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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第32話「輪廻と南瓜-1」

 これは夢だろうか……


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……■■■」

 俺の前で一人の少女が女性の頭を抱えた状態で涙を流している。

 名前の部分は聞き取れなかったが、とにかく彼女が悲しんでいることは分かった。


『泣かないでください……』

 その中で突然一人の女性の声が周囲に響き渡り、俺は声がした方を向く。

 するとそこには半透明のメイド服姿の女性が立っていた。


『泣かないでくださいお嬢様……』

 女性は複雑な感情を込めながら言葉を紡ぐ。


『お嬢様も彼女も間違った事なんてしていません』

 女性の言葉に込められた思いの全てを俺が理解することは出来ない。

 けれどその思いの一端に触れただけでもメイド服の女性がどれだけ今泣いている少女の事を思っているかは理解できた。


『貴方のおかげで私は救われたんです。貴方のおかげで私は過ちを犯さずに済んだんです。貴方のおかげで……』

 そこで彼女は一度呼吸を整える。


『私は人のままで逝くことが出来たんです』

 女性の頬を一筋の涙が流れ落ちていく。


『だからそんな顔をしないでくださいお嬢様……』

 女性が少女を背中側から抱きしめる。

 が、少女はそれに気づかずに泣き続けている。


『安心して逝けないじゃないですか……』

 そして周囲一帯が光に包まれて場面が変わる。



-----------------



「またここか……」

 光が晴れるとそこには以前訪れた奇妙な世界……リーン様の声を聞いた場所。つまりは世界の外側だった。

 ただ、何となくだが以前よりも変化が発生するスピードが遅くなっている気もする。


「そこにいらっしゃいますね。リーン様」

「…………」

 俺は使い慣れない敬語で何となくだがリーン様の気配がする方に語りかける。


「使い慣れない敬語は要らない。貴方の好きなようにして欲しい……」

「なら素の口調で行かせてもらうわ。で、先ほどの光景は何ですか?」

 俺はリーン様の言葉にそう返答してさっきの光景が何だったのかをリーン様に問いかける。


「あれは何時か何処かの世界で本当に起きた事。この時彼女の魂は大きく傷つき、アレに直接呪われたために魂の根本まで侵されその後の輪廻すら大きく狂わされることとなった。だから私は彼女の魂をこの世界に導いて長い休息を与え、いつの日か彼女にまつわる忌まわしき繰り返しを止めてくれる何かを探していた」

「それが俺だと?」

「貴方以外にも候補は多くいたけれど今回それを成し遂げたのは貴方。だから誇りに思っても問題ない」

「ふうん」

 俺はリーン様の言葉にそっけなく返すが、リーン様が言う終わらせてほしい繰り返しがこれだけとは思わなかった。

 現に『陰落ち』などと言う現象もまだ有るわけだし。


「その通り。今はやっと繰り返しが一つ終わったに過ぎない。けれど私が終わらせてほしい繰り返しの一つであったのは確か」

「そうかい。ならそれは良かった」

 リーン様の姿は相変わらず見えない。が、リーン様が喜んでいるのは何となく分かる。


「それでこれから俺にどうして欲しいと言う願い事とかはあるのか?」

「……。好きに生きればそれでいいと思う。貴方の場合はそうすれば断つべき繰り返しに自然と出会う事になると思うから」

「それは喜んでいいのか悲しむべきなのか……」

 リーン様の言葉に俺は思わず苦笑する。

 それはつまり俺が思うがままに生きた場合は何かとトラブルに巻き込まれると言っているような物だろう。


「大丈夫。貴方にとって断つべき繰り返しもそうして他の繰り返しを断ち続けていればその内見えてくるはずだから」

「……」

 リーン様はまるで正確に未来を見通しているかのように……いや、さっきの光景が過去の物だと言うのなら過去に見てきたかのように言う。

 いや、さっきから繰り返しと言う言葉を何度も使っている事や、輪廻転生を司ると言う力を考えればリーン様は本当にそう言う力を持っているのかもしれないな。

 ただ、丁度いい機会だし少し質問をしておくか。


「一ついいか?何でリーン様は自分で動かないんだ?アンタの事を知っている奴に話を聞いたら相当の力をアンタは持っていると聞いたんだが」

「…………」

「だんまりか。まあいいけどな。リーン様にはリーン様の事情があるんだろうし」

 俺はリーン様に以前会った時の言葉を思い出す。

 あの時の言葉から鑑みるにリーン様にとって見つかると拙い相手が居ると俺とミズキは考えたが、どうやらその考えと実際のリーン様の事情はそこまでズレていないらしい。


「貴方は貴方の思うがままに生きればいい。それが今の私から貴方に伝えられる言葉」

「!?」

 そしてその言葉と同時に先ほどとは対照的に周囲が黒く染まっていき、俺の意識はその場から急激に遠ざかって行った。



-----------------



「んがっ!?」

 で、気が付けば宿屋の一室で俺にしては珍しく浮遊魔法の制御に失敗して頭を床に打ち付けていた。


「んー……夢……じゃないよな」

 俺は先程のリーン様との会話を思い出してそう呟く。


「まあ、夢にしろ現実にしろ神様のお告げなのは確かか」

 そして俺は頭の中でリーン様の言葉に整理を付けつつ部屋の外に出るのであった。

Q:なんでホウキ?

A:冷静に考えてみるといい目をほぼ一切見てないから


なお、リョーコさんの前世はホウキではありますが、ホウキとリョーコさんでは考え方などは全くの別人です。

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[良い点] 一瞬ホウキがだれか忘れちゃってました...
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