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第八話 初登校

 今日から待ちに待った(待ってないような気もするが)留学生活スタートだ。

 ……実家にいながら留学ってのも違和感あるが。


 待ち合わせの時間、リビングの壁に埋め込まれた場違いに豪華な扉の前で外靴に替え、気合を入れてその扉を開く。


 途端、入れた気合が霧散した。


 前回の休日時の利用と違い、談話室に設置された異次元扉の前には多くの生徒が登校前の会話を楽しんでいた。


 突然開いた扉に驚き、その先に居た俺を全員が一斉に凝視。

 その視線の波に圧倒された俺は、『……お邪魔しました~』と言って扉を閉めようとしたが、寸前で待機していたハイドに扉をガッチリ掴まれ阻止されてしまった。


 俺の行動が既に読まれてるよ。


 その後、談話室に居た生徒によって俺の人相が光の速度で伝達されたらしく、寮を出る頃には立派な客寄せパンダ……もといドラゴンになっていた。


「ううぅぅぅ~~……、ちょっと目立ちすぎな気がする。目以外は魔族と変わらんのに……あ、角も無いか」


「魔眼は濃淡により分かり難い者もいるし、角も小さく髪に隠れも者も多い。目立つ要因は他にも二つほどある」


 二つ?


「一点はその服。一見してオレと同じ制服だが、本来絹や綿で仕立てられる生地と違って、化学繊維が使われている。見る者が見れば素材の違いは一目瞭然だ」


 俺には違いが良く分からないけど、絹とかの天然素材の方が高そうな気はするな。


「もう一点はオレと一緒に居ることだ。オレとて王族だからな、顔が看板のようなものだ」


「……俺、怒っても良い?」


「一人で教室まで行けるのならな」


「生意気言ってすいませんでしたっ!」


 そんな場面があったりなかったり。


『第一階級第二位 鷹』


「鷹ね~、随分と洒落たクラス名だな」


 教室に入る時に見たプレートにはそう書いてあった。高校のクラス名なんて数字かアルファベットだから、『鷹』クラスなんて何とも新鮮だ。


「ふむ、そんなものか。やはり同じ学び舎とはいえ細かな差異は多いな」


 まず校舎の外観から全く違うけどな。とは言っても、教室の一つ一つは椅子に机とそんなに現代の学校と変わらなく見える。


 俺とハイドは同じクラス、第一階級二位の鷹クラスらしい。ハイドが同じクラスなのは学園側の配慮らしいが、知り合いが居ると言うのは有り難い限りだ。

 流石にこの状況で一人放り出されるのは勘弁願いたい。


「……にしても、みんな気にしてる割に話しかけてこないのな」


「『異世界人』としか情報らしい情報がないからな、切っ掛けが掴めんのだろう。誰かが口火を切れば直ぐにクラス中に取り囲まれるだろうな」


 別名、包囲網ですな。


 ゴォーン……  ゴォーン……


 ほどなくして学園に鐘の音が響き渡った。


 これは学園の中心部に建てられた大鐘楼から聞こえるもので、チャイム代わりのようだ。

 学校の校内放送のチャイムに慣れていた俺には、いたく新鮮に感じられた。


「よぉ~し、お前ら揃ってるかぁ!?」


 扉を蹴る様に現れたのは、浅黒いボディビルダーのような筋骨隆々の大男。

 獣人族のようだが、耳と尻尾の姿形を見る限り…………クマ?


「知らない奴は居ないと思うが、恒例行事ってやつだ、名乗っとくぜ! 今年の第一階級二位、鷹のクラスを受け持ったボルノ・グラントだ!」


 なるほど、熱血教師というか体育会系と言うか、こういう教師は何処にでも居るんだな……っと思いながら視線を向けていたら、不意にグラント先生の視線と衝突した。


「おおうっ! おれより先に紹介のしなきゃいけない奴がいるんだったな。おい、留学生、ちょっと出てきて自己紹介でもしとけっ!」


 おっと、強制イベント発生か。まぁこのぐらいは想定内だ。


 教壇に進み出た俺はそのまま教室内を見回した。

 教室内二十数名の視線が突き刺さるが、今朝の圧力に比べればなんてことはない。


「初めまして、ヒビキ・ヒイラギです、日本……地球から来ました。俺がこの世界、アルターの事を知ったのはつい一週間前です。滞在日数に至ってはまだ一日経っていません。留学生には選ばれましたが、俺が何を期待されているのか、俺に何が出来るのか、わからないことばかりです。ですが……」


