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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第33話「南瓜と狩猟蜂-1」

「ほー、あれがそうか」

「何で俺が……」

「諦めろ。今回はしょうがない」

 リオの母親の呪いを解いてから三日経った。リオの母親は流石に呪いが強力なだけあったためにまだ全快とはいかないが、もうしばらく経過を見守れば良いぐらいにはなっている。

 そして今日までの間に英語と同じく文字列で発音と意味が決まっているこの世界の文字を覚えたり、俺が買いたい物のだいたいの物価を調べたり、ちょっとした仕事を協会で受けて小銭を稼いだりしたついでにランクがDに上がったりしたのだがそこはまあさておいて。

 今は俺、リオの母親の件で知り合ったリザードマンの男性クレイヴ、今回諸事情により一緒にPTを組むことになったドワーフの男性カナドの三人でクヌキハッピィ近くの森にやってきていた。

 なお、クレイヴは金属製の剣と盾、それに鎧を身に着けた重戦士でタンク役。カナドは両手鎚に革製の防具、それから自作と思しき魔力が込められたアクセサリをいくつも身に着けた重戦士で攻撃役である。


「それにしても蜂と交渉なんて出来るのか?」

「出来る出来ないではなくやるしかなかろう」

 そう言ってクレイヴとカナドがそれぞれ肩に担いでいる袋を見る。

 袋の中には大量の果物や花が入っていて周囲に良い匂いをばら撒いており、本来ならばこの匂いを感じ取って大量の魔獣が集まってくるだろう。

 が、現在は俺がある程度魔力を放出しているために魔獣は遠巻きにこちらを眺めているだけである。

 それでも接近して来れば二人が認識する前に俺が潰すだけなのだが。


「と言うか今回の件の元凶はどうなったんだ?」

「元凶……ああ、モノキオ、カラムジ、トリリスの三人か。あいつ等なら自らの無知で多くの冒険者及び一般人を危険に晒したという事で降格。加えて強制的に基礎講習を受けさせることになった」

「ふうん。そう言う流れになってたんだな」

「相変わらずウチの協会長は温いな。他の街の協会なら良くて追放ものだぞ」

「まあ確かに温いとは思う。ただ、そこがうちの協会長のいい所でもあるだろ」

 俺の質問にクレイヴが答え、カナドが意見を出す。

 実際の所、その元凶のせいでリオが死にかけた事を思うと色々と納得がいかない所もあるがそこは俺が口を挟む所では無いだろう。

 それに、もう一回似たような事をやったら流石にコウゾー爺さんでも許さないだろう。


「と、そろそろ奴らのテリトリーだな。パンプキン。その無茶苦茶な魔力を抑えてくれ」

「了解っと」

「ふう。だいぶ呼吸が楽になるな」

 と、ここでクレイヴの言葉を受けて俺は放出していた魔力の量を近づく気も起こさせないレベルから警戒はしつつも近づく気にはなる程度のレベルに落とす。

 カナドが呼吸が楽になったとか言っているが、絶え間なく魔獣に襲われるのと多少呼吸がきついのとどっちがマシなのかは語るまでも無いだろう。


「さて、それじゃあ今回の依頼内容の再確認だ」

 クレイヴの言葉に俺とカナドが頷く。


「今回の依頼はクヌキハッピィ冒険者協会協会長コウゾー・アンジン氏からの依頼だ。依頼内容はクヌキハッピィ冒険者協会に所属するとある冒険者が起こした不祥事の後始末……と言うかハンティングビーとの協力関係の復活だな」

「ハンティングビーはその名に反して本来ならば非常に気性が穏やかであり、果物や花を渡す事で対価として蜂蜜をくれる友好的な生き物だったな。尤も巣を壊したりすれば流石に敵対関係になるし、そうなった時はかなり危険な生き物なわけだが」

「つまり今回俺たちが持ってきた果実は言い方を悪く言えば貢物とか賠償金とか言ったところになるわけか」

「まあそう言う事だな」

 森の中を警戒しつつ進みながら言った俺の身も蓋も無い言葉にクレイヴは蜥蜴の顔を歪めて苦笑する。

 ただまあ、そう言う事なら最悪リオの時の様に俺の魔力を集めた露をやるのも有りか。

 受け取ったハンティングビーは結構喜んでいたしな。


「ついでに言えば今回の面子に関しては万が一関係が最悪の状態になっても生き残れる面子。という事で集められたらしい」

「やはりそう言う事じゃったか」

 クレイヴの言葉に今度はカナドが苦笑する。

 ただまあ、確かにこの面子なら何があっても問題は無いだろうな。

 クレイヴとカナドの二人は俺が見る限りでは一般人に比べて相当魔力の量が多い上に種族特徴的に外皮が堅いから本気で肉体強化を施せば恐らくハンティングビーがどういう風に攻撃しても効果は無い。

 で、俺については言わずもがなだ。むしろその気になれば素手でハンティングビーぐらいなら虐殺できる。

 する意味が欠片も無いから間違ってもしないけどな。


「と、二人とも伏せろ」

「ん」

「了解」

 木の影に身を隠したクレイヴの言葉に俺は木の影に身を隠し、カナドは藪に身を潜める。


「「「ブブブブブ」」」

 そしてそうやって隠れている俺たちの上を通り過ぎて行くハンティングビーの群れ。

 様子を見る限りでは怒ってはいないが警戒はしているという感じだな。


「さて、ここからが依頼の本番だな」

「上手くいくといいんだが」

「ま、上手くいかなかったら即とんずらするだけだ」

 そうして俺たちは多少軽口を叩き合いつつもハンティングビーたちがやってきた方向に向かって移動を始めた。

ハンティングビーたちが再登場です


02/27誤字訂正

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