表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/163

第29話「街に来た南瓜-6」

今回ムゴイ表現が多少ありますので苦手な方はご注意を

「やっぱりキツイな……」

 球体に触れた俺の頭の中に女の物と思しき恨みつらみの声が何重にもなって響き渡ってくる。


「これは長らくつき合わされたら気が狂うな……」

 そう判断した俺は黒い魔力で構成された球体を圧縮すると蔓で巻き取って掴むと街の中で最も高い場所……教会と思われる建物の尖塔に向かって飛ぶ。

 すると球体に向かって飛んで来ていた黒い魔力もしっかりとくっついてくる。

 どうやらターゲットを逸らす事にはきちんと成功したようだ。

 となれば後はこの魔力をどう処分するかだけという事になる。


「さてやるか」

 俺は蔓を通して接触している黒い魔力を自らの制御下に置く。

 そして思い浮かべるのはこの球体から伸びている魔力の糸を伝って球体を送り返すイメージ。

 イメージによって魔法は補正を受けるのは既に明らかになっている事実だし、触媒としては俺の葉っぱにリオの母親の髪の毛があるから問題ない。加えて言うなら何かしらの特殊な反応を起こそうと言うわけではなく力技でただ押し返す気満々だったりする。

 勿論送り返された相手がどうなるかなんてのは知ったことではない。ただの自業自得だ。と言うか人を呪わば穴二つ。少なくとも呪おうとした人間分の穴は必ず開く。呪いってのはそういう物だ。


「と言うわけで……ゴオオオォォォ!」

 俺は全力で魔力を開放すると俺の魔力だけで作った魔力球を4つ、黒い魔力を分割して作った魔力球を5つ作ると【レゾナンス】の考え方に従って魔力球を空中に設置し、発動。

 最初に俺の魔力だけで作った魔力球を開放して4つの黒い魔力球の力を【レゾナンス】によって強化し、そのタイミングで強化された黒い魔力球を開放。残った黒い魔力球の力を最大限に高められるタイミングでそれを開放し、一気に魔力の出元に向かって大量の黒い魔力を送り返す。

 そして周囲に撒き散らされる力も反射で一点に集める事で第二波、第三波として連続で叩き返していき、手元にある黒い魔力を全て送り返したところでダメ押しと言わんばかりに俺自身の魔力を叩き込んでやる。

 で、全力の魔力を叩き込み終わった所でちょっと待機。


「……よし!返ってこないな」

 黒い魔力が再び送り込まれてこないのを確認した所で俺は魔力の放出を止め、その場を後にしてリオの家に向かう。

 塔の下はだいぶ騒がしくなっているがまあ気にしないでおこう。

 きっと後で多少事情聴取される程度だ。




■■■■■



「アハハハハハハ。もうすぐ。もうすぐだ!もうすぐあの女が死ぬ!」

 とある城の一室。豪勢な調度品が揃えられ、何人もの侍女が控えているその部屋で、一着だけでも庶民が何年も暮らせるであろう額のドレスを身に着けた女が高笑いを上げていた。


「そうすればあのお方の寵は私だけの物……そうなればクフフフフ。クフハハハハハ!」

「「「おめでとうございます」」」

 外見だけを見るならばその女性は非常に美しいと言って差し支えないし、実際にその美貌はこの国の中でも五指に入ると言ってもいいだろう。

 だが、その内面。心の底には言葉では表現しきれない程のおぞましい感情が渦巻いており、それを知っている人間にとっては見るのも汚らわしいと感じるほどだろう。

 尤もこの部屋に今居る侍女たちはそんな事を知った上で自分と自分の家の利益を貪るためにゴマを擦っているような人間ばかりであるため、女性の行動を咎めるような人物は誰一人としていない。


「考えてみれば最初からおかしかったのです」

「本当にそうですわ。平民の分際で王城に上がるだなんて有り得ませんもの」

「挙句、転生者と言うだけで王の寵愛を受けるだなんて分不相応にも程があります」

「ですから今回の事は当然のこと」

「全く持っていい気味ですわね」

「精々苦しんでから死ねばよろしいのですわ」

「ええ、そうです!本当にその通りです!そう、今回の事は当然の報いです!!」

 それどころか今にも死にかけているであろう相手を侮蔑し、この国の法でも許されない行為をしていた女性を褒めたたえる始末であった。

 仮にパンプキンがこの場に居れば間違ってもこいつらの血だけは吸いたくないと言っただろう。それほどまでに彼女たちは腐っていた。


「ああ早く……ぐっ!?」

「「「お妃様!?」」」

 そんな中で突如として変化が始まる。


「ぐっ……あっ……何が……」

「しっかりしてくださいませ!」

「誰か医者を!!」

「お気を確かに!」

「誰か!誰かぁ!!」

 女性が胸を抑え込んで倒れ込み、一気に顔色が悪くなると共に呼吸が荒くなる。

 だがそれは発端に過ぎなかった。


「があああああああああああああああああああああああ!!」

「「「ひぃ!?」」」

 倒れ込んだ女性が叫び声を上げると共に女性の全身の皮膚がまるで水が沸騰するかのように泡立ちだし、それを見た侍女たちは思わず女性を支える手を離して腰を抜かす。

 そして……


 周囲一帯を揺るがすような爆発音が鳴り響いた。


 この日。センコ国首都センコノトに存在するセンコノト城の後宮にて一つの爆発事件が起きた。

 死者として側室一名にその侍女十数名を巻き込み、王城の一部を破壊すると言う王家の権威を大いに揺るがした大事件であるにも拘らず、手口や犯人どころか原因すら判明しなかったこの事件は国中を揺るがす。

 だがその真相が明らかになることは決して無く、結局は原因不明の爆発事故として処理されることになるのだった。

生体【オーバーバースト】についてはいずれ


02/23誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