第68話「神々と人々の密談」
今回、南瓜は未入荷です
「ふーん。つまり無くなったのはイノトロト式の奴なのね」
「ふーん。って貴様が作った物だろうが!」
暗い部屋の中で白衣を身に着けたオレンジ髪の女性と、仮面とフードを身に着けた女性が紙のような物をそれぞれ片手に持って対面している。
「で、原因は不明だけど破棄している最中にどこかに消えてしまったと」
「ああそうだ。貴様が詳しい仕様書を書いていなかったせいで無くなった原因も分からん。何か心当たりはあるか?」
「そんなにカリカリしてると禿るわよ。で、心当たりだけど……ああ、有ったわ」
仮面とフードを付けた女性……『管理者』は白衣の女性……『神喰らい』に対して明らかな怒りを見せるが、『神喰らい』はそれを難なく受け流して自分の記憶を探る。
そしていくらかの時間と部屋の中にある機器をいくつか動かしたところで『神喰らい』は目当ての情報を探り当てる。
「これがそうね」
「これは……貴様はまた面倒な物を作り出してくれたな……」
「昔の私が気まぐれに作った物だからね。いやー、あの頃は若かった若かった」
「笑っている場合か!」
「うぷっ」
『神喰らい』が笑っているところに『管理者』が手に持った書類を投げつける。
「痛いなぁ……これぐらいしないと私たちの目的何て到底達成できるはずないでしょうが。尤もこれで役に立ったのは居場所を探る機能ぐらいだけどさ」
「……っつ!?」
『神喰らい』の放つ威圧感に『管理者』は思わず足を一歩退いてしまう。
「まあいいわ。たぶん居なくなった理由はこの辺の機能が誤作動を起こした結果だろうし。確かこっちに私が昔調べた候補地が有ったはずだからこれを元にして海月共かイズミにでも調べさせればいいわ」
「貴様はどうしてこうも……」
そう言って『神喰らい』は別の紙を『管理者』に渡し、『管理者』は苦々しい顔でそれを受け取る。
「だって興味ないもの。ほら、話は終わり。とっとと探してきなさい」
『神喰らい』は手をプラプラと動かすと話は終わりだと言わんばかりにその場から跡形も無く消え去る。
「だからどうして貴様はそんなに適当なのだ……私たちの中で最もお母様に近しいと言うのに……くそっ」
そして『神喰らい』の後に続くように『管理者』も貰った書類を片手に持ってその場を後にした。
ただ、その顔は負の感情で満ちていた。
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「準備の方はどうだ?」
「万事滞りなく」
「もうしばしでございますな」
「私はいつでもよいですぞ」
微かな明かりだけが灯された室内で複数の人影が周囲に気を配りつつ会話する。
明かりに乏しいため集まっている面々の顔や服装の子細は分からないが、基本的には贅を尽くした格好をしている。
「神官。万が一の備えは?」
「問題御座いませぬ。その時が来ればいつでも」
「良い返答だ。期待させてもらおう」
そして、集まっている人影の中でリーダー格と思しき若い男が一人だけ違う服装の男に話しかけ、その返答に気を良くする。
「くくくくく……ならば後は機が熟すのを待つのみと言うわけか」
「楽しみでございますなぁ」
「我等の悲願がいよいよ叶うわけですな」
「真に待ち遠しいですなぁ」
やがて、その場に集まっている面々は一度高笑いを上げるとその場を順々に去って行き、最後に神官と呼ばれた男一人が部屋に残される。
「くくっ、愚か者共め。利用されているだけとも知らずに……」
そして男は本当に小さな声でそう呟くと部屋を後にした。
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天地が逆さまになった世界の中心で蘇芳色を基本として様々な色のレースや紐を付けられた豪勢なドレスに身を包んだ女性が見知らぬ誰かに向けて祈りを捧げていた。
「アレがある限り私は表に出る訳にはいかない……」
女性の頬には幾筋の涙が流れた後があり、その顔は美しくとも悲しみの表情で満たされていた。
「それどころか私が居るせいでアレはこの世界に留まり続けている……」
女性の握る手の間から赤い液体が漏れ出てくると腕を伝って肘まで行き、そこから下にある天に向かって落ちていく。
「私はただ救いたいだけだと言うのに……私は……私はどうすれば……」
女性から嗚咽が漏れ始める。
「いえ……私がするべき事なんて決まっているわ……今まで通りやるしかない。今まで通りあの女の一派に知られないように力あるものを集めてアレに反抗するしかない」
だがすぐに女性は自らの気持ちを改めてこれからどうするかを考えだす。
「何としてでもアレを倒して見せる……この世界のためにも……私自身のためにも……」
そして女性は決意を新たにするようにそう呟いた。
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「と言うわけでバレたけどどうしよっか?」
『ウミツキ文房具店』の中で魔法少女風の衣装に身を包んだ一人の人型の生物が海月型人形に話しかける。
『あー、社長に確認を取ったけど、今回はセーフだってさ』
「理由は?」
海月型人形から聞こえてくる声に対して人影はその言葉の理由を問う。
『えーと、社内規約より参照して……ああ面倒だから掻い摘んで話しちゃうと売った商品からバレてるし、お前自身には過失は無いからだってさ。ついでに言えば精霊なんて言う世界そのものを誤魔化すのは無理だからしょうがないだとも言ってたな』
「あー、なるほどな。まあ、助かったならそれに越したことは無いな。異界バレの罰則って無茶苦茶厳しいし」
『まーなー、正直に言って何十年と趣味禁止で働かされるとか洒落にならねえもん』
「『ハハハハハ』」
人影と海月型人形はそうしてお互いに笑いあう。
『ああそうだ。お前の今居るR05-I14-C01世界だけどよ。暇だったからちょっと過去に神級の存在がどれだけ出入りをしていたのか調べたらちょっと面白いことが分かったわ』
「ん?なんだ?なんだ?」
『いやな、R05-I14-C01世界なんだが、ウチの手の者を除くと過去に2回ほど大物が入っているっぽいんだよ』
「ふむふむ」
『時期についてはR05-I14-C01世界誕生直後に一柱、もう一柱はそれから千年とちょっと後で、そっちの時間軸からすると大体三千年ぐらい前なんだが……問題はその正体』
「ん?何か面倒な奴なのか?」
『ああ、聞いて驚け。先に入った方は分からなかったが、後に入った方は魔力のパターンからして『塔』の関係者だ』
「うわーマジでか……」
『てなわけでヤバいと感じたら素直に逃げとけ、『塔』の連中は目的のためには容赦しねえからな』
「ああそうさせてもらうよ。『電子の女帝』や『生死運ぶ群狼の命主』ならともかく『神喰らい』が出て来た日なんか最悪第二級……いや、第一級破壊魔法が飛んできかねないし」
『確かにな。そんなわけで気をつけろよー』
そして海月型人形はその言葉を最後に沈黙する。
「さて、人の世も神の世もこれから荒れそうだ」
人影はそう呟くと誰にも見られぬように笑った。
今回は導入部のような感じでした
04/03前書き修正




