第60話「南瓜の村-7」
「それじゃあ、行ってくる」
「行ッテキマス」
「「「行テラー!」」」
「ヒュロロロォォ!」
そう言ってレイギと換金用の荷物を抱えた族長がサンサーラエッグ村の上にまで浮かんだ後、西の方角に高速で飛んで行った。
本当は俺も付いて行きたかったが、今回はクヌキハッピィと言う街に居る偉い人に会ったり、マウンピール村とは比べ物にならない数の人の目に晒されるという事で俺たちの中で一番交渉能力に優れているレイギだけを族長が連れていくことにしたそうだ。
それと、今回は冬に備えて必要な物資を買うための資材を持っていく意味でもあまり付添いは増やせなかったらしい。
「ソレジャア?」
「イイヨー」
「準備ハカンリョー」
「バッチコイアル」
「「「ブブブブブ」」」
ま、付いて行けなかったものはしょうがないので俺たちは俺たちのやるべきことをやろう。
と言うわけで俺ことゴーリキィにカケル、ツキツキ、メイの4人に俺たちとそれぞれ契約している4匹のハンティングビーたちでしっかりと準備をした上でサンサーラエッグ村の入り口になっている門に向かう。
「「開門ー」」
門の担当をしているスパルプキンの言葉と共に村の入り口である丸太の門が開かれ、村を取り囲むように掘られている堀の上を通るための橋が架けられる。
なお、この堀だが用途はクロイングボアの様な大型動物の侵入を抑える為ではなく、アンレギラットの様な小動物の侵入を防ぐためであり、大型の動物は堀に沿う様に建てられた木製の柵で防ぐ様になっている。
「ソレデハシュッパーツ!」
「「「オオー!」」」
「「「ブブブブブン!!」」」
そして俺たちは橋を渡ったところで各々の武器を掲げて気合を入れるとリーンの森の中に入って行った。
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「ブドウー」
「キノコー」
「ドングリー」
「イガグリー」
「「「ブンブブン」」」
リーンの森の中に入った俺たちは周囲への警戒が疎かにならないペースで果実や野草、茸を集めていた。
流石は俺たちを産んだ森だけはあって、少し探せばそれだけで沢山の秋の幸を見つけることが出来るのだからやはりこの森は凄いと思う。
ガサッ……
「「「!?」」」
と、俺の背後で微かな物音がしたため、俺は愛用の灰硬樹の剣と盾を咄嗟に構え、俺が動くと同時に他のメンバーもそれぞれの武器を構えて戦闘態勢に入る。
こんなことをしているようでは臆病に思われるかもしれないが、リーンの森では未だに俺たちスパルプキンもハンティングビーも単独では狩られる者であり、集団で行動して初めて戦いに出来る弱い存在でしかない。
だから、俺たちは森の中に居る時は決して気を緩めない。一瞬の油断こそが野生では最も命取りになるからだ。
「キュッ?」
「リスカ」
そして、物音がした場所から出て来たのは体長15cm程のリスだった。アンレギラットと同じように前歯に魔力が集まっているのが見える。
ただ、物音の正体がリスだと分かってもまだ警戒は緩ませない。
前歯に集められるほどの魔力を持っているなら、こちらの不意を突いて首を噛み切るぐらいのことは出来るからだ。
一応、対策として全員クロイングボアの毛皮製のネックガードは付けてるけど。それでも注意は必要なのだ。だって俺たちはまだまだ弱いし。族長みたいに常時身体強化なんてできないし。
「キュッキュッー」
「……。モウ大丈夫ー」
やがて、こちらに一分の隙も無く、このまま留まれば逆に狩られると判断したのかリスは去っていき、俺たちの中で一番感知範囲の広いメイの言葉で武器をしまう。
「緊張シター」
「イツデモ逃ゲレタ癖ニー」
「フゥ」
「「「ブブブブブー」」」
で、武器をしまったところで最低限の警戒は残して気を緩めて楽にする。
ちなみに今回はリスだったからよかったが、もしクロイングボアに遭遇した時は確定で戦闘になる。
そしてその際にはハンティングビーたちが牽制しつつ剣と盾を持った俺がタンク役になり、槍を持ったツキツキを攻撃の主体としてカケルとメイの二人が短剣でそれを補助する形になっていただろうから、クロイングボアが来なくてよかった。
え、うん。臆病?いいんだよ。タンク役は必要な時だけ勇敢になって基本的には臆病で。戦いなんて無いに越したことは無いだろう。
「荷物ハー?」
「「「イッパイー」」」
「蜜ハー?」
「「「ブンブブブン」」」
「ソレジャア、帰ルゾー」
と言うわけで危険も去ったところで俺は他のメンバーにどのくらい物が集まっているかを確認し、木の実や果実等の回収した物を入れるアイテムポーチもハンティングビー達の蜜袋も一杯なのが分かったので俺たちはサンサーラエッグに戻る事とした。
族長の教えだが『まだ行けるはもう行けない』だそうだし、必要以上の荷物を持つと言う行為はいざと言う時にする咄嗟の回避や一瞬の判断を邪魔するものになる。
そして俺たちが身に着けているアイテムポーチは元々俺たちの動きを阻害しないサイズまでしか膨らまないようになっているので、それが一杯という事はこれ以上の荷物は邪魔にしかならないのだ。
ちなみにこれも族長の教えだが『帰るまでが遠足』だそうである。と言うわけで帰り道もやっぱり最大限の警戒をした状態で俺たちは帰った。
今回はゴーリキィ視点でございました
03/26誤字訂正




