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最強戦車 マリータンク  作者: 真壁真菜
第三章 起源
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宝箱→??

「大佐、大丈夫かな……」


「見れるわっきゃ、ないだお~」


 デアクローゼに帰投中のマリーは心配そうに呟くが、そもそも飛行中にヴィットが答えられるはずもなかった。当然、回転数は最小限に落としての低速飛行だが、多少慣れて来たとは言え、ヴィットにとって気絶しないのが精一杯だった……涙とヨダレは別として。


「そだね……」


 涙とヨダレ塗れのヴィットに、マリーは苦笑いした。


「マリー!」


「お帰りっ!!」


 マリーは静かに着艦すると、満面の笑みでチィコとリンジーが駆け寄った。


「ヴィットは大丈夫なん?」


「大丈夫よ、多分ね」


 急に心配顔になるチィコの頭を撫ぜ、リンジーが微笑む。大丈夫じゃないなら、マリーが落ち着いてる訳はないと、リンジーには分かり切っていた。


「ただいま。大佐達も、もう直ぐ帰って来るから」


 マリーは嬉しそうに砲身を上下させる。


「車体も大丈夫そうだ」


 素早く車体の傷を確認したTDが、安堵の大きな溜息を漏らす。


「よかった……」


 リンジーも目視だが、マリーの車体に傷が無い事を見て小さな安堵の溜息を付いた。


「毎度の事ながら、少しは俺の事も心配しろよ……」


 ボロボロになったヴィットがハッチから顔を出すと、周囲から歓声が上がった。


「褒められ慣れてないから、戸惑ってる」


 なんだかアタフタするヴィットを見て、リンジーが微笑んだ。


「リンジー、強がりは止めてヴィットの胸に……どごっ!」


 これまた毎度の展開、イワンの顔面に七十五ミリ砲弾がメリ込んだ。


「だから、実弾投げるなよ」


 苦笑いのヴィットは、更に集まって来たデアクローゼ乗員達に取り囲まれた。


_________________________



 飛行甲板上では、巻き上げ機と化したサルテンバの復旧作業が行われていた。


「スプロケット・ホイールの溶接、誰がしたのよ?」


 ガチガチに溶接された巻き取りドラムは、スプロケット・ホイールに完全密着だった。


「イ~ワ~ァン!」


 睨むリンジー、イワンは両手で顔面防御態勢を取るが、何も飛んで来なかった。


「仕方ないさ、ドラムが途中で外れたらマリーを助けられなかったからな」


「そうだよな~」


 腕組みするゲルンハルトの言葉に、イワンは物凄い安堵の溜息を付いた。


「しかし、相手がマリーじゃなかったら、確実にあの世の行ってたな」


「……」


 普通に言うヨハン、イワンは無言で青褪めた。


「でも、これで本当に外れなかったら、やっぱ、あの世かな」


「マジですか?」


 嬉しそうなハンスの言葉で、イワンは必死で作業に戻るが中々外れなかった。


「ワタシ、やってみようか?」


 半泣きのイワンに、マリーが助け舟を出す。


「頼む! マリー!」


 縋るイワン、マリーは器用にトーチを掴むと溶接部分を熱し始める。溶接部が真っ赤に染まると、マリーは渾身の力を込める。


「あれっ?」


 すると、スプロケット・ホイールはシャフトの部分からポロっと取れた。


「マァリィ~……」


「ごめんなさぁい!!」


 マリーは猛スピードで逃走し、残されたイワンは石像の様に固まった。


「まったく、なんて馬鹿力なんだよ、シャフトの部分は特殊合金だぜ……」


 TDも呆れた様に呟く。


「直る? TD……」


 不安そうなリンジーに、笑顔のTDが答えた。


「マリーの修理に比べたら、何でもないさ」


「私がリンジーの愛機を直して……どっ熱っ!!」


 触ろうとしたコンラートは、手を数倍に腫れさせてマリーを追い越し洗面所に駆け込んで行った。


「あそこ、海賊の船やで!」


「なんて、目をしてる……」


 肉眼では識別出来ない距離なのにチィコは普通に言い、ヴィットは苦笑いした。そして、黒ひげ(元)の船は、デアクローゼの隣に並んで停船した。


___________________________



 誰より早く乗り込んだのはオットーだった。


「とても老人の動きじゃないね」


「多分、宝物で目が眩んでるから……」


 呆れるリンジーの横で、ヴィットが苦笑いした。


「おかげて助かった」


「いえ、助けたのはマリーですよ」


 デアクローゼに戻ったリーデルは、直ぐにヴィットに礼を言った。


「それは謙遜だよ、君とマリーに助けられた」


 ガーデマンは、笑顔でヴィットを見た。


「所で、マリーは?」


「リンジーのサルテンバ壊したんで、逃げました」


 周囲を見回したリーデルに、ヴィットは笑顔で答えた。


「そうか……」


 リーデルも笑顔で頷いた。


「所で、あの艦はどうしますか?」


 出迎えに来たハイデマンが、リーデルに聞いた。


「乗ってみた分かったんだが、あの艦は物騒な戦闘艦だ。残しておいて、海賊の手に渡るくらいなら、海の平和の為にも沈めた方がいいと思う」


 少し顔を顰めたリーデルだっが、リンジーは満面の笑顔で言った。


「それなら武器や弾薬、食料や、その他モロモロ頂いてからにしましょう」


「どっちが海賊が分からないな……」


 嬉しそうなリンジーの横で、ヴィットが苦笑いした。


「まあ、そうだな……乗員、手分けして金目の、もとい、必要物資を搬入しろ!」


 ハイデマンは乗員に号令を掛けた。


____________________________



 次々と物資が運び込まれる。見ていたヴィットは、リンジーに声を掛けた。


「お前、目が怖いぞ……それより、じぃちゃん戻って来たか?」


「えっ、何っ?」


 目を$にしたリンジーは、全く話にならなかった。


「さっき、無線で宝箱を見付けたと連絡があったのじゃが……」


 ポールマンが冷や汗を流しながら言うと、ベルガーは髭を触りながら、キュルシナーは葉巻を燻らせながら、悪魔の様な笑顔でヴィットを見た。


「……なんか、凄く嫌な予感」


 ヴィットは冷や汗を流しながら、苦笑いするしか出来なかった。


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