第30話「街に来た南瓜-7」
「聞いておるのかー」
「聞いてますよー」
「あ、あの……」
リオの家に戻ってきた俺は地べたに正座をさせられ、コウゾー爺さんから説教を喰らっていた。
周囲にはどうしたらいいのか分からないと言った顔のリオに人を呼びに行っていたエルフとリザードマン。それから新顔である……と言うかリザードマンの方が呼んで来たであろう教会の人間だな。魔力の色的に種族はバードマンか。羽毛も見えるし。
まあとにかくそのバードマンさんも含めてそちらの三人に関してはどちらかと言えば呆れている感じだな。
「その顔は聞いておらんじゃろうが……」
「ハッハッハ!顔は元々でさぁ」
コウゾー爺さんが俺の頭を掴んで睨み付けてくるが、あの闇の魔力に比べたら全然怖くないです。
「てか、人一人救って何で怒られないといけないんだよ」
「確かにリオの母親に掛けられた魔法を解いたことは褒めよう。じゃがな!呪返しの際に貴様が放った魔力のせいでどれだけの人間が卒倒したと思っとるんじゃ!!怪我人こそ出とらんが一歩間違えれば大惨事になってたかもしれんのじゃぞ!!」
「しらんがーなー……」
コウゾー爺さんが俺の頭を掴んで激しく前後に揺らすが、この程度なんてこたぁ無いですねー
それからクヌキハッピィ市民の皆様。あの程度の魔力放出で倒れないでください。きちんと制御したから周囲に漏れ出た魔力なんて微々たる物でしょうが。
しかも漏れ出たのはあの黒い魔力じゃなくて俺の魔力だろうに。魔法に変換されても精々ちょっと強めの突風が吹く程度で直接的な害なんてありませんぜ。
「はぁー……このカボチャは何を言っても知らんがなと言う顔じゃなあぁ……」
「~~♪」
大正解ですよコウゾー爺さん。ハッハッハ。
後悔も反省もしてないよ!
「話はつきましたか?」
「あーもう。ついたついた。ついたことにしてやるわい」
「どうもでーす」
コウゾー爺さんは未だに俺を睨み付けてくるが、俺はそれを素知らぬ顔で流してヒューマンの神官服を着た男性の方を向く。
「それでパンプキンさん……でよろしいですか?」
「おう。間違いないぜ。アンタは?」
「私はこのクヌキハッピィに存在します創造神殿に務める神官の一人であり、名をプレインと申します」
バードマンの神官改めプレインさんが軽く会釈をして、俺もそれに応える形で会釈をした後に立ち上がる。
それにしても創造神殿か。ミズキ曰く創造神(笑)な創造神だったかな。まあ、きっちり普通の人たちを助けているなら特には気にしません。信仰もしないけど。
と、プレインさんの話に集中しないとな。
「まずはリョーコ=ホウキさん……ああ、リオさんのお母さんのことです。彼女を助けていただきありがとうございます」
「成り行きで助けただけだから気にすんな。それよりも仕事を取っちまって悪かったな」
「いえ、人命第一ですから詫びは要りません。ただ私は知りたいのです。今は健やかに眠っていますがリョーコさんの様子を見る限りでは相当強力な呪いだったはず。一体どうやってあれほどの呪いを跳ね除けたのですか?」
「あー……俺の個人的な技能とか魔法とかがかなり関わってくるから多分真似をするのは無理だぞ?」
「それでも構いません。そのまま使うことは出来ずともこの先私が人々を救うためのヒントになってくれるかもしれませんから」
俺はプレインさんの目を若干魔力を込めながら睨み付ける。
が、それでもプレインさんは一切目を逸らさず、ひたすら真摯に俺から教えを乞いたいという願いを持って俺の目に当たる穴を見返してくる。
ふう。プレインさんはある意味では狂信者と呼ぶべきかもな。だが、民の為ならば己の身をも顧みずに民を助け導くその姿は本来あるべき神の信徒の姿でもあると言えるか。
まあ、創造神殿の教義とか俺は一切知らないんだけどなー。
でもとりあえず教えるよ。教えた所で実行できるとは思えないしな。
「分かった。ただ細部はぼかすからな」
「ありがとうございます!」
と言うわけで【レゾナンス】とか魔力の色を見れる事とかは語らずにプレインさんに俺が何をやったのかを伝える。
「まあ、こんなところだな」
「なるほどなるほど」
「パンプキンさん。そんな事をしてたんですか」
「「「…………」」」
で、伝えた結果がこんな感じである。
なお、一番上から俺、感心顔のプレインさん、納得顔のリオ、ポカーンとしているコウゾー爺さん以下二名である。
と言うかコウゾー爺さんたち微妙に頬とか引きついてないか?まあいいけど。
「しかしこれは確かに私には真似出来そうには有りませんね」
「と言うか、俺にしたってリオの協力に加えてリョーコさんだっけ。彼女の魔力がある程度俺に近い属性でなければ無理だったと思うぞ」
これは本当に嘘偽りのない言葉である。
仮の話になるがもしリョーコさんの持つ魔力が緑ではなく赤に近かったら確実に助けられなかった。
と言うか、試した事が無いから分からないけど人体だって【オーバーバースト】を起こす可能性は十二分にあるはずだから輸血ならぬ輸魔力は本来なら細心の注意に魔力コントロール、それに専門的な知識を必要にすると思う。
仮に普通の人間がそれをやるなら最低限魔力の属性を自在に変える方法と相手の魔力の色を正確に知れる何かしらの方法は必須だろうな。
「ただ、参考にはなりましたし。実例がある以上はいつかは私にも出来るかもしれない。修行に励ませていただきますよ」
「だな。俺もまだまだ修行不足だし頑張らないとな」
「私も今度はこんなことにならないように頑張ります!」
「「えっ!?」」
「あれで修行不足とは恐ろしいのう……」
で、最終的にそう言う話になってリオに念のためという事でプレインさんとエルフとリザードマンのコンビ……ちなみに名前はエルフの女の方はアイリス、リザードマンの男の方はクレイヴと言うらしい。を残し、俺とコウゾー爺さんは宿に戻る事になった。
うーん。予定では今日中に買い出しを終えて帰るつもりだったんだがなぁ……まあいいか。人が助かったんだからそれで良しとしよう。
輸魔力は現状では本当に荒業です
02/24誤字訂正




