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第十三話 使い魔登場

 魔具生成も終わり、闘技上の中で距離を置いて大きな魔方陣が三つ描かれている場所に来た。

 それぞれの魔方陣にはさっきの魔族の先生や、魔力量を測定した時のリール先生もいる。

 さしづめ監督って事だろうけど、他にも見覚えのある姿が。


「イルとシルフィオナか? 何で第一位に二人がここに」


 神族の双子の王子&王女様がいた。

 二人は二学年上の筈だから、ここに居るわけはないんだけど。


「召喚には危険が伴う場合もあるわ。その為に第一階級一位の中でも優秀な者を教師の補佐に付ける、そういう事もあるのよ」


「優秀ねえ……イルも?」


「言いたい事は分けるけど、間違いなく優秀よ」


 どうやら高笑いが煩いだけのキャラクターではないらしい。

 それは置いといて、もうちょっと詳しいところをサラに聞くことにする。


「まぁ二人はともかく、使い魔召喚って具体的にはどうやるんだ?」


「簡単よ。支給される契約石と言うのを魔方陣の上に置いて、契約石を中継させて魔力を流すの。そうしたら、自分の属性に応じた使い魔が現れるから、上手く契約に持ち込む事ね」


「契約に持ち込む?」


「色々よ。名前を付けたり、勝負したり、説得したり……要は主人に相応しいと認めさせれば良いのよ」


 良いのよって、簡単に言ってくれるな。


「一度で契約できない生徒もいるから、召喚は数日に分けて行われるわ。気負う必要は無いわよ」


 確かに人間がやったっていう前例も無いんだし、考えるだけ無駄か。

 変に危ない奴が現れても、監督の先生や先輩が居るなら危険も少ないだろう。


 クラスの人員は三つに分けられ、それぞれの魔方陣に振り分ける。

 上手い具合に俺とサラが一緒で、更にイルとシルフィオナが待機する魔方陣のようだ。


「これが契約石ねぇ~…」


 並んだ際に渡された透明な石を手元で転がす。

 石と言うより感触的にはプラスチックに近いな、これも魔錬石同様人工的に造られた物なのかも知れない。


「契約する使い魔ってどこから来るんだ?」


「一概には言えないわね。このアルターから呼び出される者もいれば、別の次元から呼び出される者も居るわ。高位の精霊なんかは後者が多いわね」


「スケールでかいな」


 そんな話をしているうちに使い魔召喚は始まり、並んだ生徒が順番に魔方陣まで行くと契約石を魔方陣の中央に置き、その上に手の平を重ねるように置く。

 魔力を流しているのか、手の置いた部分を中心に地面に描かれた魔方陣が輝きだした。


 光が収まった後には、生徒に応じて様々な使い魔が姿を見せる。

 透き通った虫の羽を持つ少女が、炎を纏う馬が、冷気を放つ狼が、宙に浮かぶクラゲが、四角いサイコロ状の岩が。

 脈絡が無いと言うか、本当に喚び出す者によって種も様々だな。


 だが、まるでゲームや御伽噺の中に入ったかのような、カオスな光景に目が奪われる。

 地球ではありえない生き物たちの姿を見て、やはりここは異世界なんだと今更ながら強く意識した。


「……ヒビキ?」


 ん? おっと、思ったより長く見ていたらしい。

 いつの間にか列は進みサラの番がそこまで来ていた。


「悪い悪い……あぁ、そうだ、ちょっと質問なんだけど。使い魔って召喚主の魔力属性に合った奴が出てくるんだよな? サラの得意属性って何なんだ?」


「私は火・氷・闇の三つよ」


 ……三つ? 三つって、相当レアな筈じゃなかったっけ?

 流石は王族の血統と言うべきなのかもしれない。


「ヒビキの属性は? 今日測定したはずよね?」


「俺は火と風の二つだ」


「あら、二つなんて中々良いじゃない」


 お前さんが言うと嫌味に聞こえるって。

 と言っている間にサラの番がやって来たようだ。


「それじゃ、行ってくるわ」


 サラは魔方陣の前に進み出て、イルとシルフィオナに軽く挨拶すると早速契約石を置いて魔方陣を発動させる。

 魔方陣が光を放ち……って、今までと違ってドンドン光が強くなっていく!


「くっ、眩し……っ!?」


 腕で目を庇っていると、唐突に発光がは消えた。

 視力を取り戻した目で魔方陣を見たとき俺は……いや、俺を含めたクラス全員が息を呑み言葉を失すのがわかった。


 魔方陣に鎮座する巨大な影がその理由だ。

 漆黒の鱗に覆われた巨躯、強靭な四肢、大空を飛翔する翼、、口から覗く鋭利な牙。


 その姿はまさしく、ファンタジーの金字塔とも言うべき存在。


「ど、ドラゴン……」


 そう、誰が言ったか分からないがそのドラゴンだ。


『小娘、我ヲ喚ビ出シタノハ貴様カ?』


 し、しかも喋ったーーー!?


