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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第50話「竜と南瓜-6」

「あいたたた……あー、予想以上どころかキチガイな威力だな……」

 戦っていた場所が豆粒の様に見えるほど遠くに飛ばされた俺の視界にきのこ雲改め南瓜雲が立ち昇っている。ちなみに南瓜雲に三つのくぼみがあるが、そこは突っ込まないでおく。きっと魔法の副次作用だ。

 で、近くに戻らないと分からないが恐らくは爆心地には特大のクレーターが出来上がっているだろう。

 それだけの威力があの爆発……【共鳴(レゾナンス)魔法(スペル)(アトミック)南瓜(パンプキン)】にはあった。

 【共鳴魔法・核南瓜】は俺が現状使える共鳴魔法で一番威力が高い共鳴魔法として想定して作っていた物で、具体的には俺の身体の一部である果実を【レゾナンス】で強化した上で半ば【オーバーバースト】させる形で発動させた魔法である。

 が、実を言えばまだ実験段階どころか本来ならば準備段階であり、実用性があるとは言い難い。

 実際、制御も何も効いていないから今の俺の様な状況になっているわけだし。


「とりあえずミズキは……」

「うぷっ……生きてるわよ……」

 そしてミズキを探そうと周囲を見渡したところで、木陰からゆっくりと現れる。

 が、その顔色は悪い。どうやら爆発の際に撒き散らされた俺とエントドラゴンの魔力に当てられているようだ。

 よくよく見ると周囲に居る野生動物たちもどちらかと言えば気分が悪そうだしなぁ……うーん。ウリコたちマウンピール村の人たちに変な影響が出たりしてなければいいんだが……。

 まあ、帰ったらきちんと調べておくか。


「おぶっていくか?」

「大丈夫。近くに川があるから私はそっちを伝って戻るわよ。水の中の方がまだ気分よさそうだし……」

 俺の申し出に対してミズキはそう返すとふらつきながらもゆっくりと森の中に消えていく。

 うーん。あそこまでふらふらしてると色々と不安になるな……ミズキだからたぶん大丈夫だろうけど。


「俺も戻るか」

 そして俺はとりあえず爆心地とマウンピール村の状況を確認するべきだと思い、木々の上を飛んで爆心地を目指した。



■■■■■



「あいたたた……大丈夫ですかな?ロウィッチ殿」

「私は大丈夫ですのでご心配なく。コウゾー協会長」

 俺は正面に座っているコウゾー・アンジン協会長に声を掛けながら立ち上がる。

 よく見ればコウゾー・アンジン協会長の額からは僅かに血が出ている。恐らくは先程の揺れの際に机か何かにぶつけたのだろう。


「いやはや、それにしても突然大きく揺れましたな……」

「そうですね。ここまでの地震は本当に珍しい」

 何があったのか大体の所は把握しているが、俺は東の方向に遠視と透視の魔法を使って具体的に何があったのかを確認しつつ何も知らない体を装って応えていく。


「ロウィッチ殿。すみませんが、今日の取引は中断させていただきます。ここまでの揺れになりますと儂も事態打開のために指揮をとらなければなりませんので」

「お構いなく。私も店の方に戻って被害が無いか確認しなければいけませんし、もう夜もだいぶ更けていますので」

「ありがたい言葉ですの。では、失礼」

 そしてコウゾー・アンジン協会長が部屋の外に出ていき、俺もその後に続いて部屋の外に出ると自分の店である『ウミツキ文房具店』に向かう。


「それにしても……」

 遠視の魔法で東の空を見るとそこにはきのこ雲によく似ているがきのこ雲とは違う雲が地面から立ち昇っていた。

 あの雲と先程の特徴的な揺れ、それに雨が降っていて分かりづらかったが戦いが起きていた事から察するにやはり原因は先日俺の店に訪ねてきた南瓜姿の転生者だろう。


「はぁ……面倒事を起こしてくれるなぁ……報告作業だって面倒なんだぞ……」

 俺は揺れで多少がたついている『ウミツキ文房具店』の扉を開けるとゴミ一つ転がっていない店舗部分を抜けて私室に入り、棚の上に置かれている海月型人形の頭をデコピンで弾く。


『ツウシンチュー、オマチクダサーイ、ツウシンチュー、オマチ……』

「あー、やっぱり魔力分布とかに大きな乱れが出てんなぁ……」

 俺は言葉づかいを余所行きから身内向けに直すと部屋に置いてある会社から支給された機器が自動検知した様々なデータに目を通していき、その内容をまとめていく。


『ツナガリマシター!こちら多次元間貿易会社コンプレックスです。本日はどのようなご用でしょうか?』

 海月型人形がこの世界以外の場所に繋がると同時に事務的で機械的な抑揚のない口調でのアナウンスが流れる。


「こちらR05-I14-C01世界に出向中のロウィッチ。パスワード『プリティーでキ●アッキ○ア』。諜報課に接続お願いする」

『ニンシキチュー、ショウゴウチュー、セツゾクチュー、はい。こちら諜報課のスパイン』

 そして服装を今居る世界での一般的なものからお気に入りの魔法少女服に着替えつつ、海月型人形にパスワードを入れた所で目的の相手に通信が繋がる。


「ロウィッチだ。ちょっと緊急で報告したい事があったから繋げた。今からデータを送る」

 俺は海月型人形にデータをまとめた記憶媒体を挿し込み、スパインにデータを送る。


『どれどれ……第四級破壊魔法か。R05-I14-C01世界と言うと破壊神(笑)でも召喚されたのか?』

「いや、原住民がぶっ放した。詳しい内容については定時報告で送るけど中々の威力だったな」

『ふうん。新しい神が誕生する一歩手前って事か』

「俺たちみたいに特殊な種族でないとこの先が長いけどな」

『それは確かに』

 通信先のスパインが笑っている声が聞こえてくる中、俺は自作のファンシーなステッキを手に持っていくつかの決めポーズをしながらお気に入りの映像を大型スクリーンで流して観賞し始める。


「そう言えば社長は?」

『ちょっと前に出かけ……『ニャアアアァァァ!』『プログラミングをさせてくれー!』』

「…………」

『…………。帰って来たな。って『塔』の娘たちの一人に行方不明だったプログラームを連れて来てるし。一体何があったんだ?ちょっと探って来るわ。じゃ、正体バレへの注意と定時報告忘れんなよ。……。ツウシンキレマシター』

「はぁー……んなこと言われなくても分かってるっての」

 そして俺はどうやって正式な報告をまとめるかに少しだけ頭を悩ませつつ、大型スクリーンで流れている映像を楽しみ始めた。

最後についてはあの二人です


03/17誤字訂正

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