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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第42話「帰って来た南瓜-5」

「ふう。意外と時間がかかったな」

 俺は最後の木板をはめ込んだところで一息ついて今まで掘った水路を見返す。

 その水路は両脇が木の杭と板で土止めがされており、底については石を敷き詰めることで土が盛り上がるのを防いである。

 まあ、そうは言っても所詮は素人工事なので実際に水を流し始めたらいくらでも問題点は出てくるだろう。出てきたらその都度直すだけでもあるが。


「お疲れ様。これで後は栓を抜くだけね」

「おっ、ミズキか。だな。後は実際に水を流すだけだ」

 と、ここでミズキがやってきたため、俺はミズキと一緒にアキューム湖の方へと向かう。

 そこには俺が掘った水路とアキューム湖の間を遮るように他の物よりも強固に作られた木の板が填め込まれていた。

 後はこれを抜くだけでアキューム湖から水が流れ込んで水路が完成するわけであり、そう思うと感慨深いものがある。

 作成期間一月もかかってないけどな!この身体のハイスペックぶりには毎度驚かされるぜ!

 いやうん。実際一日12時間重労働とかしてもまるで疲れないからね。魔力による自己強化も楽になっている要因の一つとして有るだろうけど、それ以上に光合成による自動回復が便利すぎる。


「じゃ、早い所抜いちゃいましょ」

「ん?ああそうだな」

 と、何時までも感慨に耽っているわけにもいかないので、俺は木の板に蔓を一本伸ばして触れる。


「【レゾナンス】【オーバーバースト】」

「ちょ!?」

 そして驚くミズキを無視して木の板に大量の魔力を流し込んで【オーバーバースト】で爆破し、爆発と同時に大量の水が水路に流れ込んで水路を水で満たしていく。


「パンプキン!?貴方何で木の板を抜かずに爆破してるのよ!?」

「いやだって、木の板をわざわざ抜くとか面倒じゃんか。それにほら、もし水路の下流に誰か居ても今の爆破音で気づいてくれるかもしれないし」

「はぁ……相変わらずと言うか何と言うか……」

「はっはっは」

 ミズキはため息を吐くが、俺はそれを笑い飛ばす。

 実際の所引っこ抜くとなると中々に面倒なんだよね。水圧でそもそも抜きづらいし、抜いたら抜いたで大量の水をどう凌ぐかと言う問題もあるし。それを考えたら最適解はやはり爆破ですよ。うん。


「さて、それじゃあ予定通りに流れているかを確認するために合流地点の沢まで歩きますか」

「あ、私も付いて行くわ。漏れとかあって困るのは私も一緒だし」

 そして俺とミズキが水路の出来を確認するために水路に沿って歩き出そうとしたところで……


「「「タンゴサックウウゥゥ!!」」」

 森の中……と言うか水路の先から以前も聞いたことがあるような叫び声が聞こえてきた。


「…………」

「…………」

 俺とミズキはその声を聴いて顔を見合わせる。

 ミズキの顔は苦笑いで、多分だが俺は凄くげんなりとした顔をしているだろう。


「ぶっちゃけ行きたくねぇ……」

「諦めなさい。これは私たちが悪いわ」

 そして俺たちは水路に沿って移動を始めた。



----------------------



「ゲホゲホッ!酷い目にあっただ……」

「あんのカボチャはこっちの事も考えねえで全く……」

「にしてもこりゃあ水路か?パンプキンの奴何でこんなものを……?」

 アンレギラットを【オーバーバースト】で爆破して作った旧クレーター、現ため池に変わりつつある場所で俺はリーンの森の麓にある村……マウンピール村の狩人ほか住民数名にクレイヴを始めとした冒険者たちが居るのを見つける。


「それにしてもどしてごんな物をあのカボチャは作っただ?」

「こんの前の爆発と言い、何か危ない事どかしてんじゃなかと?」

「あー、あー……」

 で、ぶっちゃけ凄く出て行きづらい。

 何て言うか冒険者の方はともかくマウンピール村の皆さんからの敵対心がすごく伝わってくる。と言うかクレイヴよ。お前は何故そこで否定しない。そこで否定してくれればこちらとしても動きやすいと言うのにだ。

 でも、行くしかないんだよなぁ……行かないと話が進まないんだよなぁ……ミズキも早く行きなさいよ。って言う目をしてるし。はぁ。行くしかないか。


「あー、叫び声がしたが大丈夫か?」

「「「!?」」」

「出だな!オラのカボチャ!!」

「おう。パンプキンか」

 俺はとりあえずクレイヴに向かって手を上げて挨拶をする。

 いやー、それにしてもマウンピール村の皆様からの視線が痛い。当然の反応ではあるんだけどな。


「あん時と言い、今回と言いオラに何が恨みでもあるっぺか!?」

「そう言うつもりは無いんだけどなぁ……」

 で、特にキツいのがカボチャに転生した当日に俺を収穫しようとした人間……確かタンゴサックとか呼ばれてた人からの視線である。

 あれ?と言うかもしかしなくても立場的にはこの人が育ての親でいいんじゃね?あー、そう思うと余計に気まずいな。


「あー、とりあえずお前が何をしたか聞いていいか?一月ぐらい前にあったと言う爆発音の原因も含めてな」

「と、言われても水路を掘って水を流しただけだぞ。あ、爆発音の方はこのため池を作る時に使った爆発系魔法の音な。出力調整ミスって威力が高くなりすぎたんだわ」

「要するに魔法の研究をしていたらって事か」

「そう言う事だな。水路を掘った理由は他にも有るけど」

「?」

 俺はクレイヴの質問に淡々と答えつつミズキの方を向く。

 で、視線だけでミズキに「お前の事を言った方が良いか?」と訊く。それに対するミズキの返答は首を横に振る事。つまりは言うなという事らしい。


「ほら、アキューム湖って有るだろ?あそこの水が美味いから家の近くまで引いてきたんだよ」

「ああ、なるほど」

 俺の言葉にクレイヴ始め冒険者組は納得したのか頷く。

 マウンピール村の人たちは……狩人さんとタンゴサックは未だに疑惑の目で見てるなぁ……うーん。どうしたものか……。

 とりあえずどうしてクレイヴたちがいるのかを訊いておくか。


「で、クレイヴたちはどうしてリーンの森に?」

「爆発音の調査にマウンピール村の皆さんの護衛だな。あ、マウンピール村の人たちは春の山菜取りとか、クロイングボアの狩猟とかな」

「ああ、なるほど」

 確かに今の時期は色んな山菜とか取れるもんなぁ……で、クロイングボアとかのことを考えたらよほど自分の実力に自信が無い限りこの森での単独行動は命取りだもんな。護衛が付くのも納得するわ。

 と、ここでクレイヴが何かを考え込む様子を見せる。で、ポンと何かを思いついたかのように手を一度叩き、こう提案した。


「よし。いい加減色々な軋轢とかを解消しよう。と言うわけでパンプキン。お前ちょっとマウンピール村まで来てくれ」

「「「はぁ!?」」」

 そしてその提案にその場に居た殆どの人間が茫然とし、思わずそう漏らした。

二度目の叫び声


03/08誤字訂正

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