 そこで一旦、言葉を切る。この先を続ければ自分の首を絞めるかもしれないけど、正直堅苦しいのは嫌いだし、猫被るのは上手くない。


「ま、この世界は面白そうだから存分に堪能させて貰うとするよ! あ、悪いけど上品なのは苦手だからさ、気に障るかも知れないけど勘弁してくれ。まぁ、そんな俺だから特に気を遣う必

要もないし、聞きたい事があったら遠慮なく聞いてくれ。俺も知らない事ばかりだからきっと色々聞くと思うし。そんな俺で良ければ、みんな一年間よろしくっ!」


 最後に片手を挙げて挨拶を終える。


 …………が、水を打ったように静まり返る教室。


あれ……滑った?


 どうしよう、と思っていたら小さく教室内に響く拍手の音……音源を辿ると、ハイドが薄い笑みを浮かべて手を叩いていた。


 それが皮切りになったのか次第に拍手の音が大きく、重なり合い教室中に響いた。


 とりあえずクラスメイトの顔はどれも笑顔だったので、外した訳じゃないらしい。ちょっとほっとした。


「悪くない挨拶だったぞ留学生……いや、ヒイラギ。自分らしくあるっての、簡単なようで難しいからな。期待してるぞっ!」


 そう言って俺の背中をバンッ!っと叩くグラント先生。

 本人的には軽くのつもりだったのかも知れないが、危うく前のめりに取れるところだったぞ


 とりあえず、俺の留学生としての最初の仕事は滞りなく済ますことが出来た。


 その後はグラント先生の指示に従って講堂で全体集会なったわけだが、異世界からの留学生なんて肩書きを持つ俺の挨拶が、クラス内だけで終える事など有る筈も無く。


 すっかり挨拶を済ませた気分で居た俺は、不意打ちのように全校生徒の前で挨拶させられるのだった……


 流石にさっきのようにフランクな自己紹介は無理で、無難な挨拶に終始してしまった。



「あ~っ、緊張した~…」


 今まで大勢の前に立つっていう経験がなかった俺には、緊張感だけで随分と体力を削られたような気がする。


 全体集会終了後、教室に戻ってきた俺はそのまま机の上に突っ伏していた。


「情けないな、教師の話が始まるぞ」


「うぇ~い…」


「おっしお前ら、サッサと説明すっから静かに聞いとけよ!」


 俺が顔を上げるタイミングでグラント先生が戻ってきて、今後の事についての説明を始めた。


 年間計画や階位が上がったことによる諸注意などについて大雑把な説明が終わった後は、前にシルフィオナが持っていた物と同じ、階位を表す学生証が配られた。

 

 ……のだが、俺の分だけない。ホワット?


「失くすなよ、階位の証明だけでなく魔法が掛かっていて、彼方此方で必要になるからな。ヒイラギについては後で別に手続きがあるから心配するな」


 そういう事ならしょうがない。留学生なので色々違うだろうし。


「うっし、次は各種委員を決めるぞ! まずは……」


 伝達事項はほぼ終わったようで、定番の委員決めへと移っていった。

 風紀委員や図書委員といった、異世界の割に現代日本でも定番なものが決まっていく中、俺の扱いはどうなるんだろうとぼんやり考えていた。


「よし、次はダンジョン委員だな! 立候補はいるか?」


 ……ダンジョン委員? ダンジョンと言うとあれか、RPGとかで定番のモンスターとかトラップとか宝箱があったりするやつか。

 ファンタジーな世界だとは思っていたけど、そんなものまで存在するとは、恐るべし。


 分からないもの聞け、と言う事でハイドの聞こうかと一瞬考えたが、どうせ教師がいるんだから……と、手を上げて尋ねようとしたのがいけなかった。


「グラント先生、そのダンジョ――」


「おお、ヒイラギ、やってくれるか!」


 はいぃぃっ!? ど、どうやら俺の挙手を立候補と勘違いしてしまったらしい。


「よしよし、これで全員決まったな。良し、今日のところはこれでお終いだ。明日からは通常の授業だから気合入れろよ……ああ、ヒイラギ。お前さんは昼食後に第九魔法準備室に来いとさ。それじゃあ、お前ら、また明日な!」


