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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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願い

「超機動にも程があるな……」


 目を丸くするイワンが呟くのも無理はない。ミリーは急降下でフリーを後方から攻撃するが、フリーも反撃の砲火を浴びせる。ミリーは超鋭角で上昇すると機体を反転! そのスピードは目にも止まらなかった。


「重力や遠心力など関係ないな」


 普通にヨハンは言うが、その目は驚きの色に染まっていた。


「よそ見するなっ! 集中しろっ!」


 ゲルンハルトの怒鳴り声でイワン達は我に返る。


「そうだった!」


 叫んだハンスは、シュワルツティーガーの鼻先をフリーに向けた。


「悪いっ! そんな場合じゃなかったよなっ!」


 イワンも直ぐに照準眼鏡を覗き込んだ。


__________________



「意図は何だ?」


 品の良いスーツを着た壮年の男は人の好さそうな面持ちだが、その眼光は鋭さを内包していた。直ぐに白衣の若い男が、眼鏡を触りながら答えた。


「フリーを一度に破壊するべく、誘導してる模様です」


「一度に?……残存全てが同時に爆発したら、赤い戦車を殲滅出来るのかね?」


「至近でなら、ある程度の被害は与えられますが……殲滅するなら、最低二機がゼロ距離に接触する必要があります。電磁装甲を破壊するには、直接打撃しかありません」


 白衣の男の返答を聞くと、スーツの男は口元を綻ばせた。


「それならば、誘導に乗ってやろう……」


「しかし、本当にいいのですか? あのテクノロジーは二度と手に入らなくなります、が」


 白衣の男は、眼鏡を光に反射させた。


「ココロを持つ兵器など、兵器ではないのだよ……兵器とは兵士の武器だ。それは、敵の命を奪う為の物……それ以上も以下でもない……必要などないのだよ、ココロなどと言う異物は……」


 スーツの男は怪しい笑みを浮かべて言った。そして、ほんの少しの間を空けて続けた。


「赤い戦車の緊急脱出は、どの方向になる?」


「考えれれるのは底面ロケット噴射で上方。そして、ホイールロケット噴射で左右どちらかの三方向かと」


「……フリーを二機一組で三方向に……残存の起爆を合図に」


「承知しました」


 白衣の男は表情を変える事無く、小さく頷いた。


__________________



「マリー、大丈夫?」


 無言になったマリーに、ヴィットは優しく声を掛けた。


「大丈夫だよ……」


 急旋回しながら、マリーは小さな声で言った。フリーを誘導しながらの機動中とは思えない二人のゆっくりとした会話には違和感は無かった。


「アイツ等、一度に爆発したらゲルンハルトさん達や爺ちゃん達、大丈夫かな……それに、十字砲火の人達も……」


 自分達の事より、ヴィットは周囲の人々の事を心配していた。


「自走地雷の破壊力は、近接爆発に特化してるの……だから、距離を取れば大丈夫」


「それなら、安心だね」


 明るい声のヴィットだったが、マリーは胸の片隅がチクリと痛んだ。


『マリー! ヴィット! 聞こえるっ!?』


「何だよ? 戦闘中だぞ」


 突然のリンジーの叫びだったが、ヴィットは落ち着いた声で返事した。


『幾ら電磁装甲でも、ゼロ距離なら破壊されるのよっ! とにかく爆発時に距離を取って!!』


「大丈夫、ゲルンハルトさんや爺ちゃん達は十分に距離を……」


『……そんな事、聞いてない……』


 急にリンジーの声は、走行音に掻き消された。


「何だよ、大丈夫だよ」


 ヴィットも少し声を落とした。


『……皆、危険を承知で戦ってる……何の為だと思ってるの?』


「それは……」


 リンジーの言葉が、ヴィットの胸に痛みを与えた。


『全部、マリーとヴィットの為なのよ』


「リンジー……ヴィットは必ず守るから……」


 それまで黙っていたマリーが、優しく言った。


『それだけじゃダメ……マリーも必ず無事で帰って来て……必ず……』


「うん……」


『約束破ったら……承知しないから……』


 リンジーの声には、涙が混ざっていた。


_____________________



『ヴィットよ! 用意はよいかっ!』


『一発で決める! 準備はいいなっ!』


 オットーとゲルンハルトから、殆ど同時に通信が入った。


『合図はこっちから出すよ!』


 タイミングの号令は上空のミリーが最適だった。


「了解! 何時でも行ける!」


 マリーは全神経を集中した。


「マリー! 頼むぞ!」


 叫んだヴィットは、対ショック姿勢を取った。


____________________



「発砲のタイミングは赤い戦闘機からです!」


「各車に連絡! トリガーに指を掛けろ!」


 副官の叫びに、指揮官も叫び返した。


___________________



 フリーは二機づつ三組に分かれ、残存機が後方でやや後方で集結した。


『マリー! 二機づつ! 三方向!』


「了解!」


 ミリーの通信を受けマリーはアームを展開するが、関節部分から火花が出ていた。


(もう少しだけ、持って……)


 ココロの中で呟いたマリーは、最大限にアームを伸ばす。そして、運命の瞬間が訪れる……。


『カウント開始!! スリー! ツー! ワン!』


 ミリーのカウントと同時に十字砲火が一斉に火を噴き、後方のフリーが大爆発した!!。


「マリー!!」


 ヴィットの叫びと同時に、マリーは底面ロケット全力噴射! だが、その刹那二機のフリーがマリーの車体に覆い被さった!。


「マリー!!」


「マリー!!」


「マリー!!」


 ゲルンハルトやオットー、ミリーの叫びが巨大な火球の爆発に掻き消された。



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