「ブラックドラゴンの古代種かよ、とんでもねえな……」


 信じられねぇ、と後ろに並んだ生徒が呟く。

 ブラックドラゴンはともかく、古代種の意味が分からなかったので振り返って尋ねてみた。


「知らねぇのかよっ……って、先輩留学生だっけか。古代種ってのは神話の時代から続く竜種の血統で、アイツみたいに喋ったり魔法使ったりする、高度な知能と高い魔力を持つドラゴンの事だよ」


 それまた、とんでもない以外の言葉が出ないな。


「ええ、貴方を喚び出したのは私よ……それで、契約してくれるかしら?」


 自分より遥かに巨大な相手を前にしても、サラは自信に満ちた態度を崩さない。

 いや、むしろ不敵に笑っていてちょっと怖い。


『不遜ナ輩ダナ、小サキ者ヨ。シカシ、ソノ媚ビヌ姿ハ気ニ入kツタ。小娘ノ寿命ナド、我ニトッテ瞬キノヨウナモノ。シバシノ間、オマエノ召喚ニ応ジテヤロウ。』


 その言葉と同時にサラの契約石が光を放ち、透明だった石が光沢を放つ黒色に塗り替わる。


『デハ、サラバダ』


「あら、もう行っちゃうのかしら?」


『見世物ハ好カヌ』


 その言葉を最後にドラゴンの巨躯は光に包まれ、俺達の前から姿を消した。

 ……ちょっとホッとしたのは俺だけじゃないはず。

 あんなでかくて威圧感あるのが傍に居たら、授業どころじゃない。


「思ったより大物が来たわね」


 戻ってきたサラはまるで、それすらも想定内だと言わんばかりの態度だ。

 だが周囲の生徒は騒然とし、他の魔方陣の生徒も含めてこちらを興味深げに見詰めているが。


 サラはその視線を一睨みで蹴散らすと、


「ヒビキの番よ、期待しているわ」


 なんか凄い無茶振りしやがった。

 あんなとんでもない奴の次に、一体何を出せば期待に応えられるんだ……


 しかもサラの台詞の所為で、何故か周りから妙に期待に満ちた視線で見られるし。


「ヒビキ君なら大丈夫です、頑張って下さい!」


「今度も面白いのを期待してるぞ、ふはははははーーっ!」


 魔方陣までとぼとぼ歩いていくと、シルフィオナとイルの激励の言葉が……いや、それは俺を追い詰めているだけと知れ。


「……ボチボチ頑張るさ」


 虫とか召喚されたら嫌だな、後は意志疎通し辛いやつとか。

 只でさえ、テンプレ通りなら事故とか戦闘とか有りそうなのに……まぁ、それは俺が主人公の場合であって、まず大丈夫だろうけど。


 透明な契約石を魔方陣に置き、そこに右手を重ねて魔力を注ぎ込むと魔方陣が光を放った。

 うーん、余り期待しなようにしたいんだが、自分でやるとやっぱり期待してしまうのが人の情。


 高揚する気分を持て余しつつ待っていると、それはついに俺の前に姿を現した。


 魔方陣に鎮座する、つい先程見たのと酷似する姿形。

 白銀の鱗に覆われた体躯、強靭な四肢、サファイヤの様な青い瞳、大空を飛翔する翼、、口から覗く鋭利な牙。


 その姿はまさしく、ドラゴン。


「ど、ドラゴン…………だけど、ちっさ!」


 確かに、確かにその姿はドラゴンだったが……子犬サイズだった。

 因みに本人(本竜?)は勇ましく鳴いているつもりの様だが、


「キュ~~!」


 ……っと、大変可愛らしい鳴き声にしか聞こえない。


『か、可愛い~~~~っ!』


 しかし女子たちのハートは射止めたらしく、黄色い歓声が上がる。

 どの子も幼竜を見てウットリとしている……何処の世界でも、女子の可愛い物好きって変わらないな。


 ま、俺も嫌いじゃなと言うか、むしろ割りと好きかも知れない。

 少なくとも巨大な虫とかスライムとか凶暴な奴とか、そんなのとは比べるまでも無く良いに決まっている。


「よーし、チビ。こいこい」


 手招きして近づいてきた幼竜を持ち上げ頭とか顎とかを撫でてやると、気持ち良さそうに鳴いて体を擦り付けて来た。

 なかなか愛い奴じゃないか。


「良かったら俺と契約してくれるか?」


 契約……ええと、どうするんだっけか?