 俺が事態のなりゆきについて行けないうちに、グラント先生はサッサと言いたい事だけ言って教室を出て行った。


「……あれっ?」


「ヒイラギ、お前という奴は……」


 呆然とする俺の横で、ハイドが眉間に指を当てて唸る。どうやら面倒な事を引き受けた(事になっている)らしい……


「なあ、ハイド。ダンジョン委員って一体なに?」


「最初からオレに聞けば良いものを……」


 溜息を吐きつつ、ハイドは丁寧に説明してくれた。


 この学園の地下には実践授業用のダンジョンが造られていて、定期的に行われる試験や実習で使用されるらしい。

 ダンジョンには学園側が用意したモンスターや罠があり、階位別に難度が違うルートを通らされるとか。


 とは言え、ダンジョン内のモンスターや罠が自動で補充・修理される筈もなく、大体は業者がやるのだが、ダンジョン委員はそれらの手伝いや清掃等に借り出されるらしい。

 年に数回しか出番はないが、誰もが嫌がるほど大変な仕事だそうだ。


「……断れるかな?」


「諦めろ」


 ですよねー。

 うな垂れる俺に構わず、ハイドが席を立つ。


「済まないな、ヒビキ。これから所用があるので、ここからは単独行動だ」


「え?……ああ、了解。初日から色々悪かったな」


「気にするな。それに独り占めという訳にもいくまい。むしろ大変なのはお前だ、頑張れ」


「独り占め? 頑張るって何を?」


 その質問には答えず、視線だけで周りを見るよう誘導される。

 そこで俺はクラスメイトが誰も出て行かず、こちらの動きを注視している事に気が付いた。


「クラスメイトの邪魔をいつまでもする訳にはいくまい? 交流も留学生の立派な仕事だ、励むと良い」


 そう言い残して、サッサと教室を出て行ってしまった。その瞬間を待っていたように、クラスメイトに囲まれる俺。


「えーっと……」


 逃げ道は無し……覚悟決めるしかないか。


「お、お手柔らかに頼む……」



「つ、つか、疲れたっ~~……」


クラスメイトの質問攻めにあうこと一時間程、比較的良識的な生徒の「今日はこれくらいにしておこう」の一言で、ようやく解散の運びとなった。

 昼食を一緒にと幾人からか誘われたが、今日のところは丁重にお断りした。

 食事まで質問攻めされたら、流石に気が休まらない。少し慣れるまで時間が欲しいところだ。


 食堂にやってきた俺は、自分の馬鹿さ加減に呆れてしまった。

 多少時間がずれたとはいえお昼時、今日はもう学園も無いので、結構な人数の生徒が談笑したりで盛り上がっている。


 いや、待て、流石にパッと見では留学生とはバレまい。


「あーっ、先輩っ!」


 早速バレたっ!? ……って、違うか。


「その声はネルか?」


 いつかと同じように背後にいた獣人族の王女ネルが、これまた同じように大きなオムライスの載ったお盆を抱えて立っていた。


「好きだね~、オムライス。今からお昼?」


「はい、ちょっと先生のお話が長引いてしまって。先輩はお昼を済ませたところですか?」


「んにゃ、今からだよ。ちょいとクラスで質問攻めにあってね、遅くなった。良かったら一緒に食べるか?」


 一人で食べるより可愛い女の子と食べた方が嬉しいんだけど、ネルがちょっと難しそうな顔をする。


「ボクとしてはご一緒したいんですけど、クラスのお友達と来ているんです。だから……」


「ああ、了解。俺は居ない方がいいね」


 友達と一緒ならその和を乱しちゃいかんよね。


「あ、違います。逆なんです!」


 と思ったら引き止められてしまった。


「ぎゃく?」


「はい、先輩の事は二階級でも有名ですから、みんな色々噂してます。ボクのお友達も機会があったら先輩と話してみたいって。でも、先輩さっきまで質問攻めだったって言うから…」


