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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第74話「南瓜とセンコ国-4」

「到着っと」

 さて、クヌキハッピィを出発してから数時間。

 俺はセンコ国首都センコノトの上空にやって来ていた。

 ちなみに上空百m以上の場所かつ魔力放出を抑えた状態でゆったりと旋回をしているので、下に居る王都の守備兵に不信感を持たれたり、ましてやバレる事はまずないはずである。


「さて、注意事項がいくつかあったな……」

 で、俺は移動中にデンレー経由で伝わってきた話を思い出す。

 その1:王都には罪のない国民も沢山居るので、【共鳴魔法・核南瓜】のような戦略級攻撃魔法は使用禁止

 その2:今回のクーデターの主犯であるレイ・センコ第四王子については例え始末出来てもしない事

 その3:出来る限り人死には少なくすること

 だったかな。

 その1、その3については当然だな。罪なき市民を殺すのはアウトだし、人死には少ないに越したことは無い。

 その2については後々の事を考えれば納得だな。仮に俺が例の王子を殺ってしまったら後々の処理が面倒な事になる。

 と言うか俺みたいな怪しい奴が王族を殺すとか絶対に不味い事になるよな。それを考えたらその2は絶対に守らないと拙い。


 なお、デンレーの使った通信魔法は【共鳴(レゾナンス)魔法(スペル)震え(ウェイバー)(グラス)】と言い、スパルプキン同士でないと使えないが、遠くの同族に声を伝えることが出来る共鳴魔法である。

 ちなみに震え草についてはリーンの森の中で見つけた後、共鳴魔法の効果とコスト(多くのスパルプキンが1日に1回ぐらいなら問題なく使える)が優秀という事で現在ではサンサーラエッグ村でも生産している。


「まっ、そんなわけで使う魔法についてはちょいとばかし毛色が違うものにさせてもらいますよっと」

 俺はいつも身に着けているマントの中からいくつかの小さな袋を取り出すと、蔓を束ねて作った手に一つずつ袋を持つ。

 そして蔓ごとに違う属性の魔力を流し込みつつ、手を一本センコノトに向ける。

 するとある程度手を伸ばしたところで薄い壁の様な物にぶつかる。

 どうやら事前情報通りセンコノトの上空は常時軽度ではあるが防御魔法に守られているらしい。


「力技で破ってもいいが……これが正解だな」

 俺は壁に触れている手に魔力を込めて結界に細い穴を開けると、それを少しずつ広げていって手が数本分入るようにする。

 なお、力技でも破れるのに力技で破らないのは、このセンコノトを覆っている防御魔法は破壊されると街中に居る全ての人間を警報で叩き起こすと言うトラップが仕掛けられているからである。

 敵は少ないに越したことは無いからな。そういう訳で今回は力では無く技術でどうにかしたわけだ。


「さて、こっちの準備も完了したな」

 俺は大量の魔力を送り込むことによって今にも中身を周囲にばら撒きそうになっている袋を壁の中に入れる。

 あっ、ちなみに第二王子と第三王子も俺にしたのと同じような依頼を信頼できる人間にしているらしいので、現在センコノトの中には各王子たちの手の者が入っているらしい。と言うわけで可能なら協力するように言われたが……

 そんなのは関係ねぇ!

 さあ、見せてやろうではないか。このパンプキン発明の広域無力化魔法を!


「行くぞ!【共鳴(レゾナンス)合奏(コンチェルト)魔法(スペル)秋の(グッド)快眠(ナイト)セット(デイ)】!」

 俺はそう言うと同時に袋の口を開き、共鳴魔法発動に必要な最後な魔力を流し込みつつ袋の中身をばら撒く。

 袋の中が出てくるのは乾燥したネムリ草に乾燥した茸が2種類、ふわっふわのウール、豆の様な物体、独特の匂いがする液体……と言うかお酒、仄かな光を放っている石の計七種類。

 やがて袋の中から出てきたそれは次々に弾け飛んで霧のような物に変化した後にゆっくりと地上に降り注いでいく。


「ふむ。効果有りだな」

 突然の霧に王都の人々は兵士も市民も関係なく驚いているが、そうして驚いている内に次々にゆっくりと膝をつき、その場で倒れると健やかな寝息を立てて眠り始める。

 そして俺はセンコノトの中にいる人間が全て眠ったところで壁をすり抜けると城に向かってゆっくりと降下を始める。


 さて、先程使った【共鳴合奏魔法・秋の快眠セット】だが、これは複数の共鳴魔法を同時に発動することによってその相乗効果を狙った共鳴魔法である。

 具体的には直接的に眠らせる効果を促す触媒としてネムリ草にネムリタケと言うリーンの森で採れる植物を、何かしらの理由で起きてしまってもすぐには動けないように麻痺効果のあるシビレタケを、眠りを誘導するために他の四種の触媒を使っている。

 ん?他の触媒にはどういう効果があるのかって?

 ウールには睡眠中の怪我防止+快眠のためにふっかふかの羊毛布団を発生させる効果がある。

 豆の様な物体……大豆に似ているが微妙に違うんだよな。これには通常の植物よりも多くの魔力を宿している高カロリーの食物で、対象の満腹度を上げてお腹一杯にさせる効果がある。

 お酒は適量なら薬だし、酔うとやはりと言うか眠くなる。

 最後に仄かに光る石だが、春の日差しを思わせる適度な光量によって体が温まって眠くなる。

 で、結論としては普通の人間ではまず眠気に抗えなくなってその場で熟睡することになるし、そうでなくても動きは鈍る。

 ちなみに魔法らしく普通の壁や天井程度なら貫通するように設定済みでもある。


 と言うか、この魔法の最も恐ろしい点は最初の三種については攻撃魔法として認識することで防ぐことも出来るけど、後の四種については攻撃魔法と言う認識ではまず防げないと言う点だったりする。

 ぶっちゃけ本来の用途なら防御魔法とか、回復魔法とかそう言う分類になるし。辛うじて酒が攻撃として認識されるかどうかだろう。


「てなわけで、一切の妨害も無く到着っと」

 結論として防ぐには魔法で完全に周囲を遮断するしかないわけで、俺は難なく城の中庭のような場所に着地する事に成功する。

 さて、お姫様や王様はどこに居ますかねぇ?

【共鳴合奏魔法・秋の快眠セット】は実際かなり凶悪な魔法です。

なにせ、生物が自然に眠たくなるような環境を作る事で眠らせる魔法ですから何かしらの睡眠対策を取ってもその大半は意味を為さないと言う……普通の人間相手なら割と反則技です。

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