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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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作戦

「正気かっ!!」


 マリーが大爆発に覆われた瞬間、ミリーは爆炎の中に急降下した。リーデルが叫ぶが、ミリーは爆炎の中に機体後方からキラキラ光る何かを大量にばら撒いた。


「チャフです! 次が迫ってますからっ!」


「何だそれっ!?」


 ガーデマンの叫びに、リーデルが叫び返す。


「多分奴らは無線誘導です! 電波を妨害しないと次が来ますっ! 連続で爆発されたら幾らマリーでもっ!!」


「妨害出来る時間はっ!?」


「おそらく、数分!」


「一輌でも削る!」


 リーデルは、まだ残る爆煙の中に急降下! 射爆照準器の中に一輌のフリーを捉えて、必殺の銃弾を叩き込んだ。


 その爆発は、引き起こした機体を猛烈な爆風で揺らした。


「なんて作薬量だ! ゼロ距離で爆発すれば助かる戦車なんてないぞっ!」


「ありますよ、ほら……」


 爆発の硝煙に霞む赤い車体に、ガーデマンは笑顔になった。


__________________



 まるで教会の鐘の中に居るような衝撃と爆音! しかも同時に超爆音がヴィットを襲った。一瞬、何も分からなかったが、猛烈に食い込むシートベルトの激痛も後から来た。


「大丈夫かっ!?」


 ヴィットは自分の事より、真っ先にマリーの事を心配した。そして、聞こえたマリー声が数年ぶりに聞いた様な錯覚に陥った。


「……大丈夫……だけど、色々……壊れたみたい……」


「動ける?」


「うん」


「取り敢えず、距離を取ろう」


「分かった……」


 幸い速度は出ているが、至る所から”異音”がしていた。ヴィットは画像の乱れるモニターで、周囲を索敵した。


「他の奴は……」


「ミリーがチャフで、動きを止めてる……数分は動かないよ。一輌はリーデルさんが破壊したから……残り、八輌……」


 マリーの声は明らかに苦しそうで、ヴィットの胸は締め付けられる。だが、ヴィットは敢えて触れない様に明るく言った。


「照準システム、完全にダウンしたみたい。ペリスコープで直接狙うしかないな」


「対空機銃とレーザーは、完全に壊れちゃった……アームも動きが、おかしい……それにね、電磁装甲が……」


「壊れたの?」


「完全じゃないけど……今度、直撃されたら……」


「なら、直撃されなきゃいいんだね」


明るいヴィットの声は、破壊された箇所の”痛み”からマリーを解き放った。しかし、チャフの効果が無くなれば、超機動で襲って来るのは明らかだった。


 ヴィットは冷静を装っていたが、打開策など有るはずはなかった。


_________________



「マリー! ヴィット! チィコ! 行って!」


 双眼鏡で爆炎を見ながら、リンジーが叫ぶ。


『行くな! あの爆発を見たろっ! 巻き込まれたら一発で粉々になるぞ!』


 同時にミネルバの怒鳴り声。だが、リンジーは怒鳴り返した。


「あれは自走地雷! そんなの分かってる!!」


 そして、泣きそうな顔でTDを呼び出した。


「TD! ミリーのチャフで動きが止まった! あれは無線誘導かも! 最大出力で無線妨害して!!」


『そんなぁ~周波数が分らないぞ!』


「お願い何とかしてっ!!」


『出力が足りない! マチルダと俺の装甲車の発電機だけじゃ、無理だ!』


「分かった! 直ぐに戻るから準備して!」


『アタシも行こうか?』


「あいつ等の動きは止める! だから狙撃して!」


『分かった、早くしな!』


 ミネルバの通信にリンジーは怒鳴り、チィコはアクセル全開で洞窟に戻った。そして、全開で走りながら、ゲルンハルトにも連絡した。


______________



 空一面を覆っていたチャフが治まると、フリーがゆっくりと動き出した。マリーは動き出すフリーを見付けると、胸の奥? に激痛が走った。


「多分、機体の両側にスラスターがあるから……避けるのは、左右なんだよな……まあ、斜めとかも避けてたけど……と、言う事はスラスターの角度も変えられるか……」


 ヴィットはフリーが動き出したと言うのに、ブツブツ独り言を言っていた。そして、極度の緊張状態にあるマリーを他所に、明るく叫んだ。


「マリー! 考えがある! もう一度だけ飛べる!?」


「飛べるけど、精々三分くらい……」


 元気よくヴィットが聞くが、マリーの声には元気がなかった。


「十分! ミネルバのとこまでお願い!」


「分かった」


 マリーは底面ロケットを噴射! 大空に飛び上がった。そして、警告音を鳴り響かせながら、ヨロヨロとミネルバの近くに着陸した。


「待ってて!」


 ヴィットは、ハッチから飛び出してアリスⅡに走って行った。その背中が小さく見えたマリーは、胸の痛み? が更に大きくなった。


______________



「マリーの損傷は!?」


 ハッチから飛び出したミネルバが叫び、ヴィットは真剣な顔で答えた。


「かなり酷い。でも、大丈夫だ……ミネルバ、RPGを貸してくれ」


「どうするんだ? まさか、お前……」


 ミネルバの顔が険しくなる。


「生身で突っ込んだりしないよ。考えがあるんだ」


「……持ってけ」


 少し笑ったヴィットに、溜息を付いたミネルバがRPGを投げた。受け取ったヴィットは、振り向き様に叫んだ。


「ありがとう! 来てくれて!」


「フン! 報酬目当てだ! いいか、嬢ちゃんが電波妨害の準備を!……」


 言葉の途中で、ヴィットはマリーに飛び込んだ。


「まんまる……坊やを頼むぞ……」


 小さな声で囁いたミネルバは、ハッチの中に戻ると部下に叫んだ。


「砲手! ノミ野郎の動きが止まったら確実に仕留めろ! いいかっ! まんまるの近くでは撃つんじゃないよ!」


「了解!」


 砲手は元気よく返事して、スコープに顔を埋めた。


__________________



「ヴィットの奴、RPGを……」


 見ていたイワンには嫌な予感がして顔を曇らせ、ハンスが真剣な顔で言った。


「人型戦車の時、生身で行ったよな」


「大丈夫だ。リンジーには見られてない」


 何故がヨハンは別の心配をして、思わずイワンが怒鳴った。


「お前、何言ってんだよ!」


「ヴィットは生身じゃ行かないさ……それは、マリーが一番悲しむ事だ……何か、考えがあるんだろう」


 真剣な顔のゲルンハルトは、そう言うが確信は無かった。


「それより、もう少し前進しよう」


「お前、まだT34がうじゃうじゃ居るんだぞ」


 平然と言うヨハンに、ハンスが溜息を付いた。


「そうだな、リンジーの作戦が発動する。確実に仕留めるには、距離を詰めないとな」


「ああ……絶対に外せないからな」


 ゲルンハルトの言葉に、イワンは強い視線で返した。


「ハンス。前進だ……」


「仕方ねぇな」


 ハンスは、前方を睨むとアクセルに力を込めた。


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