第93話「輪廻の卵村の日常-1」
「ヒュロロロォォ!サンサーラエッグよ!私は帰って来た!!」
と言うわけで何故か叫ばなくてはいけない気分になったので、俺は叫びつつサンサーラエッグ村の広場の中心に上空100m程から急降下して地面直前で減速して着地する。
気分はアレだな。ヘイロー降下ってやつだ。高さが足りてない気もするが。
「ふっ、待たせたな!」
「ゾ、族長ダー!?」
「ゾクチョーガ降ッテキタゾー!?」
「帰ッテクルノガ遅イ族長ダ!?」
で、着地した俺に対して周囲からスパルプキンたちの声がかかると共に村に滞在している冒険者たちがざわつく。
なお、三年経過して分かったことだがスパルプキンたちの言語能力にも身体能力や魔法能力と同じようにやはり個人差があるようで、普通の人間のように発音できるスパルプキンもいれば、どうしても発音に癖の様な物が現れてしまうスパルプキンも居るようだ。
そんなわけで村の外に出ているスパルプキンは言語に癖が少ない子が中心である。と、これは今関係なかったか。
「まとめ役たちはどこに居るよ?」
「集会所ー」
「話し合イ中」
「分かった。あっ、これ王都土産な。みんなで仲良く分けろよ」
「「「ハーイ!」」」
俺は今回の依頼で得た報酬で買ってきたセンコノト土産の袋を近くに居た子に渡すと、村のまとめ役たちが居ると言う集会所に向かって三年間の間に広がった村の中をゆっくりと飛ぶ。
集会所は元々俺の住んでいた建物があった場所に、村のシンボルである卵形の岩を祀る神社モドキな形に建てられた建物で、現在は話し合いの場としてよく使われている。
なお、大きく動かすのは面倒だったので俺の家は集会所に併設される形になっている。何かある時が本当に便利です。
「パンプキンだ。帰ったぞー」
で、集会所に着いたので俺は一度戸をノックしてから中に入る。
「あら、お帰りなさい」
「ブンブブー(お帰りなさいませ)」
「お帰りでス」
「ああ、帰ってきましたか」
「お疲れさん」
集会所の中に入ると車座に座っていた五人……精霊であることを隠すために目深にフードを被って仮面を付けたミズキ、会話用の文字盤を手元に置いたリーダー、他のスパルプキンよりもしっかりした造りの鎧を着たゴーリキィ、いつもと変わらない格好をしているタックスさんとクレイヴが俺の方を向く。
「話し合い中だったのか。すまないな。邪魔をしたか?」
「問題ないわ。パンプキンが何時まで経っても帰ってこないから王都に使いをやるかどうか話し合ってただけだし」
そう言うミズキは明らかに怒りのオーラを発している。
ああうん。やっぱり心配を掛けちまったみたいだな……。
「あー、すまん。ちょいと死にかけてな。皆には心配をかけた」
「破壊神とやり合ったんだってな」
俺の言葉にクレイヴが事前に聞いていた話を思い出すように補足の言葉を繋げる。
「ああ、よく生き残ったもんだと自分でも……」
「そう言う話じゃないでしょうが!」
「「「!?」」」
で、そしたらいきなりミズキが声を張り上げた。
えーと、何を怒っておいでで?
「何を怒ってですって……アンタが連絡も寄越さずにそこら辺をほっつき歩いている間、私たちがどれだけ心配したと思ってんのよ!こんのバカボチャが!!」
「うえっ、ちょっ、そんなに激しく揺さぶらないでミズキさん。俺、病み上がり!?」
そして疑問の言葉を投げかけたら激しく前後にシェイクされながらもっと厳しく怒られました。
いやまあ、連絡の一つも寄越さずに勝手に王都に行って死にかけたのは悪いと思ってるけどさぁ……って、周りは何でニヤついてんの?えっ?訳分からん。
とりあえずここはミズキに土下座をして何とか許してもらおう。そうしよう。
「はぁ……このバカボチャは全く……もういいわよ」
「はい。重ね重ねすみませんでした」
「まあ、めお……ゴホン。この話はそこら辺にしておいて話を進めるか」
「ン。まずは報告」
「そうですね。それが良いでしょう」
「ブンブブー(そうですねー)」
で、しばらくの間俺が土下座し続けることによってミズキの怒りが解けた所でクレイヴが司会役になって話が進められる。
なお、この場に集まっている6人は村の諸々に関するまとめ役であるが、それぞれ担当が違っている。
そして、具体的には誰がどういう担当になっているかと言うとだ。
俺:村長、クヌキ伯爵を始めとして村外のお偉いさんとの交渉、共鳴魔法関連
ミズキ:水、衛生関連
リーダー:ハンティングビー、建設、蜜蝋武具関連
ゴーリキィ:スパルプキンたちの若頭、狩猟、農業関連
クレイヴ:村に滞在する冒険者、リーンの森の調査関連
タックス:行政関連
と、なっている。
まあ、実際には責任者が誰それになっていると言うだけで、農業なんかはゴーリキィだけじゃなくてミズキもリーダーも生育には関わっているし、収穫後にはタックスさんにクレイヴと俺も関わってきたりで結局全員が関係してくるしな。
所詮こんなのは誰に相談すればいいかとかそう言うのを分かり易くするための区分けに過ぎない。
「それじゃあ、俺が居ない間に何があったのかっていう報告を頼む」
「分かっタ。それじゃあ、まずは俺からデ」
そしてゴーリキィの報告から話し合いは始まった。
何時の間にやら役割分担が出来ています。
04/27誤字訂正




