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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第46話「竜と南瓜-2」

「パンプキン居るか?」

「おっ、ヨサックさん」

 しばらく時は流れ、徐々に周囲の湿度が増してきて梅雨が近づいてきたなと感じて来た頃。

 リーンの森にある俺の拠点にマウンピール村の狩人であるヨサックさんが訪ねてきた。


「今日はどうしたんだ?」

「ちょっとした連絡だべ」

「連絡?」

 ヨサックさんは簡易の椅子代わりに用意した切り株に腰掛けて農作業をしている俺の方を向く。

 ちなみにヨサックさんはタンゴサックとの関係が改善してからはこうして時折俺の拠点にやって来てはマウンピール村についても含め、外に関するあれこれを教えてくれるようになっている。

 後、畑の状況としてはどの野菜も無事に芽を出し始めてる。


「キミコ……ああ、タンゴサックの嫁のことだ。そのキミコさんとタンゴサックの間に子供が生まれただ」

「マジで!?いつの間に……」

 で、俺はヨサックさんの言葉に思わず農作業をしていた手を止めて目を大きく開き、ヨサックさんの方を向く。


「マジ?都市部の言葉だか?ってああ、時期についてはつい一昨日だ。多少時間はかかっただども無事に生まれただよ」

「あー、なるほど……そりゃあ良かった」

 続けて発せられたヨサックさんの言葉に俺は安堵の言葉を漏らす。

 いや、実際のところ本当に安心した。正直に言ってこの世界の技術レベル的に不測の事態への対応能力はそこまで高そうではないし、そうでなくとも出産てのは中々に危険性が高いらしいからな。無事に終わったなら本当に良かった。

 と言うか、無事に生まれたのならだ。


「それで、今日はパンプキンにそのことを伝えに来たんだもの……見に行くだか?」

「勿論!ヒュロロロォォ!!」

「のわあああぁぁぁ!?」

 見に行くしかないだろう!

 そして俺はヨサックさん抱え、子供への贈り物を持った状態で森の上を飛んでマウンピール村に向かうのであった。



----------------



「到着!」

「あいたたた……とんでもないスピードだったべ」

 で、しばらく飛んで無事にマウンピール村に到着。

 俺はヨサックさんを下ろすとすぐさまタンゴサックの家へと向かう。


「すいません。お邪魔しまーす」

 そして道中でタンゴサックが家に居ることを村の人たちに確認しつつ、一応の礼儀として声を掛けながら俺はタンゴサックの家に入る。


「おお、来ただか」

「おう。一か月ぶりだな。親父」

 家の中に入った俺に対してタンゴサックが声をかけてくる。

 そして家の奥の方から感じるタンゴサックのものでは無い別の人間の気配が二人分。

 これがキミコさんと子供だろう。


「ヨサックさんから話を聞いてきたんだ。顔を見せてもらっていいか?あっ、こっちはお土産の揺りかごな」

「ありがとだ。キミコもウリコも喜ぶだよ」

 タンゴサックは俺から鋼線蔓の揺りかごを受け取ると俺を家の奥へと案内してくれ、俺はそれについて行く。


「あらいらっしゃい。貴方がパンプキン君ね」

「初めましてキミコさん。ご出産おめでとうございます」

「礼儀正しいのね。ありがとう」

 そして部屋の中に入ったところで茶髪で黄色系の色が若干混ざった薄い色の魔力を持った女性……キミコさんの姿が俺の視界に入り、俺は一度頭を下げる。

 うーん。それにしても俺とタンゴサックの関係は親子でいいとしても、俺とキミコさんの関係はどう表せばいいんだろうな?一応、親子が一番近いとは思うけどさ。


「そちらが?」

「ええ、ウリコよ。貴方の妹になるわ」

「っつ!?」

 キミコさんが抱えている赤ん坊を見せてくれる。

 そしてその赤ん坊……ウリコを見た瞬間、俺は何とか外には出さずに済んだが内心では大きく驚く。


「どうしたの?」

「い、いえ……」

「きっとウリコの可愛さに当てられたんだっぺ」

「確かにそうかもしれないわね」

「ハハハハハ……」

 二人の反応から察するに気づいてはいないのだろう。

 と言うより気づいているなら何かしらの行動を既に起こしていると思う。


「……」

 俺は自分の妹であるウリコの顔を見る。

 天使のように可愛らしいが、それはまあ当然の事なのでさておいて、髪は茶髪であり、目の色は眠っているから分からない。だがそれよりも驚くべきはその魔力量。

 ウリコの全身から漂っているのは混じり気のない透明の魔力だが、流石に俺ほど量は多く無い。

 しかし、両親であるタンゴサックやキミコさんよりは明らかに多いし、ヒューマンとしては多めであったはずのリオや、ヒューマン以外の亜人と比べても魔力は多い。総合的に見れば赤ん坊であるにも関わらず既にヒューマンとしては並外れた魔力を持っていると見て良いだろう。

 だが、だからこそ拙い。

 魔力の量が多い生物は強い。だが、倒せればその血肉はとても美味である。

 では、仮の話だが同じ美味しさで倒しやすい相手と倒しづらい相手が居れば野生動物ならどちらを襲うだろうか?

 そんなのは決まっている。弱い方の相手だ。


「どうしただ?」

「あー……一応伝えておく」

 そして俺は迷ったが、タンゴサックにウリコの保有している魔力の量の多さについて伝えておく。心構えがあるのとないのとでは実際に何かが起きた時にする瞬間的な判断能力に差が出るだろうからな。


「そうか……分かっただ。警戒はしておくだ」

「ああ、俺も出来る限り様子を見に来て、森の動物たちを牽制しておく」

 タンゴサックは俺の言葉に納得の表情を見せ、俺もタンゴサックたちを助けるための提案を口にする。

 それにしてもだ。こうなると今度のミズキと一緒にやる竜狩りは絶対に失敗できないな。

 竜がどういう生態の生き物なのかは分からないが、この世界に生きる者ならより魔力が多いものを好むはず。

 となればウリコのためにも間違っても負けるわけにはいかない。

 俺はそうして決意を新たにすると、タンゴサックに別れを告げて森の中の拠点に戻るのであった。

既にシスコン化


03/12誤字訂正

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