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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第59話「南瓜の村-6」

 秋である。

 前世だと秋と言えばとにかく物が美味くて気温も丁度よく、とにかく過ごしやすい季節と言う認識であるが、今世では冬に備えるための準備期間であると同時に野生動物たちも冬の寒さに耐えるための栄養を求めて俺たちに襲い掛かってくる季節である。


「コノ剣ヨカー」

「盾イイ感ジー」

「ブブブブブ」

 まあ、そう言った事から安全かつ効率よく冬籠りの準備をするためには戦力の増強が必須であり、そう言う理由から現在、武器と防具の作成と強化が目下の課題である。

 と言うわけで手先が器用なスパルプキンとその子と契約しているハンティングビーたちが俺の家に集まって森の植物やハンティングビーの蜜蝋を使った武器と防具の作成中である。


「形ハイイ感ジー」

「ブブブブブ」

「蜜ローヨロデス」

 サクとクツと言う名前のスパルプキンが削った木剣にハンティングビーが張り付いて蜜蝋を塗り始める。

 さて、現在俺たちがしているのはリーンの森に生えている木の中でも特に身が詰まっていて金属の様に堅い『灰硬樹』と言う木を主体にして作った剣にハンティングビーの蜜蝋を塗り付けての強化作業である。

 この『灰硬樹』は灰色の表皮を持った木でとにかく堅く、俺を除けば現状ではスパルプキンの中でも手先が器用且つ身体強化の技術か石や骨に魔力を纏わせて強化する技術に優れたスパルプキンにしか加工が出来ていない代物である。

 ただ、堅いと言っても所詮は木なので、靱性などは良くても硬度的に金属製の武器を相手取るには微妙に荷が重い。

 と言うわけでハンティングビーの蜜蝋を塗っているのだが、ここでハンティングビーの蜜蝋についての説明が必要だろう。


「ブブブブブ」

「ゴクローデス」

「露アゲルデス」

 蜜蝋を塗り終ったのかハンティングビーが木剣から離れ、クツが剣を取り上げて状態を確認しつつ余計な部分の蜜蝋を削り、サクがハンティングビーに報酬である魔力を込めた露をやる。

 ハンティングビーの蜜蝋は、基本的な性質に関しては普通の蜂の蜜蝋とさほど変わらない。ただ、重要な性質が一つある。

 それは魔力に触れると魔力を吸収して強度や硬度を大幅に増すという性質。


「フヌヌヌヌ」

「イイ感ジデスー」

「ブブブブブ」

「うん。中々の出来だな」

 クツが蜜蝋を塗られた木剣に魔力を込めると、蜜蝋は魔力を吸収して金属系の光沢を持つと同時に見るからに切れ味が良くなる。扱う人間が扱えば薄い鉄板ぐらいなら切れるかもしれない。

 と言うわけで、このような性質が存在しているため、例えば木剣に蜜蝋を塗って魔力を流すと、今クツが持っているような木製の剣なのに実用性が十分な武器が出来上がるわけだ。


「コノ調子デリョウサンスルデス」

「デスデス!」

「ブブブブブー!」

 剣が一本出来上がったところで同様の手順で次の剣を作成しにかかるクツとサク。この感じならまあ放置していても大丈夫だろう。

 さて、ここらで説明しておくことがあるだろう。

 今のスパルプキンとハンティングビーの関係についてだ。


 現在の両者の関係は良好である。それは俺の前に居る二人と一匹の仲の良さから分かるだろう。

 では、具体的な関係性は?

 基本的な関係としてはスパルプキン側からは魔力を込めた露を渡す代わりにハンティングビー側からは蜜や蜜蝋を貰うと言う関係になっている。

 が、それに加えて現在では一緒に狩りに出かけて、ハンティングビーが注意を惹いている間にスパルプキンが攻撃を仕掛けていたり、逆にスパルプキンが敵の攻撃を盾で防いでいる間にハンティングビーが攻撃をすると言った狩猟中でのコンビネーションもされるようになっているし、遊び仲間として一緒に遊んでいる光景なんかも見られる。

 まああれだ。持ちつ持たれつと言ったところだな。

 個人的には理想的な関係だと思うし、出来る事ならずっと続いて欲しい関係である。


「出来タデス!」

「渡シテクルル!」

「ブンブブーン」

「いってらー」

 ちなみに、生まれてからそれなりに時間が経ったためなのかスパルプキンたちの言語能力はだいぶ上がって来ていて聞き取り易くなってきている。

 この分なら来年の春にはマウンピール村の人たちとも普通に会話が出来る様になるかもしれない。


「さて、削りカスは、っと」

 俺は木剣の形を整える際に出た欠片拾い集めていく。

 さて、ハンティングビーの蜜蝋には先ほど言った通りの性質があるわけだが、実を言えばそこに加えて共鳴魔法の触媒として使えば一時的な自己強化を行えたり、魔力の限界保持量が多いのでサイズの割に強力な【オーバーバースト】が発動出来たりと言う性質も有ったりする。

 そんなわけでこうして余った蜜蝋は灰硬樹の木屑共々こっそり集めて、ある程度の量が貯まったら煮詰めて扱いやすいように球状にしていたりする。

 もったいない精神はこういう環境で生きていくためには大切だと思うんだよね!

 なお、灰硬樹の方も共鳴魔法の触媒として使えば自身の防御力を強化する効果が有ったりする。


「新作ー!」

「試セー!」

「試スー!」

「イザ、ケットー!」

「「「ブンブブブ!!」」」

 外から楽しげな声が聞こえてくる。うーん。実に平和だ。

 ちなみに、これらの技術の詳細は基本的に秘匿予定ではあるが、外の人間で扱える者はあまりいないと思う。

 なにせ、真価を発揮するには装備品に魔力を流し込むのが前提であるが、普通の冒険者や兵士はそう言う技術を持っていない……と言うか普通は身体強化に回す分しか魔力が無いからだ。

 と言うわけで、森の外で使う必要が出た時は遠慮なく使う気満々だったりする。どうせ、普通の人間には魔力は見えないしな。


 ま、本音を言えば森の外で使う機会に何て恵まれない方が良かったりもするがな。

灰硬樹はファンタジーによくある不思議素材です


03/25誤字訂正

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