第97話「魔法少女ウリコ-2」
さて、子供たちが遊び疲れたところで俺は子供たちを一か所に集めて寝かせつけ、寝かせつけた所で村の大人たちにウリコの件についての事情聴取である。
と言っても村に不審な人間が出入りしていなかったかどうか程度だが。
で、聞いたところ。
「んにゃ。ここ最近は余所者は来とらんで」
「んだな。来ても森に用が有る冒険者ぐらいだ」
「その冒険者も身元がはっきりしてる者ばかりだべしな」
との事で怪しい人間は特に来ていなかった模様。
ただ、ここで一人の村人が何かを思い出したかのように手を叩く。
「一番怪しいのにしても……ああ、あれだべ。この前のロウィッチとか言う商人は怪しかったべ」
「ああ、あれだべか。妙にヒラヒラしだ服を着て『魔法少女は何処だ~』とか言いながら村を徘徊しとった」
「声をがげだら、普通になっただから警戒だけにしておいただけどな」
「ほう……」
そしてそれに釣られるように出てくる怪しい怪しいと言う言葉。
でもすみません。マウンピール村の皆さんに言っておきますがその人はただ魔法少女が好きすぎるだけの変態で『YES!魔法少女! NO!タッチ!』の安全な変態なんです。害はありません。
同列視されたくないので口には出さないけどな。
「うーん。それ以外だと?」
「それ以外は居ないべ」
「んだな。後は誰も彼も身元がしっかりしてたべ」
「そもそもそのロウィッチとか言う商人も身元はしっかりしてだしな」
うーん。どうやら他に怪しい人間は居なかったみたいだな。
そもそも村に害を為すような相手が居ればマジクが始末するか俺に連絡が来るか……。
となるとやっぱり今回の件についてはウリコ自身に確認を取るしかないか。
「参考になっただか?」
「ああはい。どうもです。それじゃあ、俺は失礼しますね」
「今日はありがどなー」
「じゃ、オラたちも帰るべ」
「んだなー」
そして俺はウリコを連れてタンゴサックの家にまで行き、タンゴサックとキミコさんからも同様に話を聞いたがやはり心当たりがないとの事だった。
で、軽く食事を摂りつつ話を進める。
「自力で魔法を使えるようになるっでのはそんなに拙い事なのか?」
「流石に完全にゼロから独力で覚えたとなると拙いかな。俺も似たようなものではあるけれど完全な独力では無かったし」
「あらそうなの?私はてっきり最初から一人で新しい魔法を作るような凄い魔法使いだと思っていたのだけど違ったのね」
「正直、完全にゼロからとなるとどれだけ才能があっても厳しいと思いますよ。魔法ってのは感覚的な部分が多いですけど、理論的な部分もありますから」
キミコさんにそう返しながら俺は採りたての果物を絞ったジュースを飲む。
うん。沢山の魔力が籠ってて美味しいな。
「んー、お兄ちゃん?」
「まあ、そう言う事ならウリコに聞いてみてくれだべ。オラたちも気になるだ」
「そうね。私たちも気になるし聞いてくれるかしら?あっ、私はトウガの様子を見てくるから結果は後で教えてね」
「分かりましたー」
と言うわけで丁度ウリコも起きた事だし、二人からも頼まれたので聞いてみるとしよう。
ちなみにトウガってのは一年ぐらい前に生まれた弟で、幸い……と言うべきなのかは分からないがトウガは魔力量的に普通の子っぽいので内心ではちょっと安心もしたりしている。
流石にウリコレベルの魔力持ちが二人になったら色々と拙いしな……。
「ウリコーこっちこーい」
「あーい」
ま、それはともかくとしてウリコに話を聞くために俺はウリコを手招きで呼び、蔓の組み方を変えて椅子っぽくしたところに座らせる。
それにしても赤ん坊の頃も可愛かったが、4歳になった今も可愛いなぁー。しかも、これで既に一流の魔法使い並みに魔力があるって言うんだから本当に自慢の妹です。
ああそうだ。とりあえずマウンピール村にやってきた時に村人全員から不審に思われたロウィッチは間違いなくウリコを不安がらせただろうから後でシメよう。
と、いかんいかん。ウリコから話を聞かなければ。
「ウリコ。今日石を浮かせていたけど、何処であんなの覚えたんだ?」
「アレのこと?」
「そうそう。アレの事アレの事」
俺はウリコをあやしながら念動魔法について聞いていく。
「アレはねぇ。キレーなお姉ちゃんにおしえてもらったの」
「お姉ちゃん?」
「そう。キレーなお姉ちゃん。ウリコが見たこともないよーなキレーでビラビラしたふくをきててね、キレーな麦みたいなかみのけだったの、それでおかおもすごくキレーだったんだよ。まるで女王さまみたいだったのー」
「ふうむ」
ウリコは見ていて微笑ましい動作をしつつ4歳児故の拙い語彙力ではあるが、少しでも正確に俺へとそのキレーなお姉ちゃんの事を伝えようと頑張ってくれている。
が、微妙に分からない。ウリコの言葉からだと綺麗な姿の女性としか分からないからしょうがないのだが。
尤もそこまで綺麗な女性ならロウィッチと同じように村の人間にも見られてるはずだよなぁ……どうして誰も見てないんだ?
「そのお姉ちゃんとは何処で会ったんだ?」
「オネンネしてる時!すごくキレーで金ぴかなおめめだったんだよ!」
「…………」
「それでね、それでね……」
ウリコははしゃぎながら女性と会った時の事を話しているが……ああうん。金色の目に夢の中で会ったと言う話で誰が教えたのか確定したわ。
ウリコに魔法を教えた人物。それは間違いなく……
リーン様だ。
とりあえず次に会えたタイミングで問いただそう。うん。タンゴサックたちには微妙に事実を捻じ曲げた上で問題ないと伝えるしかないけど。
ちなみにパンプキンとウリコの弟であるトウガ君ですが、魔力量的には普通ですがその場に居るだけで周囲の魔力濃度を調節して農作物の成長を良くすると言うある意味では上二人以上のチート能力持ちだったりします。
普通なんて無かったんや!




