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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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キボウ

 第二陣の戦闘機隊も、マリーのレザー攻撃で次々と操縦不能になって退却して行った。


「マリー! モニターにアラームだっ! 何だこれっ!?」


 グルグルで意識は飛びそうだが、ヴィットはモニターのアラームを見て叫んだ。


「対空レーザーの過熱! 冷えるまで機銃で行くから!」


 マリーの返答に違和感は無かったが、ヴィットは胸騒ぎの様な感覚に包まれる。マリーは機銃弾でピンポイントに翼端を吹き飛ばし、次々に敵機を操縦不能にして行く。


 だが、十数機を追い払うと、直ぐにまたアラームが鳴り響いた。


「今度は何だ?!」


「残弾ゼロよ!」


「だったら、どうするんだ?! また棒で叩くのかっ?!」


「飛行中は無理っ! 勢いが付きすぎて危ないからっ!」


 確かに高速回転の加速力を考えれば、手加減なんて無理に決まってる。それに主砲弾は弾頭が爆裂榴弾なので、命中すれば戦闘機など木っ端微塵になってしまう。


「補給に降りよう!」


「分かった……」


 マリーのレーダーは、補給では到底足りない程の戦闘機を補足していた。当然、グルグルで目が回ってるヴィットには分からない……マリーの沈む声の意味も。


__________________



「物凄い数の戦闘機です……戦車も次々に補充されてます」


「全く……限度知らずの大盤振る舞いだな」


 副官の報告に、指揮官は大きな溜息をついた。


「近隣の全戦力を借り出したって感じですね」


 副官はレーダーに映る巨大な影に、寒気がした。


「まだ、捕獲する気はある様だ……」


「そうですね。例のヤツは、まだ待機中です……それと、充填物はHNIW、CL-20です……」


「あの、舌を噛みそうな奴か……確かRE係数は……」


「2.04……TNT換算で二倍。威力もそうですが、値段も破壊力並みです」


「そうか……」


 指揮官は声を沈ませた。


「本当に使う気ですかね?」


「相手が自分達より強力な武器を持ってるのは、最高の脅威だからな……」


 副官の問いに、指揮官は溜息と同時に呟いた。


「ですが、クライアントは商人ですよ」


 副官は発注元の正体を思い出し、首を捻った。


「ああ、営業部と製造部……それに、実験部を併せ持つ。つまり、作って売ってる連中だ……最高の商材だが、競争相手に渡すくらいなら……抹消するだろう……つまり、考え方は、軍隊と同じだ……要は、勝利か利益かだ」


「……それと、もう一つ報告しておきます。現在、戦車隊の四分の一です……我々の指揮権が及ぶのは……」


「……そうか」


 副官の報告を受けた指揮官は、背中を向けると口元を緩めた。


_______________________



「応援はどうなったの?!!」


 無線機のマイクに、リンジーは怒鳴っていた。


『ごめんなさい……ヴィットが下がらせた……』


「何それ?!! 何の為の応援なのよっ!!」


 消えそうなタチアナの返答に、リンジーは更に大声で怒鳴る。


「仕方ない。訓練も無しに、マリーの様な戦いは無理だ」


「何言ってるのっ?! 普通に戦えばいいの!!」


 肩に当てたゲルンハルトの手を、リンジーは思い切り振り解いた。


「気持ちは分かるが嬢ちゃんよ、そんな応援でヴィットとマリーが喜ぶかのぅ?」


「それは……」


 オットーの穏やかな言葉に、リンジーは俯いた。


「でも、どないするの? ヴィットもマリーも疲れとる……しかも、またあんなにぎょうさん来てるで……」


 泣きそうなチィコの言葉に、リンジーは我に返る。


「TD! 無線機直せる?!」


「無線機ってあれか?」


 埃を被った時代物の無線機を、TDは横目で見た。


「あれなら、長距離通信出来るでしょ!?」


「出来るけど、今から応援呼んでも……はっ、ゴメン」


 リンジーの瞳に大粒の涙が浮かんでいるのを見たTDは、慌てて口を押えた。


「私達だけじゃ……ダメなの……戦闘機相手には……何も出来ない……」


「そうや! ミリーを呼んだらいいんやっ!」


 俯き涙を浮かべるリンジーの横で、チィコが飛び跳ねた。リンジーの脳裏に、深紅の機体がフィードバックした。それは、リンジーを内側から勇気と元気で支えた。


「そうか! ミリーなら!」


「ああ、あんな数、一瞬だ!」


 イワンが頷き、ハンスも手を叩いた。


「周波数は? 第一、ミリーの居場所は?」


 落ち着いた声で、ヨハンが腕組みした。


「大出力で、片っ端から電波を飛ばす! そしたら、いけるかも!」


 叫んだTDが無線機に駆け寄るが、カバーを外すと唖然とした。無線機の中は埃で埋め尽くされ、見た事も無い部品のオンパレードで流石のTDでも修理するのは困難だった。


「多分、コンデンサは全滅だ。リンジー、サルテンバの無線機から部品を取るけど、いいか?」


 コンラートは素早く部品の不具合を調べ、男前な顔でリンジーに向き直った。


「……いたの?」


 唖然と呟いたリンジーの声に、コンラートは盛大にズっこけた。


_________________



「どうした? 俯いてる場合か?」


 飛行甲板で補給をしていたリーデルが、膝を抱えるタチアナを見下ろした。


「……私は何も出来ない……」


 声を掛けられる事さえ、今のタチアナには苦痛だった。


「出来ないんじゃなくて、”しない”の間違いじゃないのか?」


「えっ?」


 真剣な顔のリーデルは、そう言うと整備に戻った。顔を上げたタチアナの前に、今度は笑顔のガーデマンがいた。


「君にはあるじゃないか……我々には無いモノが」


「私に?……」


「ああ、腕利きのタンクハンターは”お金”で仕事を引き受けるんだよ」


 そう言うと、ガーデマンはメモを渡した。そこには、数々のタンクハンターの連絡先が書いてあった。


「艦長! 連絡して! お金に糸目はつけないっ!」


 走り出したタチアナのの背中を、ガーデマンは優しく見送る。


「案外、世話好きなんだな」


 リーデルは、ニヤリと笑った。


「世話って言うより……一応、医者ですから。医者は患者の体とココロのケアをするのが役目です。さあ、我々も行きましょう」


「ああ、待ってるだろうからな」


 リーデルは遥か彼方の水平線を見詰めた。


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