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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第62話「南瓜と伯爵-2」

 さて、今回の正念場である質疑応答の始まりである。

 保護を得るためには嘘や偽りの言葉を発するのは勿論アウトだが、だからと言って話してはいけない情報まで話してしまってはこちらにとって不利な状況になると言う非常に難しい場面だ。


「では、一つ目の質問だが、君たちスパルプキンの生活体系について分かっている範囲で教えて欲しい」

「分かりました」

 一つ目の質問は俺たちの暮らしぶり。

 これはまあ、領主として領民がどういう生活をしているのかは後々執政官の様な者を送るにしても知っておくべきだろうな。

 今ここで聞いた話と執政官からの話に差が有ればどちらかが嘘をついていると調べる必要性も出てくるからな。

 と言うわけで俺はスパルプキンの現状での暮らしぶりについて語っていく。


「ふむ。つまり現状ではどちらかと言えば原始的な生活を送っている状態なわけか」

「まあ、端的に言ってしまえばそうですね。まだまだ作っている途中ですから」

 で、一通り話し終わったところでクヌキ伯爵から出て来た言葉がこれである。

 実際の所サンサーラエッグ村が出来てからまだ殆ど時間が経ってないからなぁ……この辺ばかりはしょうがない。


「それでは二つ目の質問だな。君たちスパルプキンは我々ヒューマンと比べた場合、何を出来る?」

「それでしたら……」

 クヌキ伯爵は淡々とした口調でそう言う。

 で、二つ目の質問はヒューマンと比べた場合何を出来るか。か。上手い質問だな。一回で色々と聞きだせるし、下手に隠すことも出来ない。

 まあ、それでも喋れることと喋れない事があるから上手く誤魔化す部分は誤魔化せてもらうがね。


「そうですね。現状こちらで把握している限りではヒューマンと比べた場合だと日の光と水さえあれば食料が最低限で済むと言うのと、基本的に普通のヒューマンと比較して魔力量が多くて身体強化魔法が使えると言うことが利点ですかね」

「低燃費デス」

「パンプキン君。君が使ったと言う呪返しや輸魔力技術。それにハンティングビーとの交流に使えるダンスと言うのはどうなのかね?」

 俺はクヌキ伯爵の言葉にコウゾー爺さんの方を見るが、コウゾー爺さんはあからさまに視線を逸らして、追及の眼差しを向ける俺から逃れる。

 まあ、これぐらいは予測済みだが。


「呪返しと輸魔力については俺固有の技能を利用した力技に近い物ですからスパルプキンと言う種族だからと言って使えるわけではありませんよ。輸魔力については既に創造神協会のプレイン殿に基本的な考えは伝えてありますし」

「まあ、あちらはあちらで難航しているようだがな……」

 俺の言葉にクヌキ伯爵は微妙に苦そうな表情をする。

 その表情から察するにプレインさんの研究はあんまり上手くいって無いのかもなぁ……まあ、話し合いが終わったら水路掘りの時に出したアンレギラットの【オーバーバースト】関連のデータの一部でも出すか。


「それでダンスの方は?」

「そちらについてもスパルプキンの技能とは限らないですね。元々彼らハンティングビーの知性は低くありませんし、やり方さえ知っていれば相性は有るかもしれませんが交流は可能かと」

「ふむ。そのやり方については後で教えてもらっても?」

「クヌキハッピィの冒険者協会を通して、と言う形でいいならいずれ」

「ああ、それで構わない」

 で、ダンスについては本当にそうなのでこう答えておく。

 まあ、俺たちスパルプキンの場合だと契約が有って普段から1対1で関係性を築いているから他の種族よりもハンティングビーと交流しやすいのは認めるが。


「それでは三つ目の質問だが、こちらは答えられないようなら答えなくてもいい」

「?」

 俺はクヌキ伯爵の言葉に訝しげな目を向ける。

 まあ、今までの質問は嘘偽りなく答えろと言っていたのに、急に答えられないなら答えなくていいだから警戒するのは当然ではあるが。


「いやなに。魔法使いにとって自らが使う魔法の正体・詳細と言うものは己が人生そのものであると言ってもいいからな。それを根掘り葉掘り聞くような真似を無理やりするなど殺してくださいと言っているような物だからな」

「ふむ」

「だがそれでも領主として領民と領地の安心と安全のためには聞いておかなければならないと言うものがある。それを理解した上で私の質問に答えてくれ」

「分かりました」

 わざわざこんな断りを入れて来るって事は相当重要な話だろうな。

 加えて言うならそう言う話をしてくれるって言う事はそれだけの信頼を今回の話し合いで得られたという事になるんだろうな。

 なら、答えられる範囲で答えるとしよう。


「先日の地震。その原因は君が使った魔法だと聞いている。まずこれは確かかね?」

 地震……【共鳴魔法・核南瓜】の余波で起きたあれか。


「それは確かですね」

「使った事情は分かっているが、だからこそ問いたい。君はあれほどの魔法を何度でも放てるのかね。そしてあれと同種の魔法を君たちスパルプキンは使えるのかね?」

「…………」

 俺はクヌキ伯爵の目を見る。そこには恐怖や欲に駆られた色は無い。

 ならば何故クヌキ伯爵はこのような事を聞いたのか。言うまでもない。クヌキ伯爵はその地位に立つ者として領民と領地を守る義務があるからであり、俺の使った【共鳴魔法・核南瓜】と言う魔法は彼らを傷つける可能性が大いに存在するからだ。

 ならば俺としてはその誠意には誠実に応える必要が有るだろう。


「結論から言えばいくつかの準備さえ整えれば再使用そのものは可能です」

「……」

「ただ、あの魔法は地震も含めてあまりにも欠点が多すぎる。それ故に私自身この先使う事はまずありませんし、あの魔法と基礎を同じくする魔法自体は私でなくとも使える可能性は有るでしょうが、あの魔法そのものは私以外には発動すら出来ない」

 実際の所【共鳴魔法】そのものは恐らく理論を知った上で修練を重ねれば誰にでも使えるだろう。

 だが、俺がこの先【共鳴魔法・核南瓜】を使うとしたらよほど切羽詰まった状況だし、あの魔法の触媒は俺の肉体だ。加えて普通の人間では魔力が絶対に足りない。

 だから、俺以外には誰にも使えないと言い切れる。


「確かなのだな」

「魔法使いとしての我が名と命に誓っても」

「「…………」」

 俺の視線とクヌキ伯爵の視線が交錯する。

 そしてしばらくの間にらみ合ったところでクヌキ伯爵が目を瞑ると緊張を解くように息を吐く。


「いいだろう。今回は君のその言葉を信頼するとしよう」

「ありがとうございます」

 で、クヌキ伯爵の言葉に応じて俺も緊張を解く。


「さてと、それでは納税に関する詳しい話については……またいずれ。そうだな。冬を越したらこちらの者をそちらに送るから、それからとしよう。こちらとしても色々と準備や根回しが必要になるだろうからな」

「分かりました。それでお願いいたします」

 こうしてクヌキ伯爵と俺の初めての話し合いはこうして幕を閉じることとなったのであった。

 あー、緊張したわ。その内こういうお偉いさんとの交渉が得意な子を見つけておく必要があるかもな。

お互いオワタ式な交渉回でした


03/29ちょっと改稿

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