 話は出来ないっぽいし、戦って認めさせるとかいうパターンでもないっぽい。

 だとするとあれか名付けだろうかと考えていると、幼竜は一声鳴いて指に噛み付いてきた。


「っぅ!? 何するんだ……あ、もしかしてこれで契約完了?」


 最初は驚いたが、なにやら自分の魔力が幼竜に流れるような感覚がする。

 取り敢えずこれでいいんだろうか?


「可愛いですね、ヒビキ君。ちょっと撫でても良いですか?」


「ふはははははー、なかなか興味深いやつを出すではないか!」


「興味深いって? ドラゴンだからか?」


 目をキラキラさせるシルフィオナに幼竜を渡してイルに尋ねる。


「教えてやりたいのだが、後が詰まっているからな。サーフィラ嬢に聞くと良い。ふははははははーー!」


「はいはい、そうするよ。シルフィオナ、そいつを……って」


 シルフィオナから幼竜を受け取ろうとした、幼竜はシルフィオナの大きな胸の間で挟まれジタバタしていた。

 なんてうらやまけしからん!


「むぅ、残念です。後でまた抱かせてくださいね」


 それには敢えて曖昧な笑みで逃げ、後ろの生徒と入れ替わりでサラのところに戻ってきた。


「ただいま、取り敢えずは上手くいったのかな? ところでこいつって、何て名前のドラゴンなんだ?……ドラゴンだよな?」


 銀色だから、シルバードラゴンとかが妥当かな。


「……貴方には驚かされるわ。ヒビキ、その仔は星竜(スタードラゴン)よ」


星竜(スタードラゴン)、聞いたこと無い言葉だ。


「星竜は属性が違うドラゴンの間に生まれる混血よ。例えば火竜種や水竜種ね、ドラゴン同士でも系統が違うと、なかなか子供が出来ないと言われるわ」


「へぇ、それじゃこいつは珍しいんだな」


「キュ~」


 手にずっと持っとくとちょっと重いので、頭の上に乗せてみる……首がちょっと痛いような。


「珍しい以上よ。仮に生まれても、生まれつき体が弱くて長生きしないのよ。極稀にそれを克服した固体が現れる事があるらしいけど……それが多分その仔の事ね。星竜なんて文献でしか見たこと無いけど、この目で見る日が来るとは思わなかったわ」


 珍しいどころか、随分と貴重な種なのか。

 まるで三毛猫の雄、いやツチノコとかチュカカブラ辺りの方が近いのかも知れない。


「その仔も二属性持ちのはずだから、風か火は持ってるはずよ。幼生体でもドラゴン、親の性質を受け継いでいるとなると、結構な能力を持って居ると思うわ……ところで、ヒビキ」


 見た目に寄らず凄いんだな、そう思いながら頭に乗った幼竜を撫でていたら、なにやらサラがらしくなく上目遣いで俺を覗き込んできた。


 思わず仰け反りながらも胸が高鳴ってしまう俺。


 サラぐらいの美少女にそんな表情されると、男としてどうしようもなくなる。

 いつも強気のクール娘だからギャップが……違う違う、思考が斜め上に跳んでる。


「え、あ、なに? どうかした?」


「ええとね? その……」


 尚も上目遣いを止めず、更に顔を赤くしてモジモジする荒業まで繰り出すサラ!

 思わずお持ち帰りしたくなってしまいそうになる。


「そのね……その仔、私にも抱かせてくれないかしら?」


 頭の上に乗っかってる幼竜を指差して言う。

 …………ええ、わかってましたよ、そんなオチだってことは。


「どうぞ」


 頭から幼竜引き剥がしてサラに渡す。

 受け取ったサラは幼竜を撫でると溢れんばかりの笑顔を見せて構い始めた。


 ……ちなみに周囲の男子が満面の笑顔というレアなサラを目にして、雄叫びを上げたり『ツンデレ! ツンデレ!』と叫んでるんだが。


 大丈夫か、このクラスの男子?


「ああ、そうだ。折角だから名前も付けておくか」


 屈み込んで更に抱かれた幼竜と向き合う。


「そうだな、シンプルに……ギンで言いか」


 自分のネーミングセンスに欠片も信頼を置いてないので、銀色だからギンと安直な名前を付けてみた。

 これなら魔具の銀月とお揃いな感じもするしな。


「ヒビキ……」


「分かってる、分かってるから何も言うな!」


 サラの憐みの視線から目を逸らす。

 当の幼竜はと言うと、最初は首を二回三回と捻っていたが、やがて大きく翼を広げながら『キュウーーっ!』と勇ましく鳴いた。

 どうやら気に入って貰えたようだ、何よりだ。


「これからよろしくな、ギン」


「キュ!」


 こうして、俺の異世界学園生活に新たな仲間が加わるのだった。

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