表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/163

第96話「魔法少女ウリコ-1」

 さて、クレイヴたちが出発した翌日。

 クレイヴたちが調査に向かっている数日の間、ただ無為に帰ってくるのを待っていてもしょうがないという事で俺はマウンピール村にやって来ていた。

 目的は勿論……


「ウリコー!」

「お兄ちゃんだー!」

 声を掛けられたウリコが一緒に居たスパルプキンを振り切って俺に飛びついてきたので、俺はウリコを受け止めてその場でジャイアントスイングの要領でくるくると回る。

 と言うわけで俺がマウンピール村に来たのはウリコに会うためである。


「ゾクチョーこんにちはです」

「おう、変わりは無いか?マジク」

「いつも通りですよ」

 と、ここでウリコと一緒に居たスパルプキンも俺の下に辿り着いて俺に挨拶をしてくれる。

 彼の名はマジク=タイガと言い、ウリコの遊び相手兼護衛役兼教育役を務めてもらっているスパルプキンであると同時に、現状唯一俺の弟子と言えるほど共鳴魔法に精通している子である。

 そしてタイガと言う名が別に付いていることから分かるように前世の名と記憶の一部を思い出している子でもある。

 と言ってもマジクが覚えている事は精々が自分の前世の名にマジク以外には使えない効率のいい魔力回復の仕方に、後は朧気に家族や周囲の事を覚えている程度らしいし、その覚えている記憶にスキルとかいうものも有った事から察するに俺の前世とはまた別の世界っぽいから前世談義にもならないが。

 ま、それでも他の子に比べて利発で考え方にも変な偏りが無いから、ウリコの傍に居てもらっているんだけどな。

 ちなみに覚醒したのは一年ほど前の事である。


「お兄ちゃん。きょうはなにするのー?」

「今日は一日居られるから何でも出来るぞー」

「なら、いっしょにあそぶー!」

「付き合うです」

「うし。それじゃあ日暮れまで皆で遊ぶかー」

「わーい!」

 で、その日はウリコの望みも有り、幸いな事に収穫期も過ぎていて他の子たちの手が空いていたのでマウンピール村の子供たちを全員集めて一緒に遊ぶこととなった。

 ……。ああはい。俺は後で手伝う事になりました。一目見て大人だって分かるからしょうがないね。



----------------



「とーう!」

「ウリコちゃん飛び過ぎー!」

「うーむ。やっぱり一人だけレベルが違うな……」

「すごーい!」

「魔力強化しすぎですよー!?」

 でまあ、俺がお目付け役になって村の子供たち全員で鬼ごっこをして遊び始めたわけだが……やっぱりウリコだけ身体能力のレベルが違います。

 いやまあ、保有している魔力量もそれを運用する能力もウリコは同年代の子供どころか大人と比べても多いから当然と言えば当然なわけだけど、それでも4歳児なのに2m近くジャンプできるのはな……。

 なお、俺は空を飛べるので比較しても意味は無いが、身体強化能力に優れているカケルやゴーリキィでも軽装備かつ助走無しで垂直に飛ぶのは1mちょっとが限界で、マジクも1m飛べればいい方である。

 まああれだ。ファンタジーだからって無視できる物理法則にも限度があるって事だな。魔力量が多いと無視できるレベルも広がるけど。


「ウリコちゃんアレ見せてー」

「あーい!」

「ん?アレって?」

「見た方が早いですよ」

 と、ここで鬼ごっこに飽きたのかウリコを含む一部の子が別の遊びを始める。

 んー、どうやらウリコの掌に魔力が集まっているみたいだな。そして掌の上には小石が一つ。


「むむむ~うけ!」

「「「スゴーイ!」」」

「へっ?」

 そしてウリコが一言発すると同時にウリコの掌の上に有った小石がゆっくりと宙に浮かぶ。

 この現象が示すのはつまり……『浮遊(レビテーション)』の魔法をウリコが既に使えるという事である。

 あ、あれー?俺はウリコに魔力の使い方を教えた覚えはあるが、魔法の使い方まで教えた覚えは無いんだけどなぁ?


「マジク?」

「僕だって教えてませんよ。つい数日前に突然使えるようになったんです」

 俺はマジクの方を向くが、マジクは気まずそうに目線を逸らすとそう呟く。


「…………」

「……。本当に教えてませんって」

 しばらくの間俺はマジクを睨み続けるが、どうやら本当にマジクはウリコに魔法を教えていないらしい。

 てーことはアレか。俺の【ガストブロー】の様に自力で編み出したか、もしくはマジクの知らない内に正体不明の魔導師が現れてウリコに教えたという事か。

 ……。自力だと思いたいがマジクの警戒網を掻い潜ってウリコに接触でき、かつウリコに魔法を教えられそうな奴に二人ほど心当たりがあるから何とも言えない……。

 後で、ウリコにきちんと確認しておくか。


「「「きゃっきゃっ!わいわい!がやがや!」」」

「それとゾクチョー?」

「何だ?」

「ウリコちゃんが使ってるのは浮遊じゃなくて念動力(サイコキネシス)です」

「いけー!」

「「「わーい!」」」

 マジクがそこまで言ったところでウリコが浮かせていた小石がゆっくりと水平方向に動き出し、子供たちがそれを追いかけ始める。

 どうやらウリコの動かす小石を捕まえる遊びらしい。

 と言うか浮遊じゃなくて念動力かー、難易度で言えばもうワンランクアップだなー、アハハハハ。


「さいですかー」

「……。突っ込みませんよ?」

「えっ!?ちょっ、今のはボケたわけじゃ……」

「僕は何も聞いてませんし知りませーん」

「あっ、こら待て!マジク!!」

 そして思わず呟いた言葉を駄洒落だと思われた俺はその誤解を解こうとしたが、誤解を解く前にマジクは子供たちの輪に混ざってしまって俺の立場的に追いかけまわすわけにはいかなくなってしまった。

 ぐぬぬぬ。おのれマジクめ……。

マジクは転生者です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