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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第57話「南瓜の村-4」

 相変わらず日差しは厳しいが、それでも一番厳しい時期を切り抜けてほんの僅かに秋の匂いがリーンの森全体にし始めた頃。

 毎回連れて行くスパルプキンを変えてウリコに会いに行ったり、スパルプキンたちに修行を施したり、冬への備えを少しずつしていた俺だが、今日は珍しく時間の空きが出来て暇になっていた。


「うーん。しかし平和だ」

 俺は拠点の中を見渡してそう言う。

 拠点の中では朝のラジオ体操と言う名の全体練習を終えたスパルプキンたちが思い思いに自分の好きな事をやっている。

 追いかけっこしている者や、かくれんぼをしている者。畑の雑草を引き抜いている者に木を削って木剣を作っている者。まさに平和としか称しようのない光景が広がっていた。

 ただ、うん。ここまで持っていくのは大変だった。とりあえず森に大量に存在している猪たちが襲ってこなくなるぐらいに実力を付けるまでは毎日の様に襲われていたからな。

 尤もこの先は冬籠りに備えて少しでも栄養価が高いものを集めようとして博打を打ってくる熊が出て来たり、俺たち自身も寒波の対策が有ったりするから、ぶっちゃけるとこれからが本番だとも言えなくはない。


「まあ、今の時点でも去年と同じくらいの冬なら十分に越せる程度には魔力も付いているし、そこまで心配しなくても何とかはなるか」

 むしろ問題なのは一体いつクヌキ領の領主に挨拶をしに行くかだよなぁ……クレイヴ経由でだが、コウゾー爺さんの話ではクヌキ領の領主は俺たちに興味を持っているらしいし。今後の事を考えると国に所属して村として認めてもらった方がメリットは大きい。

 勿論、税を納めたりとかのデメリットもあるが、その辺についてはスパルプキンの実力や生態が分かるまでは免除扱いだそうだからそこまで問題にはならないし。

 とりあえず、マウンピール村やクヌキハッピィの街中の様子を見る限りでは善政をしている方の領主さんっぽいからこっちが落ち着き次第会っておきたいのは確かだな。


「後の問題は共鳴魔法の研究だが……」

「ゾクチョー!」

「ん?デンレーか」

 と、ここで共鳴魔法について考え始めようとしたところでスパルプキンの一人、デンレーがこちらに駆け寄ってくる。

 ちなみにデンレーは物覚えと走るスピードが程よく高い子である。本当に今一番伝えるべき事が分かっている子なんだよね。この子のおかげで色々と楽になってるわ。

 で、デンレーが来たという事は何か緊急事態が起きたという事なので早急に話を聞く必要がある。


「何かあったのか?」

「はちサン。ゾクチョー、タズネテキタ?イマ、ヒロバデマッテル」

「蜂?」

 デンレーの言葉に俺は思い当たる節を思い浮かべながら建物の外に出てみる。

 うーん。蜂……ハンティングビー?となると……


「ブブブブブ(お久しぶりです)」

「あーやっぱりか」

 建物の外に出た俺の前には通常のハンティングビーよりも二回りほど大きくなった巨大な蜂が居た。だが、周りにいる通常サイズのハンティングビーはともかく、目の前の個体がする羽音とダンスで意思を伝えるそのやり方や、身に纏っている魔力には見覚えがある。

 このハンティングビーは間違いなくリオの件で知り合ったリーダーだろう。

 と言うか『その内貴方に会いに行きます』ってこういう事だったのな。


「ま、そう言う事ならだ」

 と言うわけで以前と同様に踊りも利用してのコミュニケーションである。

 なお、スパルプキンたちには一般教養としてこのダンスは仕込み済みだったりする。


「ズンチャ、ズンチャッチャ(久しぶり、随分とデカくなったな)」

「ブブ、ブブブブブ、ブンブーブブブ(働き蜂から女王蜂になりまして、分蜂の季節なのでこの森にやってきました)」

 ふーん。て、あれ?普通だと女王蜂って生まれた時から特別な餌を与えられてる王女蜂がなるものじゃなかったっけ?

 で、そこら辺について聞いたら。


「ブブブブブ、ブンブンブッブブブ(貴方の露に秘められていた魔力の影響でこうなったみたいです)」

 との返答が帰って来た。ああうん。俺が原因ですかそうですか。

 確かにあれだけの魔力を込めたって事はそれだけ栄養もたっぷりですよねー。そうですよねー。


「ブブブ、ブッブブブブンブブブ?(出来れば、この集落の中に巣を構えたいのですがよろしいでしょうか?)」

 リーダーの言葉に俺は多少悩む。

 実際の所ハンティングビーと俺たちなら、俺たちが魔力入りの露を与え、代わりに蜜や蜜蝋を貰うと言う共生関係は問題なく築けるだろう。だから、俺やスパルプキンとしては置いておいても構わない。

 ただ、この集落には人間も時々来るだろうし……うーん。その辺も含めて聞いておくか。


「タッタカ、ズンチャ、タッタタラ(時々、人間が訪ねてくるがそれでもいいなら)」

「ブブブブブ。ブブ、ブンブーンブブッブブブン(構いません。私はこの森で生きるために貴方たちに守ってもらいたくて来ているわけですし、人間は必ずしも敵ではありませんので)」

「ズンチャッチャ、タタッ(なら、巣作りに良さそうな所を見繕うとしよう)」

 と言うわけで了承も得られたので、卵形の岩の周囲を切り開いて作られた拠点の中でもリーダー視点で巣作りに良さそうな場所を見繕い、そこに俺やスパルプキンが基礎を組み上げると数日かけてリーダーたちは巣を作ったのだった。


 あ、そうだ。ミズキにも早いところ紹介しておかないとな。これから近くに住む友人として紹介しておいて損は無いだろ。

 それからハンティングビーの蜜や蜜蝋を使った共鳴魔法にどういう効果があるのかも調べないとな。

 と言うわけで俺はこれからどうするかを考え始めるのであった。

蜂が来ました

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