 しまった、珍獣キャンペーン中だった。


「……わかった、カウンターでお昼貰って来るから待っててくれ、一緒に食べよう」


「止めたほうが……え?」


 返事をしてカウンターに向かおうとしたら、何故か慌てた様子のネルに再び引き止められる。


「せ、先輩っ!? いいんですか? 質問攻めになっちゃいますよ!?」


「質問攻めは勘弁だけどね、ネルの友達だろ? そしてネルは俺の友達。だったら、その子たちも友達みたないもんだろ? 友達は無下にはできないしな~」


 友達の友達は友達、『友達の輪』理論だ。

 本気で思っている訳じゃないけど、ネルには色々迷惑かける事もあるかも知れないし、こういうところでサービスしておいて損は無いだろう。


「……やっぱり、先輩は凄いです」


「何の事かはよくわからんけど、お昼は一緒って事でいいのか?」


「もちろんです! それじゃあ、ここで待ってますね!」


「ああ、さっさと貰ってくるよ」


 しばしの別れを告げて、俺はカウンターへと足を進めた。


そんなネル&お友達との食事は、予想外に穏やかに進んだ。


 俺に気を遣ってくれたネルが、上手い具合に場を取り仕切ってくれたおかげだ。

 年下とは言えネルの友人と言う女子達に緊張していた俺も、気が付けば自然にお喋り出来るようになっていた。


 今度何かお礼を考えていた方が良いかな。食べるの空きそうだし、寸胴鍋でカレーとか。


 ネルの友達に日本の女子のお洒落について知っている事を話していると、不意に制服の胸ポケットに振動を感じた。

 皆に断りを入れて取り出すと、俺のマナーモードの携帯電話による着信の振動だった。

 必要ないだろうと思ったのだが、つい習慣で持ってきてしまったやつだ。


「異世界なんだし電源切っとけば良かったかな……って、ちょっと待て、どうして電波立ってんだっ!?」。


 語尾が跳ね上がるが、ネル達の驚いたかを見て我を取り戻す。

 あ、穴があったら入りたい……


「……知らない番号だな」


 なんとなく嫌な予感はするが、好奇心に負けて通話ボタンを押し耳に当てた。


「もしもし?」


『お~、ヒイラギ! 出るの遅いぞ~』


「学園長……あんたか……」


 正直、木葉さんか学園長かと思ってましたが。


「って、学園長、どうしてこの世界で携帯電話使えるんですか?」


 電話会社も異世界までアンテナ立てるほど勤勉でもあるまいし。


『おお、それはな、お前の家とこの世界を繋いでいる扉が電波を中継する機能を持っているからだ』


「へぇ~、そんな機能が。便利ですね」


 こっちでも携帯電話が使えるなら確かに便利だ。この世界で使う相手がいなくても、ネットとか色々便利だし。


『まあ、作った後にわかったんだがな』


 偶然の産物かよっ!?


