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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第95話「輪廻の卵村の日常-3」

「えーと、まずはこれだな」

 そう言うとクレイヴは数ある羊皮紙の中から一枚を手に取って広げる。

 そこには所々から木の枝や根、葉などが覗いている石造りの建物が描かれていた。


「これは?」

「今回、調査隊が発見した遺跡で、現地で調査隊の一人が出来る限り正確に実物を模写したものだそうだ」

「精度の方は?」

「これを描いたのはレナルドって言う元々絵が上手い奴だし、精度に関しては信頼してもらっても構わない。そこは保証する」

「ああ、B級冒険者なのに絵描きで生計を立てた方が良いんじゃないかって言われてしまう彼ですか」

「そう、そいつ」

「なラ、信頼は出来ル」

 ふむ。クレイヴ、タックスさん、ゴーリキィの三人が信頼できると言うレベルならこの絵の内容は信頼しても良さそうだな。

 と言うわけで俺は改めて絵の方を見て、全員が絵の信頼性について納得した所でクレイヴが話を進める。


「さて、今回調査隊が調べた場所はサンサーラエッグ村から北東の方角に一日から二日程移動した場所にあった。で、本格的な調査をするには装備に難があったから調べたのは外周りだけだという事を先に言っておく」

「分かった。話を進めてくれ」

 俺はクレイヴの言葉を聞きながらも絵の方を注視し、そして絵に描かれている建物について何かしらの違和感を覚える。


「この建物の正体や年代については俺や調査隊にその手の知識が無かったから分からない。が、今回調査隊に同行してくれたスパルプキン……アンクスによるとこの建物の周囲は他の場所に比べて魔力濃度が濃いらしく、その魔力の影響なのか強力な魔獣が生息している可能性があるそうだが代わりに有用な素材を入手できる可能性も高いとの事だ。現に今回調査隊が建物周辺から持ち帰った各種素材はサンサーラエッグ村周辺にある同種の物よりも良質だった」

「ふむ。それは中々に美味しい話ですね」

「冒険者として心躍ル」

「でも、建物の詳細が分からないと色々と怖いわね。何が潜んでいるか分かったものじゃないし」

「ブンブブ、ブブブン(建物周辺の魔獣も凶暴そうですね)」

 クレイヴは俺たちの表情を窺いながら話を進める。

 で、その間も俺は絵を見続け、違和感の正体を確かめようとする。


「そうだな。実際、調査隊によれば建物周辺の魔獣はサンサーラエッグ村周辺の魔獣よりも体内に保有する魔力が多くて強力だったそうだ。そう言う事情も有って外周の調査をするだけに留めたらしいしな。それで……」

「あっ!?」

「「「!?」」」

 そして俺はやっと違和感の正体に気づく。

 そうだよ。この建物の何がおかしいって……


「クレイヴ。この建物は石で出来ているんだよな?」

「あ、ああ。調査隊によれば石で出来ているんじゃないかって話だった」

「だったら、何で繋ぎ目が無いんだ?この世界の建築技術だと石造りの建物なら確実に繋ぎ目があるはずだろ?」

 俺がクレイヴに繋ぎ目の事を問いただすと、クレイヴは一度困った表情を浮かべてからこう言う。


「その点については調査隊も不思議に思ったらしい。それで今度は前時代に詳しい学者を連れて行こうって言う話になっていたんだよ。で、俺から皆に聞きたいのはこの物質に心当たりがあるのかという事と今までよりも大規模になる調査隊の支援だったんだ」

「ああなるほどな。だったら、俺はこれに近い物質に心当たりがある。こいつはコンクリートだ」

「「「こんくりーと?」」」

 俺の言葉にこの場に居る全員が頭を傾げる。


「俺の前世では建物によく使われていた素材だ。作り方とかは分からないが、扱いやすいのか大きな建物なら大抵は使われてた」

「ん?でも、今はそのコンクリートやらの知識は残ってないよな」

「ああ、だから少なくても前時代。下手をすればもっと前の時代に建てられた可能性もあると思う。クレイヴ、こりゃあ仮に調査をするなら並の学者だと歯が立たないかもしれない」

「あー、分かった分かった。調査隊を組む時はそこら辺まで考慮しておこう」

 クレイヴは後頭部を掻きながら俺の言葉に返答する。

 恐らくだが前々時代などと言うそこまで古い物だと言う考えは無かったのだろう。

 実際、現在このセンコ国ではコンクリートについては影も形も無いので前時代の物だとは思ってもそれ以前の物だとは思わないのかもしれないが。

 ただ、この辺りの話はセンコ国が成立する以前の話になるのだが、何でもセンコ国が成立する以前に当時栄えていたあらゆる文明は滅びの危機に瀕したそうで、その際には多くの知識が失われたらしい。

 そして、このような滅びは何度も繰り返し起きている事も一部の学者の間でのみ確認されているそうだ。

 で、俺としてはこの滅びを起こしているのが『陰落ち』でないかと思っており、実際前時代の終焉は『陰落ち』によって起こされた物である可能性が高いのが先日の風精霊たちの話から分かっている。


「なんて言うか楽しそうだな。お前」

「ん?ああ、すまん。とりあえずサンサーラエッグ村としては全面協力は確定だわ。これはどうしても詳しい事が知りたい」

「まあ、協力してくれるなら構わないけどな」

 どうやら顔がにやけていたらしくてクレイヴから指摘される。

 でもしょうがない。こんな近くにしっかりと原型を残している=『陰落ち』について何か分かるかもしれない建物があったのだからそりゃあ興奮もする。

 まあ、話の流れを乱したのは悪いと思うがな。


 そして一月ほど経った後、準備を整えたクレイヴとゴーリキィを含む調査隊が学者を数人連れて遺跡調査へと向かう事となった。

 さて、どんな結果が出るかが今から楽しみだ。

実際は見た目がコンクリートによく似ているだけでコンクリートとは限りません


04/29誤字訂正

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