第55話「南瓜の村-2」
「準備は良いかー」
「イイ」
「ダイジョーブデス」
「ハヤクーハヤクー」
俺の言葉に対して俺の目の前に居る三人のスパルプキンがそれぞれの性格を表すような口調で返答する。
「はいはい。留守組も大丈夫だよな」
「「「マカセロー」」」
「アンゼンダイイッチ!」
「オマカセー」
俺は先ほど答えた三人以外のスパルプキンに対して問いかけ、それに対してスパルプキンたちは心強い返事を返してくれる。
うん。これなら大丈夫そうだ。
「よし。それじゃあ、ゴーリキィ、レイギ、カケル。三人とも俺の身体に掴まれ」
「「「アイー」」」
「じゃ、行くぞ。ヒュロロロォォ!」
「「「ーーーーー!?」」」
俺は三人がしっかりと俺の身体に掴まったことを確認すると、木々の上にまで浮かび上がり、マウンピール村に向かって高速飛行を始めた。
脇に抱えられた三人が多少叫び声を上げているが気にしないでおこう。
今回はスピード優先だ。
「ハヤイデスー!」
カケルが妙にはしゃいでいるな……まあ、かけっこ好きだからしょうがないか。
でだ。そろそろ何故俺がスパルプキンたちを抱えてマウンピール村に向かっているかについて説明しておこう。
向かう理由としては勿論と言うべきかもしれないが、スパルプキンに関する諸々の説明と紹介をするために。
時期がスパルプキンが産まれてから一月以上経ってからになったのはスパルプキンたちを最低限のレベルでもいいから鍛えるのにかかった時間がこれだけと言うのと、他の種族とのファーストコンタクトをする上で多少は礼儀が正しかったり、俺の言う事をきちんと聞いてくれる子の方が印象が良くなると考えたためである。
「到着っと」
「ハヤカッター!」
「キュウ……」
「ン」
で、しばらく飛んだところで無事にマウンピール村に到着し、俺の脇に抱えられていた三人が俺から離れて地面に降りる。
空から見た感じだと今のマウンピール村は雑草取りや害虫駆除に忙しいみたいだなぁ。
拠点の畑は土いじりが好きなスパルプキンが手伝ってくれるようになったからだいぶ楽になってるけど。
「うし。それじゃあ三人ともまずはタンゴサックの家に向かうぞ」
「「「アイー!」」」
そして俺たちはタンゴサックの元に向かった。
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「おいーっす」
「ん。来ただか」
俺は畑の中で雑草抜きをしているタンゴサックに声をかける。
「そっちがそうだっぺ?」
「そうそう。一応は俺の息子と娘。ほら、挨拶をしてくれ」
と、ここでタンゴサックが俺の後ろに付いて来ている三人に気が付いたので、俺は三人を前に出して自己紹介をさせる。
「れいぎデス」
「ごーりきぃ」
「かけるッス」
そう言って三人はタンゴサックに向かって挨拶をする。
具体的にはレイギが腰を折ってのお辞儀。ゴーリキィが会釈。カケルが片手を上げて元気よく答える。
うん。この時点で分かるとは思うけど一応三人の性格や能力について説明しておくとだ。
まずレイギはその名の通りに礼儀正しい。俺が教えた覚えも無いのに敬語っぽい言葉使いを普通にしてる事を考えるとリーン様が多少知識を与える形で調整をしているのかもしれない。能力的には一番平均的。
次にゴーリキィ。こちらは普通のスパルプキンよりも腕力に優れていて、性格としてはスパルプキンの中でも珍しいぐらいに物静か。ただまあ、ちょっとした騒ぎとかあるとさりげなく加わって楽しんでいたりもするんだけどな。
最後にカケル。この子はゴーリキィとは逆に脚力に優れていて、性格は先程から騒いでいることから分かるようにこの中では一番子供っぽい。それでも、やる時は真面目にやってくれる子である。
「タンゴサックだ。それにしても、まさかこの年で孫が、それも息子が出来て一年も経ってない内に出来るとは思わなかっただな」
「俺もまさかこんなに早く子供が出来るとは思わなかったよ」
タンゴサックが呆れた様子で呟いた冗談に対して俺は内心では冗談だと分かっているが真顔で返す。
実際、何れは何かしらの方法で子供なり弟子なりが欲しいとは思っていたが、まさか異世界に転生して一年も経たない内に出来るとは思わなかったし、思うはずが無いと言う事情もあるがそれはまあ置いておいて。
「ただまあ、出来た以上は見捨てる気は無いし、最終的には放任主義になるつもりだが一人立ち出来る程度までは親の責任として鍛えるけどな」
「んだな。それぐらいは親として当然だべ」
どんな形であれ俺の子供には間違いないのだ。間違っても途中で放り出す気なんてものは無い。
大人になったら知らんけどな。
「と、そう言えばウリコの様子は?」
「すくすく成長してるだよ」
さて、タンゴサックからも俺の教育方針に同意が得られたところでウリコについて聞いたのだが、どうやら平穏無事に育っているらしい。
と言うわけでタンゴサックの家の方を向いたら……
「ちょっと魔力の伸びに驚いているだども」
「ああうん。確かに」
「スゴイ……」
「ココマデクルト、コワイデスー」
「ホントニヒューマンー?」
タンゴサックの家から無色透明な魔力が湯気の様に立ち昇っていた。
どう見ても妹の魔力ですね。ありがとうございます。
おい、と言うかカケルよ。何故そこに疑問を持つ。ちょっと普通の人間と比べて魔力量が多いだけだろうが。ウリコとお前ならウリコの方が大切だからな。俺は。
「あー、パンプキン?」
「と、いかんいかん。とりあえず、魔力操作技術を遊び感覚でもいいから教えた方が良い?」
「お願いするだ。村の皆は事情を知ってるから大丈夫だども、オラの娘が変な奴に目を付けられたりは御免だべ」
ただまあ、今優先すべきはウリコという事でカケルの発言については不問に処しておこう。
今、大切なのはウリコに魔力操作を教える事だ。
まあ、赤子だから教えられることには限界があるだろうが。それでも……な。
顔合わせ




