも首を捻った。


「アームかて折れてるんやけど、付け根は何ともないみたいやで」


 掃除で埃だらけのチィコも、ポカンとした。


「底面ロケット自体は全交換が必要みたい。でも、車体に損傷は見られないよ」


 リンジーは一番損傷が激しい部分を指摘した。


「ホイールロケットを交換すれば飛行は可能だ。サスペンションも無事だから、高機動戦闘も大丈夫だな。作業は時間の掛かる底面ロケットの交換は見送り、ホイール交換と武装の再装着を優先しよう。ただし、主砲は無事だが照準システムはダメだから、砲手は頼むよヴィット」


 TDの説明を受けても、ヴィットはココロの中でモヤモヤしたモノに包まれた。


「それはいいけど……どう言う事なんだ?」


「つまり、マリー本体は無傷だって事だ。機銃もレーザーも、取り換えの効くただの耗品だって事だよ」


 TDの言葉に、ヴィットの気持ちは幾分は軽くなったが、マリーの元気な声が耳の中で何度も木霊した。


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