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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
125/172

余裕

「左、自走砲! 正面から行くよっ!」


「横から転輪を狙うんじゃないの?!」


 マリーの指示にヴィットが叫んだ。


「自走砲は下部側面は装甲が薄いの! 正面から起動輪をヤルよっ!」


「了解! 正面から突っ込む!」


 確かに自走砲の装甲は薄い。当たり所が悪ければ、直ぐに乗員に致命傷を与える事になる。どうせ砲は左右には動かないから、起動輪さえ破壊すれば、だだのオブジェになるのだった。


 マリーは次々に自走砲の起動輪を、ピンポイントで破壊した。


「奥に巡航戦車! かなり速いぞ!」


 ヴィットはモニターの奥に、高速で移動する巡航戦車を見つけた。


「巡航戦車も起動輪を壊すよ! 砲塔が回るから砲身もついでに壊すから!」


 マリーは簡単に言って、主砲二発の連続発射で起動輪と砲身を撃破した。


「高速移動中のあんな細い砲身によく当てるなぁ……しかも、こっちは更に速く移動してるのに……」


 ハンドルと格闘しながら、ヴィットは苦笑いした。


「飛んで来る砲弾より全然遅いよ」


 発射された砲弾を狙撃するなど、現在の技術では奇跡なのだが、マリーが言うと本当に簡単な事の様に聞こえてヴィットは笑顔になった。


「確かになっ! 」


 そして、数両の巡航戦車も”あっ”という間に”置物”になった。


「横の対戦車砲はどうする?!」


「物理的に壊す! 当然”手”で!」


「はひっ?」


 マリーの声に、ヴィットが頭の上に?マークを浮かべた瞬間、マリーはアームを出すと、対戦車砲の車輪を引き千切り、砲身だけになった残骸を後方へ投げ捨てた。当然、砲兵は大きく口を開いたまま唖然と見ているだけだった。


「なんて無茶な……」


「だって、砲弾を使ったら周囲の人が怪我するもん……」


 冷や汗を流すヴィットに、マリーは小さな声で言った。


「そうだね……」


 なんだか嬉しくて、ヴィットはまた笑顔になった。


_____________________



「マリーの襲撃です」


「やはり、そう来るだろうな」


 副官の報告に、指揮官は平然と言った。


「補給地防衛を残せば戦力は殆どマリーだけですから、これしかないですよね」


「想定内だが……しかし、あっと言う間だな」


 指揮官は遥か前方の戦闘に、溜息をついた。


「重戦車や駆逐戦車を揃えても、同じだったでしょうね」


 副官も同じ様に溜息をついた。


「我々の作戦など、マリーの前では何の役にも立たないな……」


「ですが、あれだけ暴れれば必ず補給が必要になります」


 諦めに近い指揮官の言葉だったが、副官はニヤリと笑った。


「果たして、補給を絶てるか……まあ、追加支援は要請済みだ……やはり、物量で消耗させるしかないようだ」


 言葉とは裏腹に、指揮官の目には自信が見え隠れしていた。


_____________________



「こんな短時間で……」


 残存車両の少なさを見ながら、ラヴィネンコは冷や汗を拭った。味方が応戦の暇さえ与えられず、一方的に破壊されて行く様はラヴィネンコの概念を根本から揺るがした。


「隊長……」


 青褪めるラヴィネンコの顔を見た部下に、不安の色が見え出した。ハッとしたラヴィネンコは、直ぐに襟を正した。


「同志軍曹、各個に狙撃を開始。敵は悪魔でも神でもない……ただの戦車だ」


「はっ……しかし、どこを狙えば?」


 確かに基本となるバイザーやペリスコープは見当たらず、軍曹は困惑を隠せなかった。


「タイヤだ……コンバットタイヤと言えど、弱点には変わりない。止めてから、視界を奪う……必ずあるはずだ、視界を確保する為のモノが」


「その後は火を放ち、乗員をあぶり出す……何時もの状況ですね」


 自信に満ちたラヴィネンコの言葉で、軍曹の顔に色が戻った。


「さて、状況開始だ……」


 ラヴィネンコも、冷静さを取り戻し命令を出す。しかし、冷静でいられたのは数分だけだった。


____________________



「左、二時の方向、藪の中に対戦車ライフル。狙撃手は三人ね」


「どこ? モニターじゃ見えないけど」


 一旦速度を緩めると、マリーは敵兵の位置を報告した。ヴィットは慌ててモニターを確認した。


「取り敢えず、電磁装甲展開するね」


「そうだね、どうせタイヤを狙って来るし。それと、残弾は?」


「主砲残弾30%、機銃弾60%ね。因みに噴射剤は残り40%」


「一度、補給に戻る?」


「そうね……戦闘機の動きも気になるし」


 二人が話してる時、電磁装甲が対戦車ライフル弾を弾いた。


「狙いは正確、同時に一つのタイヤを狙ってる」


「飛ぶ時、電磁装甲切るんだろ?」


 ヴィットの脳裏に心配事が過るが、普通にマリーは言った。


「大丈夫だよ」


 マリーがそう言った瞬間、鋭い金属音がヴィットの耳をつんざいた。


「何!? 何だっ?!」


「アームで弾を受けたのよ。最大に伸ばせば、六輪全てカバー出来るんだよ」


「便利な”手”だね」


 安堵の溜息をつきながら、ヴィットは笑顔になった。


「いいでしょ。じゃ、補給に行くよ」


 マリーは嬉しそうに言うと、底面ロケットを噴射して大空に舞い上がった。当然、撃って来る対戦車ライフル弾を、器用にアームで弾きながら。


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