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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第92話「神々の密談」

今回、南瓜は未出荷です

「ふんふんふーん♪」

「ワンワンワフフーン♪」

 だだっ広い草原の真ん中で鼻歌を歌いながら狼耳の少女がペットと思しき狼にブラッシングをしている。

 草原にそよ風が吹き、青空をゆっくりと白い雲が横切っていくその光景はとても長閑であり、この空間全体でゆったりと時間が流れていた。


「うーん。綺麗になったねぇ。モヤ助」

「ワン!」

 ただし、ブラッシングされている狼が伏せの姿勢であるにも関わらずその体高が4mを超えるような巨大狼である点を除けばだが。


「イズミ。少しいいか?」

「ん?モル姉さん?」

 と、ここで突如としてこの草原には不釣り合いな金属製の扉が空間を切り裂くように出現し、扉の先から襤褸の様なフードマントにガスマスクの様な物で顔を隠した女性……『管理者』が現れる。


「イズミに何か用?」

「ああ、少し探して欲しい物があってな」

「探し物ですか」

「そうだ。本当は私やあの女が探すべきなんだろうが、私の探索能力は知っての通りだしアイツには働く気は無いようだしな。全く、自分で作った物だと言うのにアイツは……」

 狼耳の少女……イズミは内心でまた始まったかと思いつつモヤ助と呼んでいた狼の毛皮に身を沈めてモフモフと毛皮の感触を確かめながら『管理者』が一人でし続けている愚痴を聞き流す。

 そしてしばらく時間が経って一通りの愚痴を言い切ったのか『管理者』が溜息を吐いたところでイズミが切り出す。


「それで結局イズミに対しての用事は?それからオリ姉さんには頼まなかったの?」

「ん?ああ、すまないな。つい愚痴ってしまっていたようだ。依頼についてはこっちの紙に纏めてある通りで、『千界通』の方には既に協力をしてもらっていてその結果がそこの紙に書いてある世界だったんだ」

 イズミは『管理者』から一枚の紙を受け取るとその内容に目を通していく。

 なお、見た目は普通の上質紙であるが実際には一種の情報記憶媒体であり明らかにその紙一枚には納まりきらない様な量の情報が記載されている。


「ふむふむ……ヤバくないですか?これ」

「ヤバい。だから私もアイツに働けと言ったのだがアイツは聞く耳を持たなかった」

「イヴ姉さんらしいと言えばらしいですね……」

 そして受け取った紙の内容を一通り見たイズミはその内容に内心では冷や汗を掻きながら、記載されている情報の危険度について共通の認識を持てているかを確かめてしまう。


「それで『千界通』曰くこの世界にある事は確かだが、隠蔽を目的とした結界が世界全体に張られているためにそれ以上は分からないとの事だ。だから今回はお前に頼む事とした」

「なるほど……」

 イズミは『管理者』の言葉を聞きながら紙に書かれていた内容について反芻をする。

 そしてその中で彼女は一つの項目……特にとある一文について特に頭の中で何度も繰り返す。


『当世界では浄化と言う名目の元、多数の世界から魂を集めては放流をしているのが確認できた。そのため、当世界には輪廻転生に関する権能を所有する神が最高神として存在している可能性が高い』


「魂を集める……か」

「やる気になってもらったようで幸いだ」

「うん。行かせてもらうよ。もしかしたらイズミの探し物も有るかもしれない」

 『管理者』の言葉にイズミは屈強な獣を思わせるような獰猛な笑みを浮かべて見せ、モヤ助と呼ばれた巨大な狼が立ち上がる。


「では、よろしく頼むぞ」

「うん。行くよモヤ助」

 そしてイズミとモヤ助は『管理者』が入って来るのに使ったのと別のゲートを生み出すと、その先に有る巨大な橋の様な物がかけられた空間へと向かった。



■■■■■



「これは確かなのか?」

「は、はい。間違いありません」

 所変わって多次元間貿易会社コンプレックスの一室。

 そこではスパインが扇情的な衣装に身を包んだ水色の髪に紫色の瞳を持つ女性と緊張した面持ちで正対していた。


 あ、有り得ねぇ!?確かに直接連絡をしろとは言われたが、社長の第一級分体が出張って来るとか異常事態にも程があるだろうが!?


 そして内心では本気でビビって命の危機すらも覚えていた。彼の立場や実力を考えれば当然であったが。


「そして今回の件での対価がこれか」

 女性……多次元間貿易会社コンプレックスの社長の手には一つのリボンが握られていた。

 そのリボンにはスパイン視点では恐ろしい程の魔力が込められており、誰の目から見ても神の御業によって作られたことが明らかな神宝の一種だった。


「着用者に強力な再生と治癒の力を与えるリボンか。これ一つで自惚れが強い者なら神の子でも名乗りかねんな」

「は、はいそうですね……」

 スパインは明らかにビクつきながらも社長に対応する。


「まあ、これについては適当なところでオークションにでも出すか、必要な時に備品として貸与すればいいか。問題はこれだけの物を受け取ってしまってはこの前の仕事量では釣り合わないと言う点だな。となればしょうがない。幾つかこっちで便宜を図っておくか。ヒショー」

「お呼びで?」

「結界班に通達。対象を下級神級に限定して違和感を覚えられない程度のレベルでR05-I14-C01世界の周囲に時相遷移結界を張れ。それと観測班にも通達。R05-I14-C01世界に張った時相遷移結界に接触した神の正体について調査し、ロウィッチ経由で『輪廻神』に連絡をしてやれ」

「下級神限定でよろしいのですか?」

「中級神以上が相手では対価が釣り合わないし、そもそもウチの結界班のレベルを考えたら俺が出るしかなくなる」

「分かりました。ではそのように」

 そう言うとヒショーはその場を後にする。


「スパイン」

「は、はい!」

「分かっていると思うがこれは『塔』に関わる事だ。ロウィッチ共々無理はするな」

「わ、分かりました!!」

 そして社長もその場を後にし、その場にはスパインだけが残された。


「…………」

 で、当のスパインと言えば内心ではこう思っていた。


 有給休暇でも取って引っ込みてー!?ヤバ過ぎんだろ今回のヤマ!?


 勿論、そんな事は許されないのだが。

また大きく動きますよー


04/26誤字訂正

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