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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第38話「帰ってきた南瓜-1」

「ヒュロロロォォ!たっだいまー」

「お帰りなさい。随分とかかったじゃない」

 およそ半日でクヌキハッピィの門前からリーンの森上空を高速で飛びぬけた俺はアキューム湖の畔に降り立ち、ミズキの姿を見つけるととりあえず挨拶をする。


「いやまあ、本当なら買い物だけやってとっとと帰るつもりだったんだけどねぇ……」

「何かあったの?」

「いやうん。本当に色々あったんだよ……」

 と言うわけで森の中から熊とか猪とかが何匹か近づいてきているようなので身に纏っている魔力を森の外仕様から森の中仕様に戻しつつ、地面に魔力放出を極限にまで抑え込んだ根を突き刺す。


「ブヒィ!?」

「グマアァ!?」

 そして森の中から響いてくる獣たちの叫び声に根を通して伝わってくる肉を突き刺す感触と美味しい血を吸い上げる感覚。

 うん。やっぱり森の中の生物の方が色々と美味いな。冬眠明けにわざわざ来ていただきありがとうございました。

 え?何をやったのかって?魔力放出の一切を抑えることで強化をすると同時にステルス仕様にした根で地面の中から獣たちを突き上げてやっただけの話である。


「とりあえず説明タイム要る?」

「要るわね」

 そう言う事でアキューム湖の美味しい水で口直しをしつつクヌキハッピィであったことを俺はミズキに話し始めた。



-----------------



「とまあ、そんなこんなで帰ってくるまでにこんなに時間がかかる事になったわけだ」

「随分と大変だったみたいね……と言うかそのリオって子の事情。関わったら絶対に面倒な事になるわね」

「うん。だから俺も偶然の結果として関わることになったら諦めて全力で関わるけど、積極的に関わる気は無い」

 で、一通り話し終わったところでリオについてミズキがそう言う感想を漏らしたので俺もそう返しておく。

 まああれだ。街に行った時に一緒に依頼を受けてくださいとか助けてと言われたりとかしたら関わるけど、自分からリオがどこに居るかを探してまで関わる気は無いという事だ。

 実際そう言う関わり方はストーカーとしか思われないだろうしな。


「ああそれでだ。これがお土産な」

「あ、買って来てくれたんだ」

 俺はクヌキハッピィでミズキの為に買ったお土産の袋を取り出すとミズキに投げ渡し、ミズキはそれを水を操って空中でキャッチする。


「どれどれ、これは……飴?」

「おう」

 袋の中から飴玉を取り出して見たミズキは首を傾げる。


「うーん?」

「何を悩んでいるんだ?」

「別に悩んでないわよ。ただ、パンプキンにしては良い物を買って来たなぁと思って。だって、私たち精霊って魔力の塊が意思を持った存在だから服とかアクセサリーとかは貰っても使えないし、普通の菓子だと直接味わうのは難しい。他にもまあ色々とお土産候補になりそうなものはあるけど大抵は精霊にとって無用の長物じゃない。その中でよく飴玉何て言う水精霊でもある私でも味わえるものを選んだなぁ……って」

「お、おう……」

 すみません。ミズキさん。私そこまで考えていませんでした。単純に露店で見ていて他の菓子よりも魔力が多く宿っていたから、美味しそうと思ったから買ってきただけなんですごめんなさい。

 まあ、実際の所はどうあれ喜んでもらえたなら別にいいか。


「うん。甘くて美味しい」

 現に水の中に飴玉を溶かしてその甘い味わっているみたいだし問題なし。問題なし。


「で、そっちは羊皮紙とインク?」

「おう。保存系の魔法がかかってるっぽいぞ」

「ふーん」

 ミズキが羊皮紙とインクに顔を近づけてじっくりと観察する。

 その目はかなり真剣だ。

 そして一通りの観察を終えた所でミズキが口を開く。


「これ……この世界の魔法じゃないわね」

「どういう事だ?」

 ミズキの言葉に俺は疑問符を頭の上に浮かべる。

 この世界の魔法ではない……となるとリーン様の言う所の世界(アウター)()外側(ワールド)が関わっている可能性が高そうだが……普通のヒューマンでないのは魔力からして確かだが一介の文房具屋がそんなものに関わりを持っているのか?

 いや、それ以前に何故ミズキはこの世界の魔法でないと判断したんだ?

 俺はミズキに視線を向ける。すると一度肯いてからミズキは明らかに警戒している顔を表に出しつつ説明を初めてくれる。


「精霊ってのはこの世界に根差す存在なの。だから現物さえ見せてもらえればその魔法がこの世界の法則に基づいているかぐらいかは分かるわ。そしてこの羊皮紙にかかっている魔法はこの世界の魔法法則に基づいて発動するのならば破綻を免れないはずなの」

「なのに何の問題も無く魔法は発動している……だからこの世界の魔法ではない。という事か?」

「ええ。誰が作ったのかは分からないけど凄い高度な技術と膨大な力を持って作られているわ。尤も精霊以外ではそもそもこんな事は分からないだろうけれど」

「ふーむ」

 うーん。こりゃあ次に街に行く機会があるなら多少の探りは入れてみるべきかもな。敵対しない限りは気にしないとか言ってられないわ。

 まあ、次の機会があればだが。


「それでこれからどうするの?パンプキンが居ない間に貴方の家に人間たちが来てたみたいだけど。あ、荒らされてたりとかはしてないから安心しなさい」

「え?」

 ミズキさん……その話は初耳なんですけど!?


「まあ、不安なら一度帰ってみれば?」

「ああうん。そうする。明日以降どうするかも考えないといけないし」

 そんなわけで俺はミズキに別れを告げると急いで卵形の岩にまで戻るのであった。

こんなところにも世界の外側が

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