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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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信頼

「これから先は、ちょっと待ってね」


 マリーはそう言うと、センサーを駆使して異常を探した。数秒で探索は終了し、マリーはその場所を前照灯で照らし出した。


「地面に多くの可動部、壁にも発射口らしき開口部多数」


「どうする?」


 腕組みするヴィットに、マリーは普通に言った。


「榴弾で壁を壊して脅威を排除していい?」


「……そんなことしたら、別の脅威が……」


 冷や汗を流すヴィットの横で、リンジーが苦笑いした。


「そうね、天井が崩壊して全員生き埋めね」


「何も考えてないのね、だから機械は……」


 呆れたようにタチアナが呟く。


「ちゃうで、マリーは皆の事が心配なんや」


 ニコニコしながらチィコはタチアナの顔を見る。マリーを機会と言ったタチアナに、カチンときたリンジーも、チィコの笑顔を見ると小さく溜息を付いた。


「マリーは全て計算した上で言っている。安全でない対策など、マリーは進言しない」


「我々の常識や理論など、マリーの前では空論だ」


 凛としたゲルンハルトに続き、ヨハンもボソッと呟いた。


「こんな洞窟で大砲撃っても安全? 何を根拠に?」


「根拠はマリーよ」


「何それ?」


 腕組みしたリンジーを見て、タチアナが鼻で笑った。


「そうだな、マリーの言う事に間違いはない」


「あなたも、さっき否定したじゃない」


 頷くヴィットに、タチアナが溜息を漏らす。


「ごめん間違いだった。世界中の何よりマリーの事、信用してる」


「マリーが無理なら、無理だ。マリーが出来ると言うなら、賭けてもいい……出来る」


「そう言う事だ。マリーの判断なら、俺達は喜んで従うぜ」


 素直に謝るヴィットに続き、ハンスやイワンも頷いた。


「あなた達、正気?」


「嬢ちゃんよ。先入観など捨てて、しっかりマリーちゃんを見るがよい。その先には必ず見えるのじゃ」


「何がよ?」


 今度はオットーが眼鏡をキラリと光らせた。


「未来じゃよ……それも、明るく幸せな未来じゃ」


「……おじいちゃん」


 オットーの言葉に、マリーは言葉を揺らした。


「なら、好きにすればいいわ」


 フンと横を向くタチアナ。ヴィットは笑顔でマリーに聞いた。


「マリー。行けるのか?」


「岩も硬いし、榴弾で発射装置だけを壊せば大丈夫だと思う」


 マリーの声には自信があった。ヴィットは直ぐに皆を下がらせる。


「皆、下がって……マリー、任せた」


「行くよ!」


 マリーは左右の壁にロケット榴弾を発射! 轟音が洞窟内に響き渡るが、壁の崩壊は少なく天井にも異常はなかった。


「なんや、思った程じゃないやんか」


「見て、壁に……」


 唖然とするチィコの横で、リンジーが崩れた壁から覗く機械の残骸を指差す。


「構造は単純だが、発射制御は一か所でやってたみたいだな」


「マリーは岩越しに、全て見えていた訳か……」


 直ぐにヨハンが解説し、ゲルンハルトも感心した様に呟いた。当面の脅威は去り、安全になった洞窟をヴィット達は先へと進んだ。


_________________________



「行き止まりだ」


 それから暫く進むと、前方は行き止まりとなったいた。


「見て、扉みたいになってる……あれ? 何これ?」


 前照灯が照らし出す壁には、確かに扉の様になってる場所があった。最初に見付けたリンジーは、更に不思議なモノを見付けた。


 それは扉から出た、三本の紐みたいなモノだった。


「マリー、分かるか?」


「引けば開くみたい……でも、二本はダミーね」


「要するに、確率は三分の一か……って! じいちゃん触るな!」


 直ぐに触ろうとするオットーに、ヴィットが大声を出す。


「こう見えても、運だけは良いのじゃ」


 振り向いたオットーは眼鏡を光らせるが、他のお爺ちゃんズは溜息交じりに言った。


「運と言っても悪運じゃが……」


「ハズレを引く運なら、誰にも負けないのじゃ」


「砂漠で仁丹探す様な確立じゃ」


「亀毛兎角 ……」


「ジンタンって何?」


 苦笑いのヴィットは冷や汗を流した。


「マリーが引けばいいんや」


「そうね、マリーがいいな」


 チィコが微笑むと、リンジーも笑顔で同意した。


「ダメよ、各種センサーでも内部構造は分からないの。ワタシでも、運になるもん」


 マリーは慌てて言うが、ゲルンハルトは穏やかに言う。


「マリーなら、誰も文句はないさ」


「でも……」


「いいんじゃない。マリー、決めなさい」


 声を落とすマリーだっが、タチアナはハッチから身を乗り出すと上から目線言い放った。その態度にリンジーは過敏に反応するが、今度はヴィットが肩を叩いた。


「お嬢様の許可だ」


「そうね」


 笑顔のヴィットを見ると、リンジーの興奮は嘘の様に収まる。お約束、イワンが何か言おうとするが、先に懐中電灯が顔面にメリ込んだ。


「何も言ってないのに……」


______________________



 意を決して、マリーが一本の紐を引いた。一瞬のタイムラグの後、扉が開いた。


「流石マリーや!」


 チィコが飛び上がって喜ぶが、ヴィットは震える声で呟いた。


「何か、マズイぞ……」


 マリーが扉の奥を照らすと、そこには巨大な丸い岩があった。


「逃げた方がいいかも……」


「そやな……」


 冷や汗を流すリンジーの横で、チィコも顔を引きつらせた。


「ごめんなさぁ~い」


 マリーの叫びと同時に、巨大な丸い岩がコチラに向かって転げ出した。


「こりゃ、たまげた……」


「感心してる場合かぁよぉ~早く! 逃げ〇△×※~!」


 感心して頷くオットーに、ヴィットが声を枯らした。


「イ〇ディ・ジョー〇ズかぁ~!」


 イワンの情けない声が、洞窟に響き渡った。


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