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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第36話「街に来た南瓜-10」

「それじゃあパンプキンさん。お母さん。私は夕飯を作ってるから何かあったら呼んでくださいね」

「おう」

「よろしくね」

 そう言ってリオが俺とリョーコさんを残して部屋の外にて出ていく。

 さて、時刻は日暮れ間近。夕飯時という事で周囲の家々からは良い匂いがしてきているだけでなく、リオの家でも今日買ってきた様々な食材を使って普段より多少豪勢な料理を作る予定である。

 理由?俺が明日の朝一で帰るとか、リョーコさんの体調が多少良くなったとかですが何か?


「それで話とは?」

「ああそうだな」

 ま、その辺は置いといてこちらはこちらで話すべき事を話しますかね。


「まずリョーコさんは転生者でいいんだよな」

「ええ、と言っても覚えていることはあまり多くないけどね」

 そう言ってリョーコさんは枕元に置いてあった短剣を見事な手捌きで操ってみせ、見舞いの品として置かれていた林檎を一瞬にして綺麗な兎型にする。

 ふむ。これだけの短剣捌きは確かに今世だけで習得できるものではなさそうだな。


「ふむ。それじゃあ転生者であると同時に冒険者としても高位だったリョーコさんに質問なんだがこの世界でいう大災害や大規模な破壊行為ってのはどんなのなんだ?」

「大災害ねぇ……」

 俺の言葉にリョーコさんが少し悩むような素振りを見せる。


「私が思いつく限りだと邪法に属する魔法にそういう物があるわね。昔、冒険者として活動していた頃に破壊神信仰の連中が王都にそう言う魔法を使おうとしていたのを止めた事があるわ」

「んー。具体的には?」

「私が止めたのだと破壊神の一部を召喚して指定した範囲内を更地にする。と言うものだったわね。もし止めるのに失敗してたら今頃は歴史が変わっていたかも」

 うーむ。それは中々に恐ろしい。

 しかし、そうなると『陰落ち』も破壊神関連の何かと見るべきなのかねぇ。

 リーン様の言葉から察するにはそんな甘い物とは思えないけど。


「ただね。これは私が直接関わった範囲内の話なの」

「ん?」

 と、ここで唐突に続いたリョーコさんの言葉に俺は首を捻る。


「冒険者として活動していると色々と説明が付かない物に遭遇することがあるのよ。明らかに外的な要因で作られた……それも破壊神そのものを召喚して作ったとしても説明が付かない程巨大な渓谷やクレーターとかね」

「…………」

 リョーコさんの言葉に俺は思わず息を呑む。

 破壊神と言う仮にも神の名を冠する存在であっても出来ないと思わせる規模の破壊……恐らくだがそれこそが『陰落ち』によって発生した被害の一端という事になるのだろう。


「その……その渓谷やクレーターは何処に?」

「一番近い所ならこの街の北にある山を越えた先ね。ただ、あの辺りは生息している魔獣の関係で殆ど人跡未踏の地になっているから行くなら気を付けなさい」

「……。はい」

 リョーコさんの真剣な眼差しに俺は思わず背筋を正して答える。

 既に第一線を退き、呪いによって体が弱っているとは言え、それでも内包している魔力量やあの短剣捌きからして相当の実力を持っているはずのリョーコさんが警戒する場所か……これはそれ相応に実力を付けてから行くべきかもな……。


「それで、話はこれだけかしら?」

「ああいえ、実を言えばもう一つ」

「リオの事かしら?」

「!?」

 もう一つ気になる事が有ったのでそれについて質問しようとしたところで言われたリョーコさんの言葉に俺はまたしても息を呑む。


「分かるわよ。それに聞きたいのはあの子の父親の事じゃ無くて、あの子が無意識に使っている魔法の方でしょ?」

「えーと、そんなに分かり易いですか……?」

 リョーコさんの言葉に俺は思わず頬を掻きながら訊き返してしまう。

 実際、リオの父親に関しては聞いただけでも面倒事に巻き込まれる気しかないので訊く気は無く、それよりも俺が訊きたいのはリオがどうして周囲の人間にあそこまで信頼されているかについてである。

 と言うのもリオの信頼のされ方は明らかに本人の実力以上(ここで言う実力には性格なども含んでいる)であり、何かしらの力が働いていなければあそこまで信頼されるのは難しいだろうと感じたからなのだが。

 それにしても無意識レベルでの魔法か……一体何だ?


「この辺は人生経験の差ね。これでも前世と合わせれば50年以上は生きているもの。って、話がずれたわね。あの子が無意識に使っている魔法については様々な呼び方がされているし、だいぶ魔法に詳しい人間じゃないとそもそも魔法じゃなくて人柄や性格、素養の一部として認識されている物なの」

「ふむふむ」

「で、肝心のあの子が使っている魔法は王者の風格(カリスマ)または魅了(チャーム)と呼ばれる類の魔法ね。と言っても本人の性格や魔力の関係で多少好感度にプラスの補正が付く程度だけど」

「…………」

 えーと。リョーコさん?今中々にヤバい名称の魔法が出た気がするんですが気のせいですか?

 と言うか好感度ってギャルゲーじゃあるまいし……ああ、リョーコさん転生者だからギャルゲーを知っている可能性があるのか。それなら分かり易い説明のためにそう言う事は考えられるのか……リーン様ってば何故そんな知識を残したし……


「まあ、心配しなくても大丈夫よ。あの子がそう言う力を持っているのはあの子が産まれる前から気づいていたし、しっかりとした倫理教育は施したから拙い事には早々ならないわ」

「それならいいんですがねー」

 俺は口ではそう言うが、実際の所はそんなに心配していなかったりする。

 ほんの数日の付き合いとは言え、早々あの明るく素直な性格が捻じ曲がるとは思えないしな。


「そもそも貴方もあの子や私が(前世)で仕えていたあのお方の様に似たような力を持っているみたいだし。これは強い魔力を持つ者の特徴と言えるかもしれないのよね」

「え!?」

「夕飯出来たよー」

「あら気づいてなかったの。それじゃあヒントはこれぐらいにしておくわね。今行くわー」

「えっ?えっ!?えー!?」

 そしてリョーコさんの爆弾発言に混乱する俺を放置したままリョーコさんはリオの居る所へと向かってしまうのだった。

 ちょ!?俺は自分にそう言う力があるのを認識してないんですけどー!?

流石に事情通です

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