第53話「南瓜と後始末-3」
「これでよし」
「デキタドー!」
「エイコラサッサ!」
「アメダイジョブー」
俺たちの前にはクレーター周辺に転がっていた木々を利用した建物が建てられている。
まあ建物と言っても床は土のまんまだし、木を直接柱や壁、屋根にしたようなボロ小屋をクレーターの外に作っただけだが。
「と、降って来たか。とりあえず中に入れー」
「フッテキター!」
「イソゲー!」
「クサルゾー!」
で、建物が完成した所で雲行きが怪しくなり、ポツリポツリと雨が降り始めてきたので俺と俺の種から生まれた謎生物たちおよそ50匹が建物の中に入ってく。
さて、ここからが問題なんだよなぁ。
「まず、お前たちは俺の言葉が分かるって事でいいんだよな」
「ワカルルー」
「ゾクチョー」
「カミサマカンバリ」
俺の言葉に対してあちこちから賛同の声が聞こえてくる。
まあ、言葉が分かっているのはさっき建物を建てている間のやりとりで理解はしていたが。
……。微妙に言葉使いがおかしかったり、間違ったりしている辺りからしてそこまで知性が高くない気もするが、そこは生まれたばかりだからだろう。
むしろ最初から話せる程度には知性が高くてリーン様に感謝しておきたいぐらいだ。
「うん。それじゃあ色々と質問するぞ」
「カシコマリー」
「ヨカト」
「アイアイサー」
と言う訳でこの謎生物たちについて色々と調べていく。
この喋り方のせいで凄く時間がかかりそうだけどな。
で、以下、質問に対する返答を意訳しまとめた物。
まず名前については種族の名前も各個体の名前もまだ無い。
と言うわけで後々考えるか、この質問中に自然と付いたあだ名をそのまま名前とすればいいだろう。
次にどうして生まれたのかだが、こちらについては【共鳴魔法・核南瓜】で種が飛び散る際にエントドラゴンの血を浴びたために突然変異を起こしたのが原因っぽい。
まあ、確認のためには俺から普通に種を取ってそれを普通に育ててみないと確認は取れないが。
続けて身体的特徴。
まず、身長は高くても1m程でおよそ三頭身。ただ、個体ごとに多少のばらつきがあって、一番小さい個体だと70cmぐらいで2.5頭身程度の個体も居る。
体重にもバラつきあり。こちらはまあ蔓の太さとか身のしまり具合とかその辺の影響だろう。
そして蔓の太さに影響されるのか他に原因があるのかは分からないが、当然筋力(?)にも差はあるし、器用さ、蔓の柔軟性、葉の形などにも個体ごとの差が出ている。
まあ、この辺は個性みたいなものだな。
で、魔法的特徴。
まず、魔力の色は土属性。
で、俺の様に空を飛んだりは出来ない事からきちんと土属性っぽい。
加えて多少見えるレベルに差はあれど全員魔力を目視できる模様。
ただ、個体ごとに保有魔力量にはそれなりに差が有るし、扱い方を教えてやっても【ガストブロー】と同じような一番単純な魔法を使える個体と使えない個体。それに身体強化を得意とする個体と苦手とする個体など、個体差はしっかりと出ている。
早い話が戦闘が得意とする個体もいれば苦手とする個体もいるし、攻撃魔法が得意な個体もいれば強化魔法が得意な個体もいると言うわけだ。
共鳴魔法が使えるかどうかは……魔力の絶対量が足りないからまだ不明。
続けて精神的特徴。
こちらについては生まれたばかりという事も有って、基本的に精神性は幼い。ただ、こちらの話はきちんと聞くし、俺を族長と認識したり、この建物を建てた時の行動からして協調性や学習能力もきちんと備わっていると見ていいだろう。
なので、今後の成長次第では色々と期待が持てるかもしれない。
なお、確認した限りでは前世の事を覚えている奴は居なかった。と言ってもクレイヴやコウゾー爺さん曰く前世の記憶を思い出すタイミングには個人差があって、大抵は第二次性徴を迎える前後ぐらいに目覚めるらしいので現時点では居ないと言う事にしかならないが。
最後に食生活について。
こちらについてはただ生きていくなら俺と同じく水と日光、後は土中の栄養が多少あれば問題ないらしい。
ただここで俺とは大きく違う部分が一つ。
俺は根から吸い上げる形でしか物を食えないが、彼らは頭になっている果実部分に開いている穴の一つからでも物が食える。
どうやら、胴体になっている蔓の基本的な形状や組み方を自分の意思で変えられない代わりに動物で言う所の胃や腸が存在しているらしい。
悔しいのう……悔しいのう……。
あ、ちなみに雑食。肉は勿論、普通に野菜や果実も食います。
まあ、生きていく上で必須でないからなのか食欲は薄いみたいで代わりに日光欲(ある意味これも食欲と言える気もするが)が強かったりするようだが。
「ふう。大体こんなところか」
「オツカレー」
「スパイスナイヨ」
「ダンススルー?」
「ツッタドー」
で、これを纏めきるのにおおよそ三日ほど費やした。
いやうん。基本的に子供を相手にしているような物だから凄く疲れるし、すぐに話が脱線したりするから大変なんだよ。
聞き分けが良いのがせめてもの救いだけど。
「後はこれと聞き分けのいい子を連れてミズキに親父……それからコウゾー爺さんかクレイヴ辺りに伝えておかないとな。魔獣と間違われたら悲惨すぎる」
俺は建物の外に出る。
雨は既に止んでおり、空には虹が架かっている。恐らくだが梅雨明けももうすぐなのだろう。
そして、建物のすぐ隣にあったクレーターも長雨のせいなのかいつの間にか湖の様になっている。水不足を心配しなくていいのはありがたいけどな。
「そう言えばまだ種族名を付けてなかったな」
「「「?」」」
と、ここでふと思い立ったので俺は自分が書いた資料に一度目を通してからしばし黙考する。
彼らは俺の種子に竜の血がかかって生まれた。そして詳しい内容は忘れたが、前世では竜の体の一部から戦闘能力に優れた人間たちが産まれたなんて神話もあったはずだ。
だから俺は彼らが強く生きていけるようにこう名付けるとしよう。
「『スパルプキン』 それが俺たちの名だ」
新種族スパルプキンが現れました。
ちなみにステータス的には敏捷・器用・精神は高めで、筋力・HPは低めな感じです。
TRPG的には補助系を中心に魔法を使えるシーフと言ったところですかね。
03/19誤字訂正