「はぁ~、もういいです。ところで何の用ですか?」


 まったく、この人との会話は疲れる。


『そうそう、ヒイラギ。食事が終わったら第九魔法準備室に来るよう言われただろ? 先方がお待ちかねだ、なるべく早く行くように』


「先方ですか? 俺、なにするか聞いてないんですけど……」


『何だ、聞いてなかったのか? 担任はボルノだったな……後で説教でもしておくか。大した用件じゃないし、行けばわかる』


「はぁ……わかりました。とりあえず、これから直ぐに行きますね」


 どうせ聞いても答えてくれるとは思えないので、さっさと会話を打ち切って携帯をしまうと、ネルとお友達が目をキラキラさせてこちらを……いや。


 食堂中が静まり返って俺に注目していることに気が付いた。


「な……なに? どしたの?」


「先輩、今のって何なんですか?」


 ネルが質問すると、周りの生徒も一斉に頷いた。正直怖い。


「……あ、ああ、コレ? 携帯電話って言って遠くの人と話せる道具。他にも色々出来るけどメインは会話かな」


 ちょっとビビリながらも答える俺。


 その後は他の生徒から矢継ぎ早に質問が放たれたのだが、キリが無いと感じた俺は学園長の指示を理由に逃げ出す事にした。


「おおっと、呼び出されてたの忘れてた! ネル、悪いけど片付け頼む、今度埋め合わせするから!」


 背後でなにやら引き止めるような声が聞こえるけど、全力で聞こえないフリをして食堂の喧騒を後にした。



 予め渡されておいた地図を頼りに第二魔法室へ向かうが、学園校舎は広く移動も中々骨が折れる。


「自転車でも欲しいね、ほんと」


 校舎内をアホかと思われるだろうが、通路の幅と生徒の数を考えると余裕で通れそうな気がする。


「馬鹿な事考えてないでって……ここか」


 『第二魔法室』とプレートが掛かった部屋を見つけて、俺は挨拶をしながら中に入る。


「失礼しまっす、ヒビキ・ヒイラギです。今日こちらに来るように言われてきました」


 室内は薄暗くなにやら薬品の匂いがたちこめていて、床にある魔方陣や棚のビーカーやらがさらに怪しさを醸し出していた。


「あら、ようやく来たわね~。いらっしゃい~」


 何やら奥の机で書き物をしていた人物が振り返って言った。


 金髪で蒼い瞳の女性。耳は髪で隠れて見えないけど、神族だろう。


「初めまして、わたし第一階級魔法科講師のサラサ・リールよ~。リール先生って呼んでね~?」


 なんかのんびりというか、空気が柔らかいというか……周囲にいなかったタイプだ。


「よろしくお願いします、リール先生。ところで、今日俺が呼び出された理由ってなんですか?」


「あら、いきなり本題? せっかちね~」


 いや、学園長に先生がお待ちかねだと聞いて来たんだけど。


「ま、いっか~、そんじゃヒビキ君、その部屋の真ん中の魔方陣の上に立ってくれる~?」


「とりあえず、理由を先に聞いてもいいですか?」


 なにせ、前は不意打ちで異世界に飛ばされたもので。


「んーとね、君の魔力量と計測するのよ~」


 はっ? 魔力量?


「あの、俺、この世界の人間じゃないから魔法使えないんじゃ…」


「そんなことないわよ~? 地球の人間は放出器官を持ってないだけで、魔力そのものはもってるの~。これは既に調査済みなのよ~。もっとも、使われなくなって久しいから、魔力を感知する器官も退化しちゃってるから分からなくても当然だけどね~」


 ……なるほど、放出器官っていうのはわからんが、俺にも魔力とやらは有って魔法が使えるかも知れないと?

 おおっ! するとあれか? ド○クエとファ○ナルファンタジーみたいにメ○とかファ○アとか使えるかもと?


「あれ、でも放出器官がないと魔法使えないんですよね?」


「それは授業で聞いてね~? 今回は魔力量の計測だけだから~」


 まあ、使えるかもしれないならいいか。なんだかテンション上がってきた!

 おら、なんだかワクワクしてきたぞ!?


 リール先生の指示のもと部屋の中央の魔方陣に立つと、魔方陣の文字が光り始め淡い燐光が俺を包んだ。


「ふむふむ、なるほどなるほど~」


 なにやらリール先生は手元の用紙に色々書き込んでいるが、本当に魔力とやらはあるのだろうか?


 そのうち魔方陣の光は消え、俺の体を包んでいた燐光も霧散する。


「お疲れ様~、面白い結果が分かったわよ~」


「え!? どんな結果ですか?」


 実は隠された膨大な魔力が……


「実はね、全然魔力が無いの、空っぽ、ここまで綺麗に無いのは先生、初めてだわ~」


「散々期待させておいてそれかーー!?」


 あるって言ったじゃん馬鹿ーーっ!


「あは、冗談よ~。魔族や神族に比べると少ないけど、平均的な獣人族よりかはあるかしら~?」


 ダメだ、この学校の先生たち。はやくなんとかしないと。


 それはともかく、多少なりとも魔力はある、本当に……ふ、ふふふふ、楽しくなってきた!


「うふ、それじゃあ、魔法の使い方については明日からの授業で教わってね~? それからこれをどうぞ~」


 リール先生が俺に向かって差し出したのは、銀色に光るカード……あ、学生証か。


「今のでヒビキ君の魔力を登録しておいたから、これで使えるわ~。失くさないようにね~?」


 受け取ると、以前のシルフィオナと同様に表面に光も文字が走る。

 俺の名前と在籍するクラスの情報、他にも受けている仕事や評価など良く分からない項目もあった。


 他にやる事は無いそうなので、リール先生にお礼を言って第九魔法準備室を後にする。


「うーん、まだ昼過ぎだし帰るのも勿体ないか……」


 思いの外早く終わったので帰るのが勿体ないような気がするが、顔がばれている学園内だとちょっと目立ち過ぎる。


 ……なら、まだ人相が知れ渡ってないところならどうだ?


「街の方に行って見るかな。探検発見僕の街…ってな」


 誰ともなしに呟いて、俺は街に向かうためのルートに足を進めた。